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防災インタビューVol.139

人の命を守る タイムライン防災

放送月:2017年4月
公開月:2017年11月

松尾 一郎 氏

CeMI環境・防災研究所 副所長

FMサルースで放送された音源をお聞きいただけます。

水害の対応

2016年にも迷走台風である台風10号が発生して、岩手県の小本川で河川が決壊、氾濫しました。その際に「楽ん楽ん」という高齢者福祉施設が被災して、高齢者の方が犠牲になりました。その同じ台風が北海道にも広域に被害をもたらし、これは35年ぶりの災害となりました。その前年の2015年にも鬼怒川が決壊し、常総市に水があふれてきて、29年ぶりの災害となりました。そういうことが立て続けに今、起こっているということです。

これらの災害を調査しましたが、大きな災害になればなるほど、一つの自治体の対応力ではなかなか限界があります。鬼怒川のように大きな川が決壊すると、常総市は混乱の中で災害対応をしましたが、終始混乱していたという状況でした。日ごろから訓練はしているものの、実際にはその災害を想起できるリアリティーのある訓練はしていないので、あのように大きな災害が起こると、ほとんど対応できないのが、今の大きな問題ではないかと思います。実際には30年ぶりの災害、100年ぶりの水害というようなことが起こり得るのですが、私たち一般の住民からしても「そのような大きな災害が起こったときにはどうすればいいのだろう」というのは、すぐに答えが見つからない方も多いと思います。通常の大雨やゲリラ豪雨でよく浸水する所はどこか、常襲する浸水地域というのは、地域の皆さんは分かっていますので、ある程度対応できると思います。しかしながら、それ以上の災害が起こって川が決壊し氾濫する、その強い水の流れに伴って広く浸水するわけですから、普段にないようなことが起こるわけです。それに対して「適切に対応しなさい」というのは、何も予備知識がなければ難しいと思います。そのためにも、自分自身が住んでいる所について、行政が防災マップ、あるいは浸水マップを公表していますので、そういうものを事前に見ておくことが、とても必要だと思います。その上で、いつ、誰が、何をと、あらかじめ行動すべき内容を「タイムライン」に沿って事前に決めておき、それに従って防災行動を行うことが重要になります。

「タイムライン防災」の具体例

「タイムライン」というのは、日本語で「事前防災行動計画」という言い方をしていますが、この計画の有無で被害の規模が変わった所がアメリカでも見られました。

2013年にハリケーン・サンディがアメリカの東海岸を襲って、ニューヨークが海水で水没した被害がありました。地下街、地下鉄、あるいは地下トンネルが海水で漬かり、その当時、北米で132名の方が亡くなりました。このように、アメリカの都市が高潮災害を受けるというのは75年ぶりでした。私はこの時、アメリカに調査に行き、ハリケーンが直撃したニュージャージー州の危機管理局にも行きました。ここは実はハリケーンが直撃した所で、4000世帯が全壊、半壊だったのですが、犠牲者はゼロでした。話を聞いてみると、ハリケーンが直撃する前の年の2012年に「ハリケーンの対応計画の実施要領」という、今私が日本で「タイムライン」と言っているものを作ってあり、それを使って効果が出たということでした。

それを私は見聞きして「これは日本で使えるし、もし日本流のやり方でやれば、これは地域防災を変えるのではないか」と、その当時、思いました。その翌年の2014年に三重県の紀宝町で取り組みを始めて、今、紀宝町では3年目の運用に入っています。現在は全国で12・13カ所の自治体で取り組みが始まっています。関東では荒川流域の板橋区・北区・足立区の三つの区で今、国土交通省と一緒になって「水害タイムライン」の策定を進めているところです。

この「タイムライン」というのは、小学校の時の時間表をイメージしてみてください。縦に1時限目から6時限目まであります。横に曜日があります。分かりやすく言うと、縦の時限のところが台風が発生して直撃するまでの時間軸、時間割になります。横軸の曜日のところが国であったり、気象台であったり、自主防災組織であったり、住民であったり、誰がやるかということを示しています。その中に入っていくのが、行うべき防災行動になります。5日前に何をするか、3日前に何をするか、台風が直撃する前日には安全な所に避難しようというように、いつ誰が何をというのを、あらかじめ決めておくことです。この時間表を作っておき、時間表に従って、来る台風に臨機応変に対応していくのがタイムラインです。気象庁が「南の方で熱帯低気圧から台風になった」というのを発表し、その台風が関東を直撃するのが分かった段階で、本来は行動が取れるわけです。私たちは昔は雨戸に板を打ち付けたりして、風が強くなくても自宅が被災しないように、いろいろな対策をしていました。それを思い出してください。2日前にしたこと、前日にしたこと、当日にすることを再確認していただければ、減災に役立つと思います。ただ、必ずしも想定した災害のシナリオ通りにものが進むわけではないので、その対応には臨機応変さも必要です。

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。

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