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防災インタビューVol.134

災害をイメージして『良き避難者』に

放送月:2016年11月
公開月:2017年6月

吉高 美帆 氏

CCJ研修ディレクター

マンションにおける「防災」

今まであまりマンションの防災に特化したものは、なかなか語られてこなかったという現実がありますが、マンション特有の防災のお話をしたいと思います。マンションの防災でまず一つキーワードになることですが、避難所について考えてみたいと思います。

被災をしたら何となく「避難所に行けば何とかなるんじゃないかな」と思っていらっしゃる方が結構多いのではないかと思いますが、指定の避難所とそうでない避難所があるのですが、指定の避難所自体も東京都心の人数には全く足りてはいません。よく小学校や中学校などが避難所になると思われていますが、周りの方全員が押し寄せたら、とてもではありませんが入り切れません。マンションの住民は避難所には入れないと思っていただいて間違いないと思われます。避難所というのは、木造などの一戸建てで、家が倒壊してしまった方のために開かれるものになっています。そのような中で、一戸建てに比べて新耐震の基準で建てられたマンションは、非常に壊れにくいということが一番のメリットですし、最新のタワーマンションでは免震・制震構造になっていますので、マンション自体が倒壊などしない限り、マンションの方々は自宅で避難生活を行っていただくことになります。支援物資などは指定の避難場所に入ってきますが、マンションの住民の方のためには、なかなか数が足りていないというのが現状です。東日本大震災では東北ですら避難所が足りず、自宅で避難生活をされた方も多い中で、都心で暮らす私たちは避難所に入れないことも念頭に置きながら考えていけば、どのようなものを事前に備えておいたらいいかが見えてくると思います。

自宅で避難の際の「トイレ問題」

ライフラインが止まってしまう状況で、マンションの自宅で避難生活をする際に、一番深刻なのがトイレ問題です。マンションというのは縦に長い建築物ですので、大概のマンションでは電気で水をくみ上げ、各戸に送っています。それなので電気が止まった瞬間に水が循環できなくなり、トイレは流せないということになるわけです。大震災のときには、電気が止まってしまえば水も止まるものだと思ってください。その上で、水を流さずに用を足せるもの、マンション用の簡易トイレなども用意していただきたいと思います。

震災のときには、なぜトイレが一番大切かというと、被災してから4時間以内に、人は一度はトイレに行きたくなるそうです。被災をしたときにはアドレリンが出ているので、1日ぐらいは食事を取らずに水だけでも何とか生きてはいけるそうですが、トイレだけは男女問わず、年齢に関係なく我慢できないものですので、まずは水が流せない状況も考えて、水を使わない簡易トイレを準備したり、ペットシートを用いて用を足したり、最悪の場合はバケツに新聞紙を敷いて用を足すことも考えておく必要があります。

特にお子さんやご高齢の方がいらっしゃる家庭では多めに、その家族に合ったトイレを準備しておいていただきたいと思います。震災の規模にもよりますが、トイレットペーパーや生理用品、小さいお子さんがいる家庭ではオムツなどを、ライフラインが復旧するまでの1、2週間分、多めに用意しておくと安心です。

マンションのトイレでもう一つ困ることが、集合住宅でたくさんの方が住んでいるので、出てきた汚物の処理の問題です。実際に大震災が起きると、ごみの収集車はまず来なくなります。優先して人命救助を行い、その後にライフラインが復旧し、寸断した道路もあるし、焼却炉の手配を行って、ようやく最後に復旧するのがごみの処理です。それまでは、汚物を自分たちのマンションで保管するしかありません。東日本大震災のときには、裏山に汚物を埋めに行ったという話もありましたが、都心ではそういう場所もないので大きな問題です。自宅で個別に管理するしかないと思います。

準備する簡易トイレにも凝固剤が付いているものもありますし、臭いを取ったり、菌を抑えるものがあると、なおいいと思います。

自分に合った食料の備蓄

東日本大震災の後、熊本地震もありましたし、最近でも地震が多く起きていますので、防災のための備蓄品として水と乾パンはそろっているという方は多いと思いますが、その備蓄品でご家族が1カ月、2カ月、暮らしていかれるでしょうか?

これは東日本大震災のときにあった例ですが、避難生活がずっと続いている中で、マンションの方々はなかなか支援物資ももらえない状態が続く可能性は高いです。そうなったときに、ずっと乾パンや水だけを食べていると栄養のバランスも偏ってきます。避難所でも支援物資として、持ち運びもしやすく日持ちもするし、エネルギーにもなりやすいので、おにぎりやパンがよく入ってきますが、炭水化物が多めになってしまいます。これを1カ月、2カ月続けると、糖尿病になる方が出てきたり、もともと糖尿病の方ですと、さらに病状が悪化して震災関連死につながった場面もありました。

ですので、備蓄品の中にはミネラルやビタミンが取れるような野菜が入っているもの、例えばレトルトのおでんやカレーライスなどやドライフルーツのようなものを準備していただくと、バランスの取れた食生活にすることができます。また、風邪も非常にひきやすい状況になり、その上ビタミン不足になると感染症の原因になったりするので、ぜひビタミン類を、また鉄分が足りないと具合が悪くなるというような方は、ぜひそのようなサプリメントなども準備していただければと思います。ご自身の体で弱いところがあったり、これが足りないと具合が悪くなるというものがあれば、他の人に助けてもらうというよりは、自分で健康管理をするという気持ちで準備をされるといいと思います。

よく子どもや乳幼児がいらっしゃる方に「何を準備したらいいですか」と聞かれますが、お母さま、お父さまが一番お子さんのことをご存じだと思いますので、ご自身の子どもさんに合ったものを準備することが大切です。これは東日本大震災の避難所での話ですが、避難所の隅っこで白米だけをずっと食べている家族がいました。アレルギーを持っているので、白米だけしか口にできないということでした。アレルギーを持ったお子さんがいても、なかなか避難所にはアレルギー用の食事は届きませんので、自分のお子さんの体調や体質に合わせた非常食を用意しておくことが重要です。ぜひ自分自身や自分の家族が食べられるもの、好きなものをよく考えて、事前に準備しておいていただければと思います。

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。

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