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防災インタビューVol.126

弁護士から見た防災・災害復興

放送月:2016年3月
公開月:2016年10月

岡本 正 氏

弁護士

FMサルースで放送された音源をお聞きいただけます。

災害に備えた個人情報の取り扱い

災害時に個人情報をどう扱うか、あるいはそれに備えて個人情報をどのように管理し、名簿を整備するかについて少しお話ししてみたいと思います。災害時に大切なのは、やはり安否確認です。ご家族や職場の方の安否を確認するために個人情報をどう扱うのか、という問題があります。これについては皆さんご記憶に新しいのが、広島の土砂災害の時のことだと思いますが、多くの方が行方不明になった際に、氏名やお住まいの地区を、マスコミが公表すべきかどうかという話が一つ大きく話題になったことがありました。その他にも関東地方で水害があった際にも、県のほうで把握している行方不明者のリストと、市町村側で把握しているリストとに齟齬があったということがありました。幸い行方不明の方は、実際は無事だったということが分かって報道されましたが、このように現場の行政のほうでも、行方不明者の情報把握の連携ができていないために、安否確認や安否情報が災害の度に混乱してしまうという現状をいつも見ています。これはわれわれ市民にとっても、なかなか難しいことなのですが、せっかく問い合わせたのに「個人情報だから答えられない」と言われてしまったことも、実は東日本大震災の現場の混乱の中ではあったという報告も残っています。

ここで、皆さんに、ぜひ知っておいていただきたいと思いますのは、安否情報については、2013年に法律が改正されまして、お住まいの市町村や東京だと区では、親族に対して安否情報を回答できるということがきちんと書かれるようになりました。そのことを事前に知っておいて、ちゃんと問い合わせができるんだと思っていただければ、それも一つ希望になるかなと思っております。

個人情報は大事だから守らなければいけないということもありますが、災害や緊急時には、当然個人情報よりも命のほうが大事です。個人情報というのはもちろん大事なプライバシーの権利の一つですが、災害時の個人情報というものは少し考え方が変わっているので、もし誤解している人がいたら改めていただき、そういう時には開示できるということで、ぜひ皆さんも知っておいていただきたいと思います。

日ごろの見守りから防災を考える

実際に、災害が起きたときに一番困る方は誰かということを考えると、自分で避難できないお年寄りの方や障害がある方、介護などで車椅子が必要な方や、あるいは若い方でも妊婦さん、あるいは一人では避難できないお子さんなどもそうですし、言葉が分からない外国の方も災害時には配慮や援護が必要になります。このような方は、災害時要配慮者とか、災害時要援護者というふうに言われていますが、こういう方を災害時にはやはり周りが助けてあげなければいけないわけです。よく自助、共助と言われますが、まさにそういうことで気付いてあげないと、本当の災害時には、消防や警察の方がすぐに助けに来ることはなかなかできないということは、過去の災害で分かっていることなので、実はそういう方をあらかじめどうやって把握しておくかを考えておくことが重要です。そのために災害時要支援者の名簿、これは正確には避難行動要支援者名簿というふうに言いますけれど、これを災害対策基本法に基づいて作らなければいけないということが、東日本の教訓を経て作られた法律としてありますので、多くの自治体ではすでに作って準備をしていることが建前になっています。しかしながら、名簿を作っただけでは、いざというときに、必ずしも全員の方々を行政機関や、消防、警察で助けに行くことができるわけではありませんので、やはりそれを事前にどの範囲で把握して、住民同士で助け合えるかというところが、災害時の命を救う大きなカギになってきます。

個人情報というのはその取扱いが個人情報保護法で決められているというのを聞いたことがあるかと思いますが、実は自治体などの地域で住民の個人情報を扱う場合は、法律ではなくてその地域の条例、つまり個人情報保護条例というもので扱われています。例えば区であれば区の、市であれば市の個人情報保護条例で決まっていますので、その市あるいは区が、災害時の名簿をどう扱うかを、日本全国それぞれ決めていかなければいけないということです。もちろん実際に災害が起きたときには、その市町村が持っている名簿を、支援する機関、例えば消防部局や他の部局に渡したりとか、あるいは地域を回っている支援者の方に渡すことができるというのは当たり前のこととして認識されていますが、ただ、いざ貰ってもその場ですぐ使えないので、本来であれば、平常時の段階から預けておくことが必要です。高齢者の方も障害を負われている方も日ごろから孤立をしてしまいがちな方々ですから、平常時から見守り活動をしていきながら、災害に備えていく必要があります。そのためにも、市町村の中に整備された災害時の名簿、災害時要援護者の名簿を、地域でいかに活用するかということを、実は常日ごろから考えていかなければいけないんだということです。

では、実際どうすればいいのかというとすごく難しいです。とてもセンシティブな情報も入っていますから、当然と言えば当然なのですが、各地域の条例や審議会で、事前にきちんと決めておいた団体にしか渡せないリストではありますが、災害対策としては、平常時からの孤立の防止や見守り支援を兼ねて、その名簿を地域のしかるべき団体や立場の方が見守りに使えるような仕組みを作ることが必要です。そのことが、自然に災害時の対策になるので、個人情報に関する法律や条例の使い方やその制度によって、事前に命を守る仕組みが作れるのだということを、ぜひ多くの方に知っておいてほしいと思っています。

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。

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