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防災インタビューVol.126

弁護士から見た防災・災害復興

放送月:2016年3月
公開月:2016年10月

岡本 正 氏

弁護士

FMサルースで放送された音源をお聞きいただけます。

防災・災害復興のための弁護士からのメッセージ

マンションの防災を考えた場合、非常に難しいと思うのは、自治会や町内会に必ずしも入っていない場合もありますし、住人同士もどんな方が住んでいるのかを把握していない場合が多いということです。特に分譲タイプのマンションですと、自分たちでマンションの運営や、建て替えが必要になって考えなくてはいけなくなったときに、どこにどういう人がいるのかということが、一戸建ての町内会以上に分かりづらいということもあります。例えば、災害が起こったときに、ドアのベルを押しても出てこない、その場合に助けが必要なのかどうかも外からは分かりづらいというのがちょっと怖いところです。特に高齢の方、助けが必要な方などの災害時要援護者のリストこそ、マンションの中にしっかり整備しておいてほしいと思います。これがマンションの防災の一番大切なところです。

防災や復興についても、法律や弁護士が関わることが多いことはお話ししましたが、皆さんにも少しは新しい知識を付けていただけたかと思います。今後もこのような課題は出てくると思います。私自身もそうでしたが、3.11の直後にこのような分野について学ぼうと思っても、なかなか学ぶ素材がなく、どのように学んでいったらよいか分かりませんでした。今私は、中央大学と慶應大学の両方で「災害復興法学」という科目を教えていますが、これは、東日本大震災以降、年間4万件以上も集まってきた、災害に対するお金の話や住まいの話、亡くなった遺族の話や仕事や取引の際の話などを分析して、生の声として伝える授業で、私自身が命名しました。これについては、大学だけではなくて、地域のコミュニティの勉強会やマンションの防災の勉強会、会社の社員研修などでも話させていただいています。なぜこのような話をするのかというと、巨大災害をイメージするときに、大きな災害が起こっても、内陸部や高台のような津波が来ないエリアの方にとっては、津波で被災した地域の話をしても、なかなか自分のところには来ないということで、防災に興味を持ってもらえないことが多々あることは、私も経験しました。その時に「実はお金に困るんですよ」という話をすることで、日ごろの日常生活の延長で防災を考える契機となりますので、このような勉強会を受けていただければいいのかなと思っています。これは、実際に防災意識を持ち、防災マニュアルや危機管理に取り組むためのヒントになる話です。どうしても災害防災危機管理ということを考えるときに、過去の物理的な映像や被災した金額や亡くなった方の数などで災害をイメージしがちですが、これでは、なかなか自分のこととして実感することは難しいと思います。実は災害に遭うと日ごろの当たり前の生活が壊れてしまい困難が訪れるんだということ、例えば住宅ローン、賃貸借だと家賃、あるいは雇用ですと給料、あとはさまざまな契約やお金のこと、取引のことが、災害時にはすごく悩みの種になるんだということを通して考えると実感できると思います。

実際に東日本大震災以降、日常生活の延長線上に出てきた悩みの声を、弁護士が何万件もまとめてきたことをまず知っていただき、それと同時に災害の際には、被災した人たちを助けてくれる支援金や支払免除の制度があることを知り、そのような際には行政や専門家を頼っていいということが少しでも分かれば、絶望の中にも希望を見つけられるのではないかと思っています。

そういう意味で企業や地域、あるいはいろいろな組織の中で、社員研修のような人材の育成の場で、被災地の本当に生々しい声と、それを救うためのいろいろな制度があることを、セットで学ぶ機会をつくってもらうことができれば、防災に対してさらに興味を持っていただけますし、災害時の支援を行ったり、ボランティアに行ったときにも、被災者の方々が抱えている悩みついても想像力を働かせることができるようになります。自分自身ももちろん、そういう知識に救われる可能性もありますし、もし支援する立場になったときにも、「ああ、そういえばこんな話、昔弁護士さんが、支援金があると話していたな」とか、「行政のほうでいろいろな支援制度とか、金融機関も免除制度があるんだな」ということが何か頭に残っていれば、困った方々を次のステップへコーディネートすることもできるのではないかと考えています。ぜひそういう側面から、災害時に備えた知識や法律の備えというものを、防災として認識いただければと思います。

慶応義塾大学出版会から『災害復興法学』というタイトルの本を出させていただいていますが、これは、東日本大震災から1年ぐらいの間に寄せられた4万件に及ぶ、被災者からの法律相談の生の声を集めて、いろいろな地域ごとに、時系列に沿ってまさにデータベース化したものです。この本は、さまざまな未来につながる提言や、新たな防災のヒントをつかんでほしいという願いを込めて書いた書籍になります。ぜひお読みいただいて、お役に立てていただければと思っています。

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。

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