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防災インタビューVol.91

マンションライフの防災・減災支援 ~災害後の生活継続支援を考える~

放送月:2013年6月
公開月:2013年11月

吉野 美幸 氏

伊藤忠アーバン執行役員

災害後にもマンション生活を維持するために

先日、南海トラフ地震の被害想定が新聞などに出ていましたが、その中で「自宅が壊れていない方は避難所に来るのではなく、なるべく自宅にいてほしい」と書かれていました。マンションは丈夫な建物なので大震災が発生しても被害は起きにくいのではないかと考えられているため、大震災が発生した場合は公的支援が及ばないことも想定して、できるだけ共同生活を維持、継続することを一つの目標として、居住者の方々や居住者の団体である管理組合が、それぞれのマンションが抱えている課題をしっかり解決しながら自立していくことを考え始めなければいけないと思います。

実際には、建物は壊れなくても家具が倒れたり、怖い思いをするので、大震災が発生した場合はマンションも大きな混乱に陥ります。東日本大震災のときも、管理会社はできるだけのことを精いっぱいやったと思いますが、残念ながら「管理会社、よくやってくれた」と評価をされたかというと、必ずしもそうではありませんでした。実際には「やってほしいことをやってもらえなかった」「期待外れだった」という厳しい言葉もありました。このことを検証してみると、居住者の皆さんがやってほしいと思っていることと、管理会社が実際にやったことにはギャップがあるために、そのような意見が出たのではないかという結論に達しました。これは非常に大きな問題です。

居住者は、管理会社が災害対策をするのは当然だと思っている方も多いと思いますが、実際にやれることとやれないことがあり、そのギャップによって思い違いが生まれることは、双方にとって大変不幸なことです。それぞれの人の生活スタイルや家族構成によって、ニーズはそれぞれ違います。例えば高齢の方がいる場合には、その方を安全な所に避難させたいとか、5階に住む子どもが1階で遊んでいた際に地震が起こったら、5階まで子どもを連れて上がる手助けを管理会社にしてほしいというニーズがあっても、その一つ一つを管理会社が手助けをすることはできません。今までの生活を継続させていくために居住者個人がやるべきこと、管理組合や管理会社がやるべきこと、行政ができることを正しく理解する必要があると感じています。

管理組合がやるべきこと、個人がやるべきこと

よく行政は、非常時に備えて3日分の水や食料、トイレを用意するようにと言っています。これらを管理組合で備蓄しているマンションもあれば、水は個人で用意してほしいというマンションもあります。管理組合は、共同で皆が使うものを用意していて、個人的なものは用意をしないということで、ビシッと分けているところもあります。大きな備蓄倉庫があるから、水や食料が当然入っているだろうと居住者が思っていても、実際に備蓄していなければ大変な問題になるわけです。まずは個人の方々、管理組合、管理会社がそれぞれどういうものを、どのようにそろえるかを具体的に決めておく必要があります。

少し硬い話になりますが、管理会社というのは、管理組合と管理委託契約書を締結します。この中には行うべき業務が書いてあり、どこのマンションも大体1年契約か2年契約で締結しています。平常時の状況を想定して契約されていますので、防災についてはあまり書いていないことが多いです。多少、防災という言葉が入っているものもありますが、大抵は火災のときにどうするかという消防計画が書いてある程度です。

管理会社の業務の中にも防災はきちんと位置付けされていないので、管理組合もどこまで管理員に頼んでいいかが分からず、管理会社側もどこまでが仕事かも曖昧です。実施には当たって仕事として受けているのか、人間としての当然の行動なのかという判断が非常に難しくなっています。

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。

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