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防災インタビューVol.82

災害と住まい ~災害を乗り越えていくために~

放送月:2012年12月
公開月:2013年2月

牧 紀男 氏

京都大学防災研究所 准教授

復興までの時間

東日本大震災からの復興については、非常に皆さん関心があることだと思いますが、「住まいの復興」というのはどのくらい時間がかかると思われますか? 住まいの復興には、実際には10年というすごく長い時間が必要です。そのことを私たちはきちんと知らないといけないと思います。

これは阪神淡路大震災や東日本大震災の事例ですが、災害から1年半ぐらいというのは、被災地の姿が目まぐるしく動いていきます。災害直後というのは被害がありますし、その後は避難所での大変な生活があります。それが6カ月から8カ月ぐらい続くと、今度は仮設住宅に移って、ガレキだらけの町から何もないきれいな町に移っていく、というのに大体1年半かかります。しかし、実はここからが災害の復興で一番つらいところで、今、被災地がそうだと思いますが、この後、なかなか場面が変わらないのです。景色が変わらないと言ったほうがいいかもしれませんが、これはどういうことかというと、被災地では復興に向けていろいろな話し合いがされてはいるのですが、話し合いが済まない限りは道路ができたり、家が建ったりということがないのです。そうすると、一生懸命復興のために取り組んでいるのに、何も景色が変わらないということで、すごく疲れてくるわけです。その次に何かが起こるのは3年から5年後ということで、これは神戸も同じだったのですが、この時期が一番つらい時期です。先が見えていれば頑張れるのですが、「どこまで行ったら復興にたどり着くんだろう」という先が見えない状態が、人間にとっては一番つらいことです。その意味でも、あらかじめ「復興には10年かかるんだ」ということを分かっておくということが、とても重要です。これは忍耐というか、「そういうものだ」と思わないといけないということです。ですから、現在、東北の復興が遅れているとも思いませんし、基本的には東京が災害に遭ったとしても同じペースだと思います。災害にやられるというのは、やはり復興までには10年という時間が必要になるということですので、逆に言うと、災害にやられないのが一番です。また、災害では建物だけが壊れるようなイメージがありますが、今までの例を見てみると、災害はコミュニティーも壊してしまいます。災害後に災害の前と同じようなコミュニティーに戻したいと思っても戻らないので、被害が出ない町にすること、地域全体を強くすることが重要だと思います。

復興と人口流出

復興には時間がかかりますが、時間がかかるとはどういうことかと言うと、やはりそこに住んでいる方がその地域を離れてしまうということです。災害があると、その場所から人が減ってしまうということを、まずは前提にする必要があると思います。

神戸でも震災直後は、多分12万人ぐらいの方が神戸を離れました。関東大震災の時も疎開というのがありましたが、災害とうまくやっていくもう一つの方法として、ガス、水道、電気が来ていない被災地を一次的に離れるというのがあります。災害直後は非常にたくさんの人口が減ってしまって、その後、戻ってくる方もいれば、戻ってこない方もいます。復興には時間がかかるので、人が出て行ってしまいますが、復興後に出て行った人たちが戻ってきてくれるような、また新しい人も呼べるような魅力のある町にしていくことが、とても重要なことだと思います。

東日本大震災の時も原発事故がありましたが、東京周辺でも小さいお子さんを連れてどこかに移動した方が多かったです。でもやはり、東京は魅力のある町なので、皆さん戻ってきますし、また新しい人も入ってきます。災害から復興するときには、まず10年という長い時間がかかりますし、遅ければ遅いほど人は出て行ってしまいますが、復興を成し遂げた後は、出て行った人たちが戻ってきて、さらに新しい人を集める、そういう気概というのが復興を成し遂げる上ではすごく重要なのかなと思います。起こった被害に私たちはどううまく対応していくのかということが、うまく災害と付き合っていく上で非常に重要で、そういうことについては案外、歴史的な日本の災害対応の中にいろいろな教訓が残されているような気がします。

東日本と西日本の震災の話

私は西日本から来ましたので、今回起こった東日本大震災のような災害が起きるだろうと思っていたのは、実は静岡から高知までの西日本の地域についてです。今回の震災では西日本は揺れなかったということもあるので、西日本の人々は東日本の人ほど意識は高くないのですが、西にいる私たちも東日本の皆さんが苦労されていることを、本当に真剣に学ばないといけないと思います。

今回、岩手県の三陸海岸に非常に高い津波がやってきましたが、そのような災害は、三重から和歌山、高知の辺で起きるでしょうし、仙台平野で内陸奥深くまで水が入ったような災害は、宮崎や静岡の平野部で起きるでしょう。また、東京で帰宅困難者がたくさん発生したり、沿岸部でコンビナートが火災になるというような被害も、大阪の都市部で起こるかもしれません。原子力発電の問題は非常に大変で、それはないに越したことはないのですが、いずれにしても今回起こっていることというのは今後20年、30年のうちに発生する東海、東南海、南海地震でも経験することなのだろうと思います。また、東海、東南海、南海地震では、阪神淡路大震災のように非常に大きな揺れが静岡や和歌山の南、高知などに発生するので、そういうことも考えないといけないとすると、今後やってくる東海、東南海、南海地震というのは、今回の東日本大震災プラス阪神淡路大震災というレベルになると思われるので、これまでに起こったことをきちんと理解して、今後、対策に生かしていくことが非常に重要だと思っています。

この東京も首都直下地震が危惧されていますし、その時に発生する災害の姿というのは、恐らく阪神淡路大震災プラス今回の東日本大震災のようなものだと思います。幕末にも首都直下地震と東海、東南海、南海地震が1年間隔で発生して、非常に大変なことになったのですが、今回もそういうことがないとは誰も言えません。その被害を完全になくすことができないとすれば、その被害にどうやって立ち向かうのか、その被害からどうやって立ち上がっていくのかを考えていくことが、とても重要だと思います。

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。

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