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防災インタビューVol.82

災害と住まい ~災害を乗り越えていくために~

放送月:2012年12月
公開月:2013年2月

牧 紀男 氏

京都大学防災研究所 准教授

災害を伝えることの大切さ

災害がもし10年後、20年後に起こるとしたら、今の若い人たちに東日本大震災で起こったこと、阪神淡路大震災で起こったことを、どういう形で伝えていくかは非常に重要です。メディアでも伝えてはいますが、それは型にはまった災害の姿です。災害の姿というのは、実は1万人の方が被災したとしたら1万通りあって、それぞれの方がいろいろな大変な経験をされているわけです。例えば子どもに災害のことを伝えていくことが重要だということは分かっていても、子どもに大人が経験した災害をそのまま伝えてもよく分からないと思います。私は阪神淡路大震災後17年間ずっと、それぞれの立場の視点で災害を伝えていますが、このごろやっているのは高校生には当時高校生だった人の経験を伝えるということです。その話の中でよく出てくるのが「学校は面白かった」ということです。子どもたちはいつもと違う、避難所になっている状態の学校に自分たちがいたことが、いつもと違ってとても面白かったということです。このように、それぞれの立場にたって「そんなことがあったんだよ」というのを伝えていくことが重要だと思います。子どもたちはよく分からない中で、親の姿を見て災害のことを理解しているので、親が大変だったというのを見て自分も大変だったと思ってはいるものの、その中で自分なりにいろいろなことを感じていたようです。

神戸でも震災後17年たって、このごろでは災害の経験をしていない人も増えてきているのですが、災害を経験していない人にも災害を伝えていく必要があります。神戸のある先生がとてもいいことを言っていたのですが、戦争を知らない世代の人たちに、「第二次世界大戦の戦争体験はないけれど戦争は大変だった、戦争はしてはいけない」ということを伝えていこうとしています。災害もそれと同じで、災害を経験していない人も、災害のことを伝えていく役割を担っていくことが、とても重要だと思います。

災害を風化させないためには、テレビなどのメディアが伝えているようなステレオタイプではなく、「こんな話があったんだよ」「へえ、そんなことがあったの?」というような個々が経験したようないろいろな災害の姿を伝えていくことで、もっと深く災害について理解できるし、その話を聞いて、防災について考えていこうと思えるのではないかと考えています。

持ち家と賃貸はどちらが災害に強いのか?

災害の多い日本に暮らしている私たちにとって、持ち家と賃貸はどちらを選んだらいいのかと考えると、災害に見舞われた後のことを考えると賃貸がいいだろうと思います。もし災害に見舞われて家が壊れてしまったとしても、賃貸だと敷金を返してもらって、新しい家に移っていけば、それでもう災害復興完了ということになります。持ち家だと行政からの支援を待っていたり、区画整理などの地域に入ってしまったりすると、3年から5年再建できないこともあります。

特に持ち家のマンションが壊れてしまうと一番大変で、阪神淡路大震災では再建までに10年かかったマンションもあります。このケースでは、震災でマンションが壊れてしまって、建て替えか修理かということで議論になって、多数決で「建て替え」と決めたのですが、修理を希望する人たちが裁判を起こしたので壊すこともできず、地方裁判所、高等裁判所、最高裁判所の判決が出るまでに8年から9年かかりました。その間、再建すると決めた人たちは、壊れているのでそこには住めないため、自分で家を借りました。関西ですと3LDKだと12万~13万円しますので、1年間で144万~150万円ぐらい掛かります。10年だと1,500万円ですから、このようにマンションが壊れてしまうと、とても大変です。

そうだとすると賃貸がいいのですが、実際には賃貸で家族向けの物件を探そうとすると、それほど多くないので、探すのがとても大変だということもあります。実は私自身も持ち家なのですが、なぜ家を買ったかというと税金の優遇もありますが、仕事を辞めてから毎月20万も家賃を払うのは大変だと思うので、なかなか賃貸で一生とは思えないというのもあります。ただ、実際に計算上では、賃貸で一生、家賃を払い続けるのも、家を買って金利を払うのも、実はそんなには変わらないのです。一軒家を買うとすると、その金額は払える金額が建てられる限界の金額ということになります。本来ならば、建物は長く使うほうが環境にもやさしいし、そういう町をつくっていくことはとても良いことなのですが、日本の建物の社会的な寿命は30年ぐらいです。これは30年で払える住宅ローンの金額が、私たちが建てられるほとんどの家の値段になっているからです。

賃貸と持ち家という話をもう少し大きく考えて「日本の町づくり」というふうに広げてみると、一番いいのは、賃貸で本当にいいものを造って、それを皆長く使っていくということです。現在は、木造の家は30年ぐらいで壊して建て替えてしまいますが、法隆寺の例を挙げるまでもないですが、きちんとメンテナンスをしていけば、実際は長持ちするものです。長持ちさせることを前提にしないで建てた家は、そんなには持ちませんが、お金をしっかり掛ければ、いい木造住宅を建てることは十分できるのです。昔でしたら2代、3代にわたって家を造ったり、2代・3代前の人が残してくれたお金でいい家を建てるということもあったのですが、なかなか現代では、そういう仕組みが働かなくなってきています。その意味でも賃貸住宅がいいかと思いますが、東京で、家族で広い家やマンションを借りるのはとても高いので、都心ではなく郊外に住むことになるのかもしれません。以前に東京が災害に見舞われたときのことについてディスカッションしたことがあるのですが、「東京の人たちは、実は自分の住みたい所に住んでいないのではないか」ということが出てきました。費用的な面で選んだ場所に住んでいるので、もし東京で災害が発生して、そこに大きな被害が出たとしたら、別の場所に移っていくということもあると思われます。災害があっても新しい人を引きつけるような東京をつくっていくことが復興においても重要ですし、ずっと使えるような良い家を造って、東京を再建していくことが重要だと思っています。

※今回のインタビュー記事は、東急電鉄の協力のもと、「FM salus」が過去に放送した『東急建設 presents 「サロン・ド・防災」』の内容を、一部改定して掲載しています。