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防災インタビューVol.126

弁護士から見た防災・災害復興

放送月:2016年3月
公開月:2016年10月

岡本 正 氏

弁護士

FMサルースで放送された音源をお聞きいただけます。

被災時に役立つ情報

災害に遭って困ることは、もちろん家そのものが壊れてしまったり、道路や通信が壊れてしまうということもありますが、やはり被災して一番困ることは、日々の当たり前の生活や仕事や学校や契約、そういうものがトラブルにあったり、あるいは関係性が壊れてしまうということではないかと思います。例えば、家が全部壊れてしまって住む場所がないというときにも、住むだけであれば決して快適ではないとは思いますけれど、避難所やあるいは仮設住宅、公営住宅などの支援が国からなされます。しかし、生活するためのお金であるとか、もともと抱えていた住宅ローンなどをどうすればいいのかというのが、実は被災された方の一番の悩みです。そのようなときに、事前に覚えておいてもらいたい4つのことを紹介します。

その1つは、先ほどお伝えした「罹災証明書」というものです。次にこれも聞き慣れないかもしれませんが「被災者生活再建支援金」と、お見舞いの意味を込めた「災害弔慰金」という制度もあります。最後にもう1つ、実は例えばいろいろなローンやリース、公共料金の支払などについても、巨大災害が起きた場合には猶予されたり、場合によっては免除されたりする「支払猶予」あるいは「免除」の制度についてお話ししていきたいと思います。

「罹災証明書・被災者生活再建支援金・災害弔慰金・ローンなどの支払猶予あるいは免除」

「罹災証明書」というのは、お住まいの住宅が壊れてしまった場合に、「あなたの家はこれくらい壊れましたよ」「全壊ですよ」「大規模に半壊しましたよ」というようなことを証明してくれる証明書です。これは実は東日本大震災の時には自治体が発行する義務にはなっていなかったために、発行までにかなり時間がかかってしまったという教訓を生かして、2013年に法改正が行われ、被災者に対して、すぐその内容を証明できるように制度が整いました。これは被災された方にとっての、最初のまさに希望として、まずは覚えておいてほしいと思います。そして、そういう情報提供に努めていくことが私たち弁護士の務めであろうと思っています。

次に、「被災者生活再建支援金」についてです。これは、阪神淡路大震災をきっかけにして、その後に整備された支援金で、家が倒壊してしまった、津波で流された、あるいは住めなくなってしまったという方に、いろいろ要件はありますが、ざっくりとご説明すると、そのご家族に一時金として、被災者生活再建支援金の基礎支援金として、まず100万円が出るという制度です。また、その後に建て替えなどを行えば、プラスでさらに幾らか、場合によっては200万円ぐらい出ると、つまり合計で300万円ぐらい出る可能性のあるもの、なかなか支援としては手厚い支援金になっています。もちろん家を失ってしまえば300万や100万円ではとうてい建て直すことはできませんが、まずは再建支援金として、困ったときに、何に使ってもいい100万円が支給されるということですので、それでさまざまな希望を見出すことができます。やはりこの制度を知っていると知らないとでは、やはり災害後の考えというか、気の持ちようがかなり変わってくると思います。

次に、「災害弔慰金」についてです。被災地に行って、避難所で残された遺族から聞いた本当に悲痛な声としては、亡くなってしまった方が生計を立てていた場合に、残された家族やお子さんが、例えば学校をあきらめなければいけないのかというような、すごく本当に悲しい声も聞くようになりました。その中で1つ希望になるなと思うのが、この災害弔慰金という制度です。この制度では、大きな災害で亡くなられた方のご遺族の家族に対して、250万円~500万円のかなりまとまった弔慰金、つまりお見舞金が出るという法律があります。これもやはり自分がそれを知らないと、今後の生活の見通しが立たずに、本当に暗闇をさまようような形になってしまう中で、こういう情報をご提供できれば、少しは希望を見出してくれるのではないかということで、必ず弁護士などは被災地でそういう境遇の方にお会いすれば、ご説明をしているところです。もちろん亡くなられてしまった方のご遺族、あるいは行方不明者のご家族が前提になってしまいますから、もちろんこれで何もかも解決するわけではないのですが、やはり残された家族として、どう生活を立て直していくかということを考えたときに、一つ役に立つ制度として覚えておいていただきたいと思っています。

また、一番多かったと言ってもいい声の一つに、「被災してしまった住戸のローンが残っているのに、これ毎月払うんでしょうか」あるいは「家はたまたま大丈夫でも仕事場がなくなってしまってお給料が入ってこないのに、お支払いしなきゃいけないんでしょうか」というような、ローンを心配されている声がありました。実はこれは初期の段階では、銀行に本当にちゃんと正直に相談すれば、支払猶予を受けられる可能性がかなり高いです。実は国もそのように手当てをしましょうということを、東日本大震災の時にも発信をしていたのですが、なかなかそれが末端の住民や、それこそ金融機関にもよく届いていなかったという教訓があります。自分から相談に行けば、場合によっては猶予を得られるということもありますので、こういう知識を持っているだけでもだいぶ生活の再建に見通しがつくのではないかということです。

このように、事前にいろいろな制度を知ってさえいれば、少しは気持ちが楽になるということもありますので、ぜひ前もって知っておいていただければと思います。

 

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。

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