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防災インタビューVol.94

福祉の現場におけるBCP ~要援護者の災害支援~

放送月:2013年9月
公開月:2014年2月

池田 真紀 氏

札幌市地域活性化伝道師

全国一律ではない地域特性

防災計画や避難所計画など、いろいろなものがありますが、あらゆるもののガイドラインをそのまま一律にその地域に持ってきても、なかなか使えないですし、そのままを取り入れても、地域の良い部分が見失われてしまうということがあります。北海道で特に感じるのは、やはり雪の問題です。同じ雪でも東北と北海道の雪の違いというのは温度です。冬には通常マイナス20度ということも当たり前ですので、備蓄に関しても同じように3日分ペットボトルの水を用意していても、凍っているわけです。その水をどうやって溶かすかというところからまず入らないといけません。同じように寝袋や毛布を用意しても使えないということになります。避難所計画もそうですが、札幌市においては2012年3月に避難計画が策定され、避難所基本計画が2013年3月に策定されました。「一時避難所は公園」となっていますが、町内会や自治会の皆さんへの説明会や防災リーダー研修を通して、寒い北海道で公園にすれば、着く前に凍えてしまいます。通常生活をしていれば、それは考えるはずですが、住民の皆さんからすると「何でそこに行政は気付かないのか」ということになります。計画を作る作業において、行政は一律基準に従って「一時避難所は公園」に決めたのですが、こういう計画においても、本来は地域の皆さんと地域の課題を一緒に共有して計画を作っていくことが望ましいのではないかと思います。もちろん、いったん計画を作ったからといってそれきりではなくて、修正も当然必要だと思いますので、ぜひそういうところに町内会とか住民の皆さんの気付き、実態を取り入れ、独自のものを作っていくことが重要です。

また札幌には、東京と大きな違いを感じていることがあります。ここでは、歩行ができ、まだ要介護にはならない高齢者の方が、冬の生活が困難になってくると、福祉施設あるいは福祉の高齢者住宅に住み替えたいという相談が非常に多くありますし、実際に転居される方もいます。高齢者専門の不動産もあるぐらいで、ケアスタッフ付きの住宅がたくさんあり、それは事前の協定さえあれば福祉避難所として非常に有効だということです。地域で孤立して、ヘルパーさんを雪の中待つのではなく、それよりも地域の中にたくさんある高齢者の福祉住宅を地域の在宅の方々の一時避難所、福祉避難所のような形で共有して防災で活用することはできるかと思います。

このように札幌には非常に多くの高齢者のための福祉住宅がありますが、それを目標として町づくりをしたり整備をしたというのではなく、たまたまビジネスの延長線上で、このような不動産に高齢者の方々の生活のニーズがあったということです。要介護になっていない高齢の方は、冬の期間は買い物に行くのも大変なので、食事の提供を望んだり、薬を取りに病院に行くのも大変だということで、その意味で高齢者ケア付き住宅のニーズが非常に高くなっています。

民間と協働の必要性

私も実際に板橋区で福祉に携わっていたときには、なかなか高齢者住宅がなく、東京の山奥や圏外に行かなければなかなか見つからないことが多く、それでも足りずに待機ということがよくありましたが、札幌では非常に豊富にあります。また、こちらでは住宅も広く、非常に造りがしっかりしているのが特徴です。これは高齢者福祉住宅だけではなく公営住宅もそうですし、一般の民間の住宅も同様です。壁も寒さに耐えられる厚さがあり、屋根、柱も頑丈で、これは耐震にもつながってきます。ただ、このような高齢者福祉住宅において、現場の職員は目の前の介護で必死で、日々のケア、運営については考えられていますが、防災についてはなかなか進んでいません。このへんについては行政が間に入って、自治体や防災の活動をしている専門の方々と一緒に協働して、情報提供と普及活動を推進していく必要があるのではないかと思います。

地域包括支援センターに対しても同様です。なかなか日々の業務も大変な中で、災害についても考えていくのは非常に困難です。特にヘルパーさんたちは、加算もないのに雪かきなどを本当によくやっています。その家に入るためには雪かきをやらざるを得ず、家に入っても水道栓が凍ってしまっているような状態なので、通常では家事にもつながらない作業が、まず必要になるわけです。このように日々の介護でも本当に限界にきている中で、その上に災害時のことまで独自で考えろというのは非常に難しいとは思います。

日頃の備え

札幌の例をとってみると、町内会、自治会の皆さんによる防災活動は非常に活発になっています。特に雪に対する危機感は非常に高いものがありますので、雪に耐えられる住居の造りになっているわけです。屋根も雪に耐えられるようになっていますし、壁も厚くできています。特に耐震性を意識したわけではないのですが、雪を意識してつくった町だからこそ、結果的に耐震性も備えています。それが、今までの地震や台風などの災害時にもそれほど影響がなかったという結果になっています。札幌は観光地ですので、町内会、自治会だけでなく、観光客も防災計画の中に備えていかなければいけません。今後、地域の特性を考えて、ホテル、オフィスビルも巻き込んで、観光資源と言われている施設も一緒になって事前協定をしながら、地域を支援していくことが重要だと思っています。

北海道では土砂災害やトンネルの崩落事故などもありましたが犠牲者の例が少なく、台風で木が倒れたときも、そこに人がいなかったということで大災害にはならなかったことが結構あり、災害に対しての意識が全国の他の地域にくらべて、まだまだ低い状況です。先日、防災リーダー研修があったときにも町内会、自治会の皆さんから多く聞かれたのは「我々は札幌に住んでいて大きな被害に遭ったことがない。いろいろな防災活動を今やっているけれども現実性がない。イベント性に終わってしまう」という言葉で、逆に危機感を感じているのだということが印象的でした。あまり災害に対する現実味がない地域で、リアルに防災活動をやっていくためには自治体が間に入って情報を伝えつつ、そういう活動を高めていくことが重要かと思います。

特に札幌においては「福祉のまちづくりセンター」があり、高齢者社会に入って行く前の前段の先進的な取り組みになっています。現在は「まちづくりセンター」があり、「福祉のまちづくりセンター」があって、そしてさらに「地域包括支援センター」もありますので、いろいろな所でいろいろな取り組みをしていてます。そして行政もばらばらにいろいろな防災活動をしていますが、やっている人は皆同じ町内会だということになってしまいがちです。地域の特性を生かして、地域の課題にどう取り組んでいくかを考えるためにも、いかに情報をコーディネートしていくかが重要になります。せっかく「リアルに防災活動をやりたい」というような意識が高まってきているので、ぜひそこを次につなげる作業に今、取り組んでいかなければならないと思います。

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。

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