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防災インタビューVol.100

災害を我が身のことと考える ~知識が命を助ける~

放送月:2014年3月
公開月:2014年8月

河田 惠昭 氏

関西大学教授

首都圏の洪水氾濫災害について

地球の温暖化の進行に伴って、雨が降るときはむちゃくちゃ降る、降らないときは全然降らないということが日本全体で起こっています。2011年9月に台風12号がやって来て、紀伊半島の奈良県と和歌山県と三重県が接する所、大台ケ原で1808.5mmの雨が降り、従来の日本記録を200mm以上、上回りました。このために山全体が地滑りを起こすような深層崩壊が起こって、97人が亡くなりました。山の中の出来事で、東日本大震災よりも救助・救命作業が困難でした。現在の日本では、こういう、とんでもない雨が降るようになってきています。

台風がやって来るとどれくらい雨が降るかというのは、台風の中心気圧と台風の通り道である海面の水温の二つが影響することが分かっています。実際に、台湾の近海は日本列島の周辺よりも水温が2度高いので、台湾では一つの台風で約3000mmの雨が降っています。3年ほど前にも台湾で台風によって大規模な土砂崩れが起こり、500人住んでいる村が、そのまま生き埋めになったという事故が起こっています。2011年の台風12号では1808.5mmの降雨量でしたが、温暖化によって、いずれ3000mmの雨が降るようになるとすると土砂災害も新しく起こるし、今まで安全だと思っていた川の洪水も非常に激しくなるということです。そうなると関東地方だって安全ではないということです。関東には利根川という大変大きな川があります。大阪にも淀川という大きな川がありますが、両方の川を比較すると淀川はとても安全です。なぜかというと、上流に琵琶湖があるからです。琵琶湖から出てくる瀬田川という所のゲートを閉めれば、一切洪水は下流の淀川には来ませんが、利根川の上流にはそのような大きな湖がありませんから、大雨が降った直ちに出てきます。1947年、終戦直後にカスリーン台風が雨を降らせました。それほど激しい雨ではなく、全体で200mmちょっと降っただけなのですが、大利根村、今、東北本線が利根川を渡っている鉄橋の右岸側が決壊して、そこから4日間かかって氾濫水が東京湾に達するという洪水氾濫災害が起こって、約2000人が亡くなりました。そこで計画されたのが、実はあの、つい最近まで造る、造らないでもめていた八ツ場ダムです。利根川の上流には湖がないので、ダムを造って湖の代わりにするという発想で、やろうとしているわけです。それくらい利根川は危ないのだということです。特に利根川の流域は日本で一番最初に都市化され、川のそばに人が住み、工場ができるという形で、どんどん発展してきました。今と150年前では、同じ雨が降っても川に出てくる水の量が5倍に増えています。川を危険にしている原因は、実は自然ではなく人間なのです。人間が開発したことで、雨が降ったらすぐに川に水が出てくるという形で危険にしているということです。その対策として、実際はダムなどは造りたくないのですが、ハード整備のためには必要だということです。これは利根川だけでなく荒川も多摩川も、皆同じような状況を抱えているということです。地球の温暖化に備えて洪水対策をどうするかということを、今やっておかなければいけないということです。

現在、八ツ場ダムの建設は再開されました。このダムを造らないと、浅間山がもし噴火したら、そこから出てくる火山の泥流をどこで止めるかが問題になります。あの八ツ場ダムがやはり効果があるわけです。いろいろな形で検討されていますが、やはりダムなくしてそれを守ることはできないということで、持続することが決まりました。危険だから造るということなのに、なぜあれほどもめたのかというと、その前に氾濫が起こったのが1947年で、60年近く起こっていないので、一般の人はもう安全だと思ってしまったわけです。専門家は逆に、大きなものはそう頻繁に起こらないからこそ、むしろ危険なのだという正反対の評価をしているために、もめる一番の原因になりました。何年か起こらなければもう起きないという思い込みが危険です。大きな災害ほど頻繁に起きないので、どうしても忘れてしまうのですが、大きな災害は間隔が空いて起こるので、それにどう対処するかを考えておかないと、とんでもないことになるということです。ですので、専門家の責任は非常に大きいと思っています。

都市部での豪雨への備えについて

今後、ゲリラ豪雨や集中豪雨が増えてくるに従い、都市の中で降った雨をどうするかを解決しておかないといけません。実際に豪雨が降れば、川のない所は道路が川になってしまいます。マンホールも、1時間に5cm、50mmの雨が降ると処理能力がなくて、地上にあふれてきてしまいます。気象庁が大雨警報を出した際には、実は1時間に5cm以上降るときがあるということです。その時はもう既にガード下などの低い所には、水がたまっていると思っていないといけません。昼間ならまだ見えるのでいいのですが、夕方から夜間にかけて車を走らせていて、知らずにそういう所に突っ込んでしまうと、浮き袋みたいに車がぱかっと浮いて、ドアは水圧で開かなくて、水が少しずつ入ってきて水死するということが全国的に起こっています。大雨警報が出ているときは車を慎重に運転する、知らない土地で車を運転しているときは特に要注意だということは、頭に入れていただきたいと思います。

スポット状に降るゲリラ豪雨、集中豪雨に対して、現在は東京都が中心になって、都市を水害から守るために地下河川を造るなど、いろいろなことをやっています。しかし直径12mのトンネルを1km、2km造っても、そこで蓄えられる量は、せいぜい100万?しかありません。ところが東京都の面積に1cmの雨が降るだけで、もう1000万tぐらいの雨が降るということですので、雨は面積で降りますから、それぞれの地域は少なくても、集めるとすごい量になります。そのため都市に降る雨による洪水を制御するというのは、とても難しいということを考えておかなければいけません。

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。

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