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防災インタビューVol.129

健康で、幸せであるために ~魅力増進型防災のすすめ~

放送月:2016年6月
公開月:2017年1月

鍵屋 一 氏

跡見学園女子大学 教授

FMサルースで放送された音源をお聞きいただけます。

避難所の運営について

熊本では、今多くの人は避難所に住んでいるのですが、これから仮設住宅に移るという時期を迎えています。益城町では住宅の約半数が全壊、半壊、一部損壊ということですから、この建物に住んでいた人は避難所やアパートなどに移らざるを得ないわけです。一方で避難所になる予定の体育館や小中学校も被災をしましたので、避難所がものすごく少ないことから、車の中やテントを張ってそこで寝泊まりをしたり、益城町を出て他の町でアパートなどを借りて住むというような状況が生まれています。

避難所というのは、多くの人をすぐに見られるので、お医者さんが来たり看護師さんが来たり、保健師さんや介護のヘルパーさんが来たりという人的サービスをする拠点でもあります。それと同時に食事が食べられたりトイレに行けたり、支援物資を配る拠点にもなっています。さらには町のお知らせという形で、仮設住宅の受付開始の時期や罹災証明書の取り方、あるいはリラックスのために温泉へ出るバスが出るというような情報も全部避難所に集まるわけです。避難所にいるとそれなりにいろいろな支えがあって、生活をしやすいわけですけれど、これが車の中やテントの中ですとやはり自分でそこから出て、避難所まで行って、そういうサポートを受けなければいけません。自分で出るのはちょっと大変だなという高齢者や障害者、あるいは赤ちゃん連れのお母さんなどはやはり出にくいわけです。そうすると支援の手がちょっと伸びにくいために健康状態を悪化させるというリスクもあるわけです。なるべく家を失った人は仮設住宅ができるまでは避難所にいて、さまざまな支援を受けながら心身を立て直していくことが望まれるのですが、実際には車中泊あるいはテント泊ということで支援が困難になっている状況が生まれています。

避難所の運営については、主に2つのやり方があります。1つは役所の人やボランティアが中心になって運営して、精神的にも肉体的にも疲れている避難者は少し休んでくださいということで、避難者は特にやらなくても周りの人がやってくれるというスタイルと、もう1つは避難者自身が自分たちで食事を作ったりトイレの掃除をしたり、話し合いをしたりということで、避難者中心の自主運営という形と2つに分かれます。

最初のうち益城町は大被害が出ていましたので、避難所は役所中心の運営でした。そこに全国の自治体から応援の職員やボランティアが駆け付けて、その人たちが支援するというスタイルでした。でも今「災害ユートピア」の時期になってきました。この時期は、自分たちで何とかしよう、自分たちで自分たちの道を切り開こうという思いが強い時期なので、ここで自主運営に切り替える必要があるということです。

自分の家でやっていたことは避難所でもやる、トイレの掃除も人任せじゃなくて自分たちでやるというような時期に来ていますので、私はある小学校で避難所を役所の運営から住民主体の運営に切り替えるということを説明させていただいたことがあります。最初のうちは、避難所にいる住民からいろいろな不満や苦情が出ていましたが、話をしていくと皆さん本当によく分かっていただいて、「やはりそれはそうだ」「自分たちでやらなきゃいけない」という気持ちになっていただいて、住民の自主運営に切り替わっていきました。今後、ほとんどの避難所はそのような住民主体の運営に変わっていくと思います。

福祉避難所と仮設住宅

皆さんは福祉避難所というのを聞いたことがありますでしょうか。実は法律で、高齢者や障害者、あるいは小さなお子さんを抱えたお母さんなどは特別な配慮が必要だということで、一般の避難者と分けて、福祉避難所を設置することが自治体に求められています。主に特別養護老人ホームなど、福祉施設が指定されることが多いのですが、今回益城町でも事前指定されていた施設を福祉避難所にしようとしたのですが、自宅が壊れてしまった一般の避難者が押し寄せて来ました。福祉施設としても地域の人が同じように困っているので、これらの人を追い返すわけにはいかなかったわけです。その場所を福祉避難所にしようと思っても、一般の避難者がいるので十分な支援ができないという状態が続いていました。この時に私も支援に入ったのですが、結局は一般の避難者をどこか別の施設に移して、高齢者や障害者のための福祉避難所に替えていかなければいけないのですが、これがなかなか難題で、結局避難所を新たに造らなければいけなくなりました。それで一部壊れていた施設などを補修して、そこを新しい避難所にして移ってもらうというやり方で徐々に徐々に切り替えていくという状況になりました。

福祉避難所というものが町の人にもほとんど知られていなかったことが原因で、本来であればそこへ行く必要のない人がたくさん押し寄せてしまったことが大きな問題だと思います。これから避難所から仮設住宅に移るというステージに入ってまいりますが、通常ならば、早ければ2カ月前後で仮設住宅が建ち上がるのですが、益城町は仮設住宅用地を決めていなかったために、用地交渉から入ることになりました。これはある意味仕方ないところもあるのですが、用地交渉から入るのでちょっと時間がかかります。避難所にはやはりプライバシーもありませんので、もっとよい環境に移りたいということで仮設住宅になるのですが、今の仮設住宅のメインはプレハブの住宅です。これは非常に壁が薄くて、ちょっと嫌な話なのですが、隣の人がトイレに入ってトイレットペーパーをカラカラと引く音が聞こえるという、本当にプライバシ―上も問題のある設計です。これはやはり東北の東日本大震災でもかなり問題になりまして、いろいろな工夫がされています。例えばトレーラーハウスというのもありますが、これはきれいな2DKぐらいのお家に車が付いているものです。ですから移動もできますし、海外では災害対策用の住宅として非常に活用されています。これを使うという方法もありますし、あるいは1カ月ほど長くかかりますが木造で造るという方法もあります。木造の仮設住宅は2つ合わせると、普通の住宅に変えることができますので、仮設住宅を無駄にしないで済むわけです。プレハブの仮設住宅ですとどうしても撤去した後はなかなか再利用できないのですが、木造の仮設住宅ですとそのまま使えるということで、トータルのコストが安いのが特徴です。その上環境がいいということで、木造の仮設住宅を造った所もあります。そういったものを選ぶという方法もありますし、今はプレカットといって工場で事前にカットをしておいて、そして住宅を造るので工期を大変短くできるというようなアイデアもあります。

このように、仮設住宅は造らずにちょっと避難所で我慢してもらって、いきなりそういうアパートに入るという方法もありますので、その辺りはいろいろと考えておく必要があるんだろうと思います。特に首都圏で被害が起きますと、ものすごい数の住宅が必要になりますので、事前に十分に考えておく必要があります。

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。

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