1. ホーム
  2. 東急沿線の地域情報
  3. 安心・安全情報
  4. 防災インタビュー
  5. 災害に強い社会をつくる
  6. 歯科医療と災害 ~医療従事者の被災地支援を通じて~
  1. ホーム
  2. 東急沿線の地域情報
  3. 安心・安全情報

防災インタビューVol.93

歯科医療と災害 ~医療従事者の被災地支援を通じて~

放送月:2013年8月
公開月:2014年1月

岩原 香織 氏

渋谷区歯科医師会

被災地の情報収集について

9月1日は「防災の日」ですが、その前後に東京都では毎年、総合合同防災訓練を行っています。私がこちらの歯科法医学センターに入ってから、歯科医師会の先生方と私たちは一緒になって、身元確認の訓練を行っています。平成21年には、東京都歯科医師会会長をされていた先生と事務局長から「歯科医療救護も、もう少し何とかならないか」ということで話を頂き、歯科医療救護を見学させていただきました。それまで歯科医師会では、発災後72時間以降の歯科医療救護、歯科治療、口腔ケアの訓練を行っていました。これを見て、発災直後の医療救護を行っている医師会と比較して、非常に時間差がある訓練を歯科医師会だけが行っている気がして、違和感を覚えました。これでは他の医療従事者との連携が取れないということで、医師会の先生が受けているトリアージ研修会や医師会向けの講習会にも参加して、発災直後の医療救護、応急救護の勉強をさせていただき、それを実践につなげていくということが現在まで続いています。

東日本大震災の時に実際に被災地に行って、私は身元確認活動の支援をさせていただきましたが、実際に行う内容は、平時の時とほとんど変わらない内容でした。しかし、活動する場所や使用する資器材の不足を非常に痛感しました。また、災害医学を学んでいない歯科医師は、情報の収集、提供が非常に弱いということを痛感し、逆にその経験を生かして、そういうところを強化するような形で歯科医師会の先生方との訓練を重ねていっている状態です。

私が東日本大震災の被災地に行ったのは、私が所属している日本法医学会に、警察庁を経由して身元確認の支援活動を行う人材の募集があったからですが、派遣される地域が決まるのは、応募から数日たってからになります。派遣先が決まってから、派遣先に何を持って行ったらいいのか、現地で何が不足しているのかという情報を得る必要があるのですが、残念ながら知っている方が現地にはいなかったので、知人の先生にお願いして、支援活動を行っている先生につなげていただくことから始めました。現地で足りない物、持って行くべき物についての情報を得たかったのですが、実際に現地で連絡を取らせていただいた先生は初めて話す方で、私のほうの要因だとは思いますが意思の疎通がうまくいかず、何が必要かを十分に引き出すことができませんでした。私は支援活動を1週間やった後、東京に帰ってきましたが、その後、今後は知り合いが被災地支援に行くので必要な物を知りたいということで、現地の先生に聞くと「これが足りないから、これをどれだけ持ってきてほしい」と非常に的確で細かい指示を頂きました。細かいことは分からないのですが、まず顔が分かっていて、その先生の人柄を分かっていると情報の収集がしやすくなります。それによって大きな差ができるということを痛切に感じました。

災害時に被災地の先生から「たくさん持ってきて」と言われたときに、「この人のたくさんは幾つぐらいだろう」というのが分かる方と、そうでない方とでは、実際に持って行く必要量を判断するのにかなりの違いがあると思います。やはり顔や人柄を知っていることは共通の感覚を持つという意味において、とても大きいことですし、また共通の感覚を持つということが防災には非常に重要だということを痛感しています。

意思の疎通、連携の大切さ

現在、東京のほかに周辺ですと埼玉県、神奈川県などの歯科医師会の先生方とも一緒に活動させていただいていますし、日本全国いろいろな所に呼んでいただいて、先生方と一緒に訓練、講演会もしています。私がお話だけをさせていただく場合もありますが、なるべくその中で行政、消防、大学病院や基幹病院の先生方、看護師さん、診療所の歯科衛生士や歯科技工士の皆さんと一緒に活動できる場をつくっていくことが重要だと思って活動しています。身元確認には警察の方も関わってくるので、そういう方々にも加わってもらって一緒に実習をしたり、活動することの意義を理解してもらいたいと思っています。それによって、お互い同士の意思の疎通、連絡、連携をだんだんに強化することができます。

実際に私は東日本大震災の発災直後に身元確認の支援活動に参加して感じたのですが、現地に行って、道路が非常にきれいになっていることにびっくりしました。東京でテレビから流れてきている映像を見て「まず、道なんかない」と思っていました。車で通れるような道などなく、もしかしたら中にご遺体が入っているかもしれないがれきの中をかき分けて、支援活動場所まで行かなければならないのではないかと想定していましたが、実際には自衛隊、消防、警察、地域の生き残った住民の方々のご尽力だと思うのですが、私たちの車が通る道がきれいになっていたことにびっくりしました。

ただ、現場に行ってみると、私たちのところは身元確認に必要な資器材は東京の方から持って行っていましたが、他の検案場所では資器材の不足ということがあったようです。身元確認には基本的にご遺体のお口の中の写真を撮り、自分たちの肉眼でチェックしたものをチャートに起こします。現在は治療痕、歯の治療をしている方が昔に比べて少なくなってきていますし、今回の大震災では特に限局した方が被災されたわけではなくて、年齢層は本当に若いお子さんから高齢者までさまざまいましたので、皆さんが治療痕があるわけではありません。そこでX線撮影も非常に重要となってきますし、個人を特定して身元確認するには、それら全てのものが確実に必要なのですが、明らかに不足していました。

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。

会社概要 | 個人情報保護方針