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防災インタビューVol.100

災害を我が身のことと考える ~知識が命を助ける~

放送月:2014年3月
公開月:2014年8月

河田 惠昭 氏

関西大学教授

プロフィール

私は大阪生まれの大阪育ちで、今も大阪に住んでいます。高校時代から山に登っていて、京都大学に入ってからもずっと山に登っていましたので、学者になろうとは思っていませんでした。しかし大学4年生の時に大学紛争が起きて、大学というところがいかに無責任なところかということに気付いて、それでは残ってあげようと、博士課程までいきました。もともと山や海が好きだったので、津波、高潮などの海岸災害や、江ノ島の海岸をどうやって造るのかという問題に取り組んできましたが、40歳の時に方針を変えました。30代の時には、ほとんど大きな災害は起こらなかったので、1000人死者が出るような災害が実際に起こるとすれば大都市なのではないかと思って、都市災害について研究したいと思い、方針を変えました。それですぐにプリンストン大学にフルブライト上級研究員として行き、7年目に阪神淡路大震災が起こりました。その時に都市災害をやっていた研究者は日本で私1人しかいませんでした。先を見通して研究することは、災害に対してはとても大事だと思いますので、現在、首都直下地震とか南海地震が起こったらどうなるのかということをやっていますが、もう防災の研究を40年やっていますので、最後のご奉公だと思って頑張っています。

 

首都直下型地震について

2013年12月20日に政府から、次の首都直下地震がどうなるかという一つの標準的なモデルが発表されました。それまでは東京湾北部地震といって、浦安の付近に震源があるというモデルで計算した結果がずっと対策に生かされてきましたが、3年前に東日本大震災が起こって、これはきちんと見直さなければいけないということで始まりました。実際にどう見直すかというと、この東京で起こり得る最大規模の地震はどういうものなのかという観点から見直すことが始まりました。同時に、首都直下と南海トラフの巨大地震の見直しが始まり、首都直下型については、いろいろ地震の研究が進んた結果、一番直近で起こりやすいのは、東京南部地震だということに落ち着いたわけです。東日本大震災の教訓というのは起こり得る最大規模の地震をちゅうちょなく対策を進めなければいけない、という教訓です。もう、想定外などということは許されないので、起こったときの被害の大きさを前提に対策を進めていくことが求められています。ところが2020年に東京でオリンピックが開催されることが決まって、国際的に、東京でとんでもない災害が起こるということが懸念されることは、日本政府にとってはうれしくないわけです。そういうこともあって、一番起こりやすい、マグニチュード7.3の東京湾の南部の地震を想定することに落ち着いてしまいました。それは政府の年間予算規模ぐらいなので、東京の人たちは「あっ、その程度なら何とかなるよね」という安心感が出てしまって、良くないと私自身思っています。政府の気持ちも分からないことはないのですが、やはりここは確率ではなく、一番ひどい地震が起こったときにどうなるのかということを前提にしておいて、「直近の東京南部地震にまず的を絞ってやります」というほうがよかっただろうと思っています。2000年から3000年に1回しか起こらない元禄地震のようなものは当面考えなくてもよろしい、というようなことを先に言ってしまったので、つじつま合わせになってしまっているところがあります。

この地震による被害額の想定は95兆円、死者の数が2万3千人という数字が出ていますが、実際には、東京は世界で一番大きな都市圏を持っていて、人口が3500万ですから、地震が起こったときの時間帯によって、事前に評価できない被害がいっぱいあるだろうと言われています。定量的に評価できないものは数字で表せないので、被害評価のうちの11項目は定量的に数字で表すことにしましたが、残りの27項目は評価していません。例えば、インターネットが1カ月使えなかったらどのような被害が出るかというのは評価できないわけです。数字上で被害として換算できないとしても、もし身近にあるコンビニエンスストアのATMでお金を出せないというのも、やはり被害です。そういう算定ができない被害が圧倒的に多いことも考えておかなければいけないことです。数字だけが独り歩きするのは困るのですが、数字に表れない部分でも身近なところで何が起こるかということも、これから時間をかけて皆で考えていく必要があると思います。

 

災害を我が身のことと考える

災害の問題というのは、人ごとだと思った途端にやられます。ですから我が身のこと、我が家族のことと思っていただくのが、まず一番最初に必要な条件です。そうなれば具体的にいろいろなことが問題となって出てくるので、それを一つ一つ解決していく、長丁場な取り組みが一番災害にきいてくるわけです。「災害には特効薬はない」といつも言っているのですが、小さな努力の積み重ねをしておくことが、実際に地震が起こったときに被害を小さくすることにつながると思います。

まず災害が起こると一番大切なのは、家族の安否確認です。家族の毎日の行動が皆によく共有されていること。例えば、お父さんは何時から何時はどこにいるかなど、もし電話が通じなくても所在情報が事前に分かっているという状況は絶対必要だということです。また、子どもが何時から何時まで塾に行っていて、その前後に地下鉄に乗っているなどということはお父さん、お母さんは把握しておく必要があります。つまり、地震が起こったときに、その時間帯に家族の一人一人がどこにいるかという情報が分からないと安否確認をしないといけなくなります。通常ならばスマホなど情報を入手する手段はいろいろありますが、災害が起こると普段使っているものが使えなくなってしまいます。そのためには、単純なことですが毎日の家族一人一人の行動を皆が知っている、こういう状況をなるべく早くつくっていただきたいと思います。特に外で働いているお父さんは朝出掛けたまま、どこにいるかが分からないと不安になりますが、まずは連絡が取れなくても、どこにいるかが分かるだけでも少しは安心できるわけです。

※今回のインタビュー記事は、東急電鉄の協力のもと、「FM salus」が過去に放送した『東急建設 presents 「サロン・ド・防災」』の内容を、一部改定して掲載しています。