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防災インタビューVol.80

日常からの防災への備え ~地域でつなぐ耐震補強~

放送月:2012年10月
公開月:2012年12月

岡本 博 氏

墨田区耐震補強推進協議会事務局長

イベントを通した防災活動

毎年9月、今年3年目を終えましたが、東京都の慰霊堂でイベントをやらせていただいています。この慰霊堂では関東大震災で亡くなられた3万8千人の方のために、9月1日になると毎年、秋の大法要が行われます。春の法要は空襲で亡くなられた方を慰霊されるのですが、秋の法要は関東大震災の慰霊の日になっています。ここは伊東忠太さんの建てた慰霊堂で、非常に重厚な建物で、中に行くと関東大震災の時の被災の状況の絵が描かれています。子どもの頃に見た時には本当に怖かったいう覚えがあります。中に入ると本当に怖い所なのですが、9月1日はそこに夜店が出ていました。今でこそだいぶ小さくはなりましたが、子どもの頃は道の両側にずっと縁日がたっていまして、そこに行くのが楽しみでした。ところが、そこに行こうと思うと必ずお参りをしないといけないというふうになっていまして、そのお参りをすることの意味が分かったのは、もう大きくなってからですが、そういうふうに慰霊ということとお祭りが非常に上手に組み合わされていて、楽しいことと考えなければいけないことというのを同時にきちっと組み込んでいるというのは、やはり日本のお祭りというか伝統のすごいところだと思います。

この法要には毎年、何万人という人が訪れ、午前中は厳かに慰霊祭が開催されていますが、午後には歌や音楽の演奏などが行われています。今年は、震災に遭われた語り部の方たちはもう90歳を超えている方が多いので、その方たちの手記を代わりにわれわれが読ませていただいて、その間に演奏をしていただき、しっとりと聴いていただくような形をとりました。また特徴的なのは、この日、側道の木がたくさんある所にきれいに机を並べて、囲碁の100面打ちを行います。これは大変人気がありまして、今年もすぐに埋まってしまいました。来年はちょうど日曜日になるので、ちょっと頑張って、武蔵にちなんで634面やってみようかという話も出ています。

2月は、木造密集地域が多くある北部地域の曳舟文化センターでイベントを行います。これは阪神淡路大震災に近い時期ということで2月にやるようになりまして、もう6年、7年という形で続けています。ここでは防災に関するいろいろな催しをやっていますが、特に人気があるのは子供絵画コンクールで、墨田の子どもが防災をテーマに描いた絵を展示して表彰しています。それをきっかけに親御さんたちやご家族にも来ていただいて、家具の転倒防止や建物の補強についても割とリアルに考える機会になっています。去年の場合は防災人形劇を見ていただきました。この2月のイベントはわれわれ独自でやっているもので、約200人から300人の方が来てくれていますが、かなり遠くからもいらしていただいています。

また、今年は10月20日に開催される日本耐震グランプリにエントリーします。地元中心でやっているわれわれの活動も、地元だけだと行き詰まっていきますので、周りの方とうまくコミュニケーションをとっていくために、そういう機会を上手に使ってエントリーして、挑戦していこうということでやりましたが、おかげさまで日本グランプリを頂くことができました。これは全国的なイベントなので、いろいろな方たちが集まって、楽しくお互いにコミュニケーションをとりながら、たたえ合えるようなこともできますし、ヒントも頂いて、また次につながるようなイベントになっています。この日には墨田区の耐震補強推進協議会の活動の話などを発表しますが、その他にもいろいろな方の発表があります。どなたでも参加できますので、永田町の日本都市センターの会議室で行いますので、ぜひ興味がある方は足を運んでいただければと思います。

「仁風導和氣」(じんぷうわきをみちびく)

「仁風導和氣」(じんぷうわきをみちびく)というのが私たちの活動のキーワードにもなっているのですが、「仁風」というのは徳のある教え、「和気」というのは平和というか和やかな雰囲気ということです。和やかな雰囲気が、その徳のある教えというか、良い世の中をつくっていくようになるのだということです。特に防災というのは暗い話であったり、決して楽しいことを想像して成り立つわけではありません。ですから、とげとげしくやってもなかなか実らないし、成果は出ません。皆で楽しくできることをしっかりやっていこうということで、志が大事ですから、その陣に当たるものといいますか、そういう風を持っていないと駄目なのだと思います。

もう一つ同じような話を、片田先生に伺ったことがあります。防災をやって行く中で「災害を風化させてはいけない」とよく言われるのですが、片田先生のお話の中では「災害を風化させよう」という話がありました。「それは何でなのか?」と思って伺ったのですが、「風化」という言葉には二つの意味があって、一つはわれわれが使うように、風で砂のように皆なくなっていく、本当に風化してしまうという、よく言う形です。忘れてしまう、なくなってしまうということです。もう一つには「徳をもって強化する」という訳が出てきます。これは「その教えが生活の中に入り込んでいて、あえて防災と言わなくても、ちゃんと防災が日頃の生活、日常の中にしっかり入っているんだ」という意味に理解しました。声高に防災を叫ぶということがなくても皆、いざというときにはちゃんと行動できる、それが本当の防災だというふうに教えていただいて、もっともだと思いました。

遠野の民話などにもあるそうですが、日頃のおじいちゃん、おばあちゃんのいろいろな話の中に、ちゃんとその防災の真の意味が込められているというのが、本当に日本の文化だろうと思います。その文化を生かして防災をきちんとやっていかないと、国としては危ういと思います。われわれが生活できているのも、戦後、本当に物が豊かになって、恵まれていると思いますし、食べるに困らないとか命の危険を日頃感じないという意味では、本当に優れたところだと思いますが、やはり心の問題が大きく傷ついているように思いますので、そこのところをちゃんとしていかないと、結果的に真の防災にはならないと感じています。

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。

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