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防災インタビューVol.93

歯科医療と災害 ~医療従事者の被災地支援を通じて~

放送月:2013年8月
公開月:2014年1月

岩原 香織 氏

渋谷区歯科医師会

プロフィール

日本歯科大学生命歯学部歯科法医学センターの岩原です。大学で臨床歯科法医学の実践と研究、教育を行っています。法医学というと、テレビ番組などの影響もあって、死というイメージが大きいのではないかと思うのですが、私たちが行っている臨床法医学というのは、亡くなった方が死に至った状況を研究することで、生きている人が死に至らないようにするための方法を考えて、それを臨床に応用、活用するというものです。

歯科法医学センターに入る前には、金沢大学の口腔外科に勤務しており、臨床もやっていました。その経験を基にして、現在は歯科法医学、臨床法医学をやっています。東日本大震災の時など大災害が発生した際に、歯科医師が身元確認を行うというのは、多くの方のイメージにあると思いますが、私たち歯科医師は、そこでの情報を生きている方へ還元していくことを考えています。歯科医師が発災直後から救護活動に関わって、なるべく多くの方の命を救えるように活動できないかということを考えながら、歯科医師会の先生方と一緒に実践を考えているところです。

東日本大震災のような大災害においては、ご遺体が自分を証明するものを着けていれば身元確認ができるのですが、災害といってもさまざまなご遺体の状況があって、どうしてもIDを持って逃げられなかった方や、災害による損傷でお顔が分からないという方もいます。そのような方では、昔から言われているような歯の治療痕や歯の形などで個人識別、個人を特定することを行っています。

「医療救護」について

歯科医療救護といって、災害時に逃げる際に、入れ歯などを忘れて避難された方に対して、あるいは災害の発災直後というよりは、しばらくたってから、避難所生活が長引いて、いろいろなストレスにさらされたり、食生活の問題などから歯の痛みを訴えてこられる方に、医療による救護を行います。これは一般的に日常で行われている歯科治療と同じですが、そういうことをさせていただくのが歯科医療救護です。

避難の際に歯磨きを持って逃げようと思われる方はいないと思いますし、避難所で配給される食事の形態にも関わってくると思いますが、水が足りない場合には、うがいもできない状況で、ストレスにさらされることがあります。平時からお口の中に疾病がある方は症状が出やすいと思いますので、そういう方々に対して、まずは健全なお口の中の状態にできるように、そしてしっかりと食べて体力を維持できるようにということを目的として、避難所などでの口腔ケア、暫間的な治療などを行わせていただくのが歯科医療救護です。

歯科における災害医学教育と災害医療

私は大学に勤務をしておりまして、教育も自分の仕事のうちの一つですが、実を言うと歯科には、災害医学という分野はありません。救急医療は歯科でもありますが、災害医療は医学では教育されますが、歯科では教育されていないのが現状です。そのため、私たちは歯科法医学の講義の中で学生さんへの災害教育を取り入れて、学生さんにまずは自分の身を守ることから講義をしています。私たちの大学では、入りたての学生と臨床に近くなった学生の2学年で、この講義をしていますが、まず大学に入りたての学生に対しては、自分の身を守って安全を確保する方法や、医療従事者としての倫理観を育てるための講義をしています。また、臨床に近くなって、大学病院で患者さんを先生と一緒に診ている学生に対しては、ある程度の歯科の知識が付いているので、実践の教育や実習を取り入れて、自分で考えて対応できるための講義を行っています。東日本大震災以降は、被災地の大学などでも、そういうような教育を行うところが最近ぽつぽつ出てきたと聞いています。医療従事者という観点だけではなくて、まずは一人の人間として何ができるか、その上で専門性を持った医療従事者として何ができるかということを、その場その場で考えて、自分ができることをやっていくというのが大切ではないかと思っています。

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。

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