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防災インタビューVol.82

災害と住まい ~災害を乗り越えていくために~

放送月:2012年12月
公開月:2013年2月

牧 紀男 氏

京都大学防災研究所 准教授

人口減少社会と災害

現在は、人口減少社会といわれていますが、日本の人口がピークに達して減り始めています。特に人口が一番減りそうなのはどこかというと、実は「ニュータウン」と言われる所です。普通の町は、同じような年代の人が集まって住むということはないのですが、私が育ったのもニュータウンですが、ニュータウンには同時期にどっと同じ世代の方が入ってきて、同じように年を取っていきます。子どもたちが育って町を出て行ってしまうと、年寄りばかりの町になります。私のところも和歌山の山の上のニュータウンですが、年を取った人しかいないので、そういう所が災害に見舞われると本当に大変だと思います。

高齢化の進行について計算して、その進み具合を検討してみると、東京の周辺部のニュータウンでは人口はぐっと減りますが、不思議なことに、昔からの村があったような上越線とか、そういう町々は、それほどでもありません。特に人口が増えた時に造ったニュータウンというのは、高齢化して人口が減っていっています。もしそこが災害に見舞われると大変なことになります。年を取ってから災害に見舞われると、家を直そうと思っても年金暮らしなのでお金もないし、直してしまうと貯金がなくなってしまうということもあります。そういう高齢者を息子の世代が引き取って、人口が減ってしまうということが、被災地ではよくあります。そういう所に新しい人が来てくれればいいのですが、山の上で坂があったり遠かったりすると、人が戻ってこないので、そこをどう再建していくかというのは非常に難しい問題です。

災害を自分のこととして考える

防災を考える上で一番重要なことは「災害を自分のこととして考える」「我がこと意識を持つ」ということです。私たちは防災の研究をしているので、災害はあまり人ごとではないのですが、一般的には、災害は私以外の人が見舞われることだと思ってしまいがちです。まず大事なのは、自分のところはどういう被害があるかを考えておくことが非常に重要です。今はハザードマップというものもあるので、まずそれを見て、自分の家にどういう被害があるか、どういう壊れ方をするのかということをきっちり考えて、災害の後に自分はどうしていこうかということを考えておくことだと思います。まずは自分の家の辺りの揺れを知って、自分の家がどうなるかを考え、もし家が壊れないとしてもガス、水道、電気は止まってしまうこともあるので、その後のことをしっかり具体的に考えておくことが大切です。

よく3日分の食料を備蓄しておくようにと言われますが、阪神淡路大震災の時の笑い話があります。それは、地震の日は一番いい物を皆が食べたということです。冷蔵庫は電気が止まると使えなくなるので、一番いい肉を出してきて、カセットボンベなどで焼いて、懐中電灯の明かりで食べたそうです。実は災害のあった初日は、そんなにつらくないのですよね。災害が起きたら避難所に行って、毛布で寝て、救援物資をもらって、と考えますが、実際はそうではありません。うちの家は一応壊れないことになっていますが、ガス、水道、電気がない中での生活は大変なので、娘と妻は災害が起こったら疎開をさせようと思っています。そうしたら私はどこでご飯を食べようかということから始まって、よくよく自分の家の向かいを見ると、古い家におばあちゃんが2人で住んでいるので助けないといけないとか、あの家は大丈夫だけど火事がくるかもしれないとか、近所の和菓子屋さんにはあんこがいっぱいあるかもしれないとか。自分なりのストーリーをきちんと考えておくということが重要です。

アメリカ人は防災教育をやるときに、一番初めに言うのは「あなたの一番大切なものを頭に思い浮かべてください」ということです。アメリカ人はおしゃれですから、家族の思い出の写真とかを思い浮かべます。防災のことは勉強しないと考えられないというものではなく、自分でイマジネーションを働かせて考えるものです。今、うちの娘は多分電車の中にいる、ではどうなるのだろうというように、ステレオタイプではなく、もし自分がこういう目に遭ったらどうしようというように考えることが大切です。多分、東京の方だと、仮設住宅に入るというのは案外少ないと思います。このごろ企業では、災害時にも業務継続を考えているので、企業は社員には出社してもらわないといけないので、ガス、水道、電気が出ない所に住まないで、会社がホテルや賃貸住宅を用意して住まわせるということもあり得ます。神戸の時も実は仮設住宅に移った人より、会社の用意したところに移った人のほうが多かったのです。

災害に備えて、被害を出さないような対策をすることも大切ですが、それと同時にテレビで見たことや、どこかで聞いてきたことではなく、家が焼けたとか、家の前は狭いから区画整理があって3年ぐらい住めないかもしれないなどということを具体的に考えて、復興までの10年間を自分自身はどうこの災害を乗り越えて生き抜いていくのか、ということをしっかり考えていくことが、私たちこの災害が多い社会を生き抜いていく上で、すごく重要だと思います。

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。

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