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防災インタビューVol.129

健康で、幸せであるために ~魅力増進型防災のすすめ~

放送月:2016年6月
公開月:2017年1月

鍵屋 一 氏

跡見学園女子大学 教授

FMサルースで放送された音源をお聞きいただけます。

プロフィール

私は、東京都板橋区で防災課長、福祉部長などを務めまして、2015年4月から、跡見学園女子大学観光コミュニティ学部コミュニティデザイン学科で教員をしております。コミュニティデザインというのは、ちょっとなじみがないですが、例えば人と人をうまくつないだり、人と地域をつないだり、地域の中をうまくやったりしながら、「みんなで元気に幸せになっていこう」ということを研究する学問です。非常に幅が広いのですが、私自身防災をライフワークとしていますので、主に防災や環境、あるいはボランティアなどについて教えています。

今回の熊本地震の際には、益城町という最も被害の大きい所に入りまして、12日間ほど行政を中心に支援をしてまいりました。

災害の時系列によるフェーズ

大きな災害の後には、時間ごとに特別なフェーズ、特別な状況が生まれるということについて、まずお話をしたいと思います。発生から大体10時間後ぐらいまでは、ちょっと耳慣れない言葉ですが「失見当期」という、何が何だか分からないというような状況があります。こういう状況ではとにかく人命を守る、二次災害を防ぐことがとても大事な時期になります。その後10時間から約100時間、およそ4日ぐらいまでの間、ここでは避難所の運営をしたり、皆で救助活動をしたりする「被災地社会の成立期」という時期を迎えます。それから100時間から1000時間ぐらいまで、およそ4カ月ぐらいまでの間は、「災害ユートピア期」という時期になります。

熊本地震の後、今はちょうど「災害ユートピア期」という時期です。これは、被災された方々と支援する方々が力を合わせて、何とかこの生活を乗り越えていこうと、皆が一種の希望を持ちながら生きていける時期と言われています。これは日本だけではなく世界中で観察される現象です。この「災害ユートピア期」に何をやるかというのはとても大事なことです。その後大体1000時間、4カ月を過ぎますと、徐々に自立できる人はどんどん自立し、そして自立が難しい弱い人たちが残されるという時期に入ってきます。これは一般に「自立期」と言われるのですが、この時期になると日常生活に戻る人がだいぶ増えてくるので、なかなか協力しようとしてもちょっと難しい時期になってくるのが現状です。それで、地震後のフェーズにおいて「災害ユートピア期」に何をやるかということが、非常に重要になってきます。

災害時における判断の重要性

今お話ししたように、災害の一番最初に「失見当期」という時期があるのですが、熊本地震の際に、益城町の職員は非常に素晴らしい判断をしています。益城町の避難所として予定されていた総合体育館がありましたが、最初の震度7の地震で「天井がちょっと危ない状況になっている」ということで、そこに住民を入れることをしませんでした。翌日、16日の震度7の地震の時に非構造部材と言われる重さが一つ数十キロある天井部分が、全部落ちてきてしまいました。もし、最初のこの時期に「避難所と決められていたのだから、ここを予定通り避難所にしよう」と住民の方を入れていたら、大変な被害が発生したと思われます。そういった意味では、益城町は的確な判断をして住民の命を守っています。こういった安全に留意して確実に住民を守っていくことは、行政の職員の重要な役割ですので、非常に素晴らしいことをされたと思います。

今、熊本は「災害ユートピア期」ですけれど、ここでは3つやるべきことがあります。最初の1つは「福祉医療の充実」です。普段、お年寄りたちは、農業をしたり、町の世話役をしたりしながら張り合いを持って生きている方が多いのですが、避難所に来ますと役割がないわけです。避難所では食事も頂けますから、この暑い中に草取りをしに行ったり、いろいろ農業をするのもちょっとつらいなというようなことになりますと、動かなくなってきます。そうするとだんだんだんだん足腰が弱ったり気力が萎えてきたりして、介護の度合いが進むということが心配されています。実際に東日本大震災でも残されたお年寄りたちの介護度が大変進んでしまい、それと同時に医療のニーズも増えてしまうことから、町の財政が大変厳しくなっている状況に陥っています。今は保健師さんやヘルパーさんが盛んに来て見回っているのですが、もう少し自立して、いろいろな役割を持って避難所を運営することを手伝ってもらいながら、その人たちにもう一度張り合いを持って生きてもらうということを進めていかなければいけない時期だろうと思います。

2つ目は「職員のケアと応援の充実」です。私が最初に熊本に入ったのは、最初の地震から6日後の4月20日でした。本当に職員の方は疲れ切っていました。ほとんど寝ていませんでしたし、寝るといっても床でゴロンと横になるという程度で、そういう状態をずっと続けていました。次に熊本に入ったのが4月28日でしたが、この時、職員の方々はとても元気でした。休憩をとって元気になったというのもあるのですが、それ以上に「災害ユートピア期」がもたらす高揚感で、非常に気持ちが前向きになって、テキパキと仕事を進められていました。しかしながら、これはかえって危ないのです。この災害ユートピア期というのは通常以上に頑張れてしまうし、頑張ってしまう、そんな時期ですが、その後にガクッと落ちてくるのです。東日本大震災の時にもやはり同じようなことがありました。職員の方々のメンタル面が厳しくなったり、どうしようもなくなって退職をされたりというようなことが続きました。今のこの時期に大切なのは、どういうストレスを受けているのか、職員のストレスチェックをしっかりして、早めに休めるような体制を組んでいくことだと思います。そして早めにしっかり休むためには、周りから応援してくれる人、代わりに働いてくれる人が必要です。基本的には同じ自治体の職員が交代で、ものすごくある作業をやりながら、一緒になって過ごし、交代で休んでもらえるような体制を作っていく必要があります。災害時には職員の作業量は、通常の約5倍から10倍に増えると言われています。

そして、最後にやるべきことが「住民の協議会の設置」です。これから長い復興が始まるのですが、今のうちでしたらみんなが力を合わせてやっていこうという気持ちになっていますので、この時期を捉えて住民同士が復興に向けて話し合うための絶好のタイミングですので、協議会を設置して、住民みんなでそういうものを心掛けていくことが大事だと思います。

※今回のインタビュー記事は、東急電鉄の協力のもと、「FM salus」が過去に放送した『東急建設 presents 「サロン・ド・防災」』の内容を、一部改定して掲載しています。