1. ホーム
  2. 東急沿線の地域情報
  3. 安心・安全情報
  4. 防災インタビュー
  5. 災害に強い社会をつくる
  6. 日常の中での防災 ~目的防災&結果防災~
  1. ホーム
  2. 東急沿線の地域情報
  3. 安心・安全情報

防災インタビューVol.112

日常の中での防災 ~目的防災&結果防災~

放送月:2015年1月
公開月:2015年8月

定池 祐季 氏

東京大学助教

災害の記憶を次世代に継承するために

スマトラ島の津波のニュースを見て、研究の道に戻ろうと2004年の年末に決意し、最初に訪れたのが奥尻島でした。かつて大きな災害を受けた奥尻島で、「津波の防災教育がどんなふうに行われているんだろう」と思って見てみると、実際はそれほど熱心には、防災教育は行われていませんでした。島には多くの遺族の方がいらっしゃるために、防災教育としてどのように津波に触れたらいいか分からないという現場の悩みがあったのです。

そこで、今度は北海道の中で防災教育に力を入れている地域の状態はどのようになっているのかを知るために、北海道の有珠山の周辺の地域を訪れました。有珠山は、最近だと2000年に噴火をしているのですが、事前に避難していたおかげで、死傷者、人的被害ゼロのまま噴火の収束を迎えられました。この地域では、30年以上の間、防災教育がなされていて、その事例に学べるところはないかということでお付き合いをさせてもらうようになりました。その中で気付いたのが、防災教育のやり方というのは通り一遍ではなくて、いろいろなアプローチがあるということでした。

有珠山では、火山の専門家と子どもたちが一緒に山を歩いて、「火山に親しみながら山との付き合い方を学ぼう」というアプローチをしていました。それと同時に、火山についての知識を教え込み、火山との付き合い方、考え方を伝えることを熱心にやられており、火山から身を守る術も熱心に伝えていました。このように子どもたちに伝えていくことで、それが長い時間の中で、子どもが大人になり、大人が結婚して子どもを持った時に、また自分たちの子どもにそれを伝えていく「世代間の語り継ぎ」「体験の継承」というものが行われていました。これを見て、この防災教育のエッセンスを拾って、ほかの地域にも伝えられることはないかと考え、防災教育に関する活動も行うようになりました。

「目的防災」と「結果防災」

私が今、防災教育に関わっている方と共有していこうと思っているキーワードの一つに「目的防災と結果防災」という言葉があります。

防災、減災を目的として、防災と銘打った活動のことを「目的防災」と言っています。例えば地震とは何か、津波とは何かというような知識に関わるものや、災害が起こった際に、被害を防いだり軽減したりするようなハードの対策、災害対応能力を高める防災訓練などがまさに、この「目的防災」なのですが、防災関係機関の担当者が、災害からの立ち直りをスムーズに行うためのマニュアルを作ったりすることも、スタンダードな防災のアプローチだと思います。このように地震災害や津波災害など、災害のイメージを共有したり、知識を持つためのもの。ハード面での対策が多いと思いますが、被害を防いだり軽減するためのもの。災害のための訓練などの人や社会、組織の側の災害対応の能力を高めるもの。マニュアルを作ったり、BCPを策定して、もしダメージを受けたとしても、災害からの立ち直りをスムーズにするもの。この4つが「目的防災」のアプローチだと思っています。

それに対して、もう一つの「結果防災」のアプローチは、防災、減災というような直球ではうたっていない取り組みが、結果的に防災につながってしまうというアプローチです。「目的防災」というのは、防災、減災という名前が付いているものが多いので、防災担当者など、特定の人たちが頑張るものと思われてしまいますが、「結果防災」のほうは、防災担当者だけではなく、さまざまな機関、団体、個人の方が行いやすいものだと思います。例えば、町内会や自治会で発電機を防災のために買おうと思うと「防災のために買っても、そんなに使わないんじゃないか」ということで、なかなか組織の中で合意が得られないという話がある一方で、お花見のときに明かりをつけるための発電機を買ったら、実は停電したときに避難所で使えたというように、もともと防災の目的ではなく用意したものが、結果的に防災につながったというのが「結果防災」のアプローチです。地域の祭りなどをしていて、コミュニティの結束力が高い所は防災力も強いとよく言われますが、これも一つの「結果防災」だと私は考えています。

災害というのは、日常ではない、非日常の出来事ですが、日常の連続上に起こるので、日常をいかに過ごしているかによって、災害対応も変わってきます。どうしても「防災」を頭で考えてしまうと、活動の幅が狭くなってしまったり、制約が出てきてしまうこともありますが、「結果防災」を狙ったアプローチをしていくと、防災担当者以外の方でも活動しやすくなりますし、防災を頑張っている方も仲間を増やしやすくなると思うので、そういうアプローチの展開も今後広がっていくといいと思います。

皆さんがいつも気付かずにやっていることも多いので、もう一度「目的防災」「結果防災」という言葉でくくってみると、活動の整理もしやすくなりますし、足りないところも見つかりやすいので、整理がしやすくなると思います。

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。

会社概要 | 個人情報保護方針