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防災インタビューVol.93

歯科医療と災害 ~医療従事者の被災地支援を通じて~

放送月:2013年8月
公開月:2014年1月

岩原 香織 氏

渋谷区歯科医師会

グリーフケアのための身元確認

身元確認においては、個人を特定して「このご遺体とこの方は一緒ですよ」ということを認定することはもちろん必要なのですが、「このご遺体とこの人は違います」という否定も非常に重要になってくるわけです。中でも今回は本当に多くの方が突然の災害でお亡くなりになっているので、それぞれが受けた悲しみを癒やすためのグリーフケアという観点からも、身元確認は非常に重要であったと私は感じています。

その中で一つ残念というか、ちょっと意図が分からないのは、厚生労働省が早々に「身元の不明遺体を荼毘に付してもいい」という通達を出したことです。私の感覚からすると、身元が判明したご遺体は荼毘に付して、家が被災されたご家族の元にお返しするというのは理解できるのですが、身元不明の方をまず荼毘に付してしまっては、身元を判明させるような記録が、きちんと記録として残されているでしょうか。記録の資材が非常に不足している中で、記録もないまま、検証する材料を残さないまま荼毘に付してしまうのは、どういうことかというのが気掛かりで、今でも心の底に残っています。

大切な人に最後に一目会うために

私がこういう災害時の活動を勉強するに当たって、医療従事者としてではなく一人の人間として、いつも思うのは「もし、被災したのが自分だったら」「被災したのが自分の大切な人だったら」と考えると、自分のできることや活動がおのずから決まってくるのではないかということです。

もし自分の大切な人が亡くなってしまったら、どのような状況であっても私は絶対、最後に一目会いたいと思います。そういう思いを持って私は身元確認という活動をさせていただいているのですが、皆さんも同じ思いかどうかを知るために、ジャーナリストの方にお願いをして「大切な人が顔で判別できないような状態になっていても、最後に一目会いたいと思いますか」という質問をネットでしていただきました。実際にそこにアクセスされた方は約21万人いたそうですが、そのうちの75%の方が、顔が分からなくても最後に一目会いたいというふうに考えているという結果が出ました。歯科医師として、一人一人ができることは、どれだけのことかは分かりませんが、そういう思いを持った人が1人でも多くなれば、多分できることはどんどん大きくなると思います。まず人として、そして医療従事者として、次に専門性を持った歯科医師として、どれだけのことができるのかは本当に分かりませんが、顔が分からないような状況であっても、少しでもこの身元確認をして、歯科の専門性をもって「この人はあなたの大切な方ですよ」ということを、探しに来た方に伝えられるようにすることがグリーフケアにもつながりますし、私たち歯科医師のやらなければならないことであり、それによって支援の目的がぶれずに最後まで全うできるのではないかと考えています。

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。

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