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防災インタビューVol.82

災害と住まい ~災害を乗り越えていくために~

放送月:2012年12月
公開月:2013年2月

牧 紀男 氏

京都大学防災研究所 准教授

プロフィール

牧紀男です。紀男というのは紀州の男と書きますが、出身は和歌山です。現在は京都大学防災研究所の巨大災害研究センターで災害の研究をやっていますが、もともと大学は建築学科で、住宅、住まいの研究をしたいと思っておりました。特に東南アジアの民家を調査していましたが、東南アジアはものすごく災害が多い所で、災害後に皆がどのように自分の家を造っていくのかということに興味を持って調査をしたのが、災害との出出合いとなりました。

そのころ、日本でも雲仙普賢岳の噴火災害が1991年にあって、その後、仮設住宅ができました。その仮設住宅の使い方などを調べていましたが、その後1993年に奥尻島で津波の災害があり、そこでも仮設住宅がどのように使われ、自分の家になっていくのか、というのを調べていました。そして1995年に阪神淡路大震災が起こり、その時に、仮設住宅をいくら造っても全然災害を減らすことにならない、ということに気付き、もっと根本的な、いわゆる防災ということを研究しないといけないと思うようになり、阪神淡路大震災後に防災に対する研究をしてきたというわけです。

災害と住まい

まず一番初めに私が災害の後の住まいを研究していてびっくりしたのは、災害が起こると人は、いつも住んでいた所からどこかに移動してしまうということです。避難所に行ったり、避難所に行かないまでも知り合いの家に避難したりということもあります。

インドネシアで津波の災害後の住宅の調査をしていた際にも、今回の東日本大震災と同じように、町を津波の被害を受けない安全な所に移そうという話がありました。「あれ? 災害が起きると人は住まいを動かさないといけないんだ」ということから、災害後の人々の住まいの移動について関心を持ち始めました。例えば阪神淡路大震災では、被災者の約4割の方は初日に避難所や親族の家など、いろいろな所に移りました。その後、最終的にやはり2割ぐらいの人は、それまで住んでいた所から住まいを移されてしまいました。このように災害により住まいを移すというのは、もともと住んでいた所に住めなくなったということで、何か良くないイメージを抱いていたのですが、よくよくその歴史的なことを調べていくと、特に江戸では非常に火事が多かったので、火事があるたびに皆、家を移していくというようなこともありましたし、関東大震災の後も、東京の町中から郊外に家を移していくということもあって、災害が起きるとそういうふうにして私たちは災害とうまくやってきたのだということが分かってきました。

災害ですぐにその場所から避難所に移ったり、一時的に仮設住宅に住んだり、家を直している間、賃貸住宅に住んだりというのを含めて、家を移さないといけない状況があります。私たちは、災害が起こっても元の場所ですぐに生活が再建できるというイメージがあるのですが、一時的なのか、もしかするとずっとなのか、災害時には家を動かさなければいけないこともあることを、きちんと知っておく必要があると思います。

津波などの災害の時には、再度津波に見舞われないようにということで家を移す場合もありますが、例えば2004年の新潟県中越地震で山越村が大きな被害を受けたときは、村に戻った人は半分ぐらいです。災害後に家を移るということをネガティブに捉えるのが一般的なのだとは思いますが、逆に災害に見舞われるというのはそういうものなのだということを知っておき、「災害が起きたら私たちは家を動かすんだ」「日本人は、昔からそういうふうにして生きてきたんだ」というふうに考えると、少しはポジティブに「家を動かす」ということを捉えられるのではないかと思います。

身軽に動ける住まい方

今お話ししたように、身軽に動けるような生き方をしているほうが、災害後の復興を考えた場合は、いいと思います。もともとの歴史的な日本の都市部の住まい方というのは賃貸でした。賃貸の住宅ならば、災害に見舞われても失うのは家財だけです。命は当然守らないといけないのですが、家を持っていて、その家全体を失ってしまうとなると非常にダメージが大きいので、1950年ぐらいまでは都市部では賃貸住宅が多く、災害にやられたら家を移るということをしてきました。昔はなかなか災害にやられないような耐震的に強い建物を造ったり、火事でも燃えない町をつくるということが難しかったので、やられても身軽にすぐに復旧、復興できるように賃貸に住んでいる、というのが日本人の住まい方だったのだと思います。

現代では、災害に対して強い家を造ることができるようになってきたので、持ち家も多くなってきています。しかし、住宅が災害にやられないようにするということと、災害にやられてもすぐに立ち直れるということ、この二つを組み合わせて備えないといけないと思います。災害にやられないことだけを考えていても限界があるので、やはり、やられた後のことも考える必要があります。災害にやられたら、もしかしたら移動をするかもしれないということも考えに入れて、「身軽に動ける」というのも、もう一つの防災対策として重要だと思います。

※今回のインタビュー記事は、東急電鉄の協力のもと、「FM salus」が過去に放送した『東急建設 presents 「サロン・ド・防災」』の内容を、一部改定して掲載しています。