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防災インタビューVol.94

福祉の現場におけるBCP ~要援護者の災害支援~

放送月:2013年9月
公開月:2014年2月

池田 真紀 氏

札幌市地域活性化伝道師

市民活動が盛んな札幌

札幌は地域の方々が災害に対してリアルに取り組みたいと思っているというように、非常に意識の高い地域で、町づくりや孤独死の対策についても町内会や自治会で、いろいろな活動がなされています。また、北海道はNPO王国と言われるくらい市民活動が盛んな地域で、いろいろな所で、いろいろな活動が行われています。ただ、そのあたりについては行政がいったん集約をして情報整理する必要があり、それが札幌の課題だと思います。

北海道内の課題としては冬場の避難所の問題があります。避難所運営、備蓄に関しても、今の技術や製品では用が足りないということであれば、その代替品は何なのか、あるいは開発商品はできないのかを考える必要があります。さまざまな企業がいろいろな開発をしていますが、関東圏などを対象にしていますので、北海道のマイナス20度を想定したものはなかなかできていませんし、なかなか売れないので作らないということもあると思います。そこをぜひ行政が要請していく必要があります。その際には、先ほどの防災計画と同様に行政だけがやっていくのではなく、地域のことは地域の人が一番知っているわけなので、実際に住んでいるさまざまな地域の皆さんと一緒に協働して、情報を共有しながら作り上げていくことが重要です。

北海道はNPO王国ではありますが、団体同士の連携や協働という部分では、まだできていないところも多いですし、仕事を委託することもよく行われますが、これも一つの業者だけに委託をするというのは良くないと思います。また、町内会や自治会の活動に対して行政が表彰を行っていますが、評価という意味では励みになる部分もあるのですが、多くの方々が参画して活動していく際には、もう少し形を変える必要があります。現在は非常に市民参加意欲が高いので、それを生かすためにも次のステップに進む必要があるのではないかと思っています。

地域と行政の役割

防災については、さまざまな課題がありますが、やはり地域の自主性も必要ですし、協働するときには行政の役割も重要になってきます。縦割り型になりがちな関わり方についても、今後どうしていくべきかも考えていかないといけません。

今、地域の中で要援護者支援やいろいろな防災活動が行われていますが、行政においては、それぞれ危機管理対策室、防災課、地域福祉課、保健福祉部などさまざまなところが関わっています。しかし防災に対しては、地域はその地域一つです。そういうことを考える先進的な行政があればいいのですが、通常は行政の、ある部分が主催した場合に、他の分野の部分については触れられないわけです。どうしても他課、他部のところには口を出さないという縦割りの習性が当然ありますし、もちろん予算もそうです。逆に地域にとってみれば、どこの部署が主催していても「役所」という意味では同じです。現在はだいぶ防災活動が普及されてきているので、行政主体ではなく地域が主体になって、防災活動の企画をしていくことがよいのではないかと思います。そのためには、行政に「防災総合相談窓口」があるとよいと思われます。このように地域が主体になって企画を主催していけば、行政はそれを応援する形になりますので、いろいろな部署の連携も可能になり、他の部署の様子も伺え、重要な情報も得られます。このように、地域から連携のきっかけをつくってもらえることは、非常に良いのではないかと思います。

地域においては、自分たちの生活、自分たちの町のことなので、もともと防災意識は高いので、行政が計画を作って地域にやらせていくのではなく、地域の力を借りて防災をきっかけに、いろいろな意味で行政内の連携を強めていくことが必要です。

地域資源の活用

地域にある資源の活用について考えてみると、地域には福祉施設、高齢者福祉住宅、学校などいろいろな施設があります。しかし、それぞれ行政の管轄は違っています。学校は教育委員会の管轄で、公立か私立によっても違いますし、公共施設についても、市のものか都道府県のものかによって管轄は違います。また、行政計画においては事前協定ができていないと使えないということもありますが、住民にとっては、同じ町内会にある施設なのだから有効に活用したい、防災計画に入れてほしいという思いが全てです。一つの行政が主体となって主催をしていくと、この管轄の違いは、どうしようもない壁になってしまうわけです。「それは分かりません」「情報は知りません」、あるいは「自分のところではないので計画には入れられませんでした」というような話になってしまいますし、行政のどこかがリーダーシップをとっていくと、教育委員会が、例えば私立の学校に何かを申す、あるいは市が都道府県に対して何か申す、というのはなかなか難しいことです。そうではなく、「地域の課題として、これをぜひ使いたいんだ」という地域の人たちの思いを計画の中に入れて、地域が主体となっての計画策定をし、地域の中の計画を作るために事前協議をするために行政がお手伝いをすることによって、行政同士、うまく連携を育むことができるのではないかと思います。この橋渡しをするのが行政の役割ですし、協定を結ぶというのは市民ではできないので、ぜひ市民の気付きや地域の力を借りて、行政の縦割りといったものを、地域のネットワーク型の防災計画、減災計画につなげていく必要があります。これは防災、減災から町づくりにつながっていきます。現在は少子高齢化の中で孤立社会と言われていますが、これは過疎地だけの問題ではなく、大都市の中にも孤立はあります。行政の連携は、そういうさまざまな障害やさまざまなケアを必要とする人、孤立している人たちに対しての声掛け、見守りという部分にもつながってくるわけです。「これはうちの部署じゃないから関係ない」ということではなく、地域の中にいる人ということで大事な一員ですので、そういう町づくり活動にもつながっていきます。この地域の中の課題や意欲を無駄にしないためにも、個人情報の壁をどう取り払うかということが重要です。もちろん個人情報を提供しただけでは用は済みませんので、その時にどのような介入の仕方、どのような橋渡しがよいのかという専門的な部分は非常に必要だと思います。

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。

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