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防災インタビューVol.139

人の命を守る タイムライン防災

放送月:2017年4月
公開月:2017年11月

松尾 一郎 氏

CeMI環境・防災研究所 副所長

FMサルースで放送された音源をお聞きいただけます。

「タイムライン」の他の災害への応用

「タイムライン」は水害だけでなく、さまざまな災害に使えるのではないかということで今、研究や地域の取り組みを進めているところです。実際、ニュージャージー州ではハリケーンでタイムラインを使っていましたし、私が日本に持ち込んで、この取り組みを始めたのは台風ですが、前線性の雨や火山の噴火、熊本地震の後には地震や津波対策にも使えるのではないかということで、現在進めています。

地震の際の「タイムライン」の取り組みは、どんなイメージになるかというと、まず地震の予知はできないので、いつ起こるか分かりません。しかしながら、地震が起こった瞬間は縦揺れから来ます。海溝型地震と内陸の地震では少し揺れ方が違いますが、いずれにしても人が「あれ、おかしいな、ちょっと揺れが始まったな」と感じる程度の地震ですと、それなりの揺れになります。内陸地震の場合は、揺れている時間は大体30秒前後です。ところが東日本大震災のような海溝型地震になると、地震の大きさによっては、揺れる時間は2分、3分ぐらい続きます。そうすると、まず最初の揺れの時間に、命を守る行動というのが出てきます。「タイムライン」というのは、あらかじめ何が起こるかを考えた上で、少なくとも命を守るためにはどうすればいいか、ということを皆で考えておくことです。仮に「家族のタイムライン」を作るとしますと、家族で事前に話し合って「まず揺れがきたら身を守るために、それぞれどう行動しようか」ということを決めておきます。最初の30秒の揺れの間で、少なくとも頭や胸を守る行動をまずします。次に30秒が収まったら、その収まると同時に、火の元や電気の確認を取ります。地震の後に、自宅にそのまま居られるかどうかという状況もあると思うので、その後の対応として、避難所まで避難するとしたら、3分後、3時間後にはどうするかを、あらかじめ考えておきます。これは予行演習であり、訓練にもつながります。それをやっておくのとやっておかないのでは全然違うと、私は思います。

「タイムライン」というのは、それでもって命を救えるかどうかは別にして、あらかじめ何が起こるかを考えた上で、その時に最適な行動をするためにはどうすればいいかを皆で議論しておく、これを議論した上で合意してまとめておくことです。

災害の種類にもよりますが、水害の場合ですと、行政機関が中心となった「行政タイムライン」という取り組みがあります。次に自主防災会や町内会で、その地域で、どのように避難するかを地域で話し合います。それは「コミュニティータイムライン」という言い方をしています。そして、その他に「家族のタイムライン」もありますので、それは「ファミリータイムライン」という言い方をしているのですが、それぞれの場面ごと、場所ごとの「タイムライン」はあると思います。その他に「企業のタイムライン」もあります。「企業のタイムライン」とは何かと言うと、少なくとも就業される職員の方の命を守ること、企業が被災しても、いち早く立ち上がることで復旧を早くして、日常経済活動をいち早く復旧することは、これは経済活動の被害の軽減にもつながります。そのためには事前から、このような取り組みが当然必要であると思います。

「タイムライン」の取り組みの効果

現在、水害や台風に特化した「タイムライン」を幾つか作って、10カ所ぐらいやっていますので、その取り組みの効果についてお話しします。

この「タイムライン」ですが、一番その効果が大きいのは、これを作るための過程です。この策定に関しては、災害対応に当たる組織、人々が集まって、車座になって「どういう災害が起こるか」というリスクを皆で共有し、「そのリスクから被害の軽減を図るために何が必要か」「どういう行動が必要か」を皆で出し合って、「それは誰がやるのか」「いつ誰が何をするか」を時間表的にまとめていくのが「タイムライン」です。それをやることによって何が変わるかというと、日ごろ一堂に集まることがない消防団、民生委員、学校関係者が集まって議論する場ができ、災害が大きくなればなるほど、いろいろな人が関わることになりますので、事前に集まることで顔の見える関係ができること、これが非常に大きな成果です。それに加えて「タイムライン」を、あらかじめ「行動計画表」として策定しておくことによって、チェックリストにもなりますし、抜け落ちがなくなります。災害に対して何を対応すべきかを、あらかじめ決めておくことができるのは、取り組みの効果として非常に大きなところだと思います。

その取り組みの具体例として、三重県紀宝町の取り組みを紹介します。三重県紀宝町では、台風が直撃すると町中で道路が冠水します。冠水した道路を通行止めにするために、これまでは現場で対応する消防団2人を常時置いていましたが、消防団員の命も大切だということで「タイムライン」の中で、消防団員も台風の暴風警報が発令されたら安全な場所に退避することにしました。しかしながら、通行止めのバリケードは設置しなければいけないので、その対策として、現場に常設するタイプの手動式のバリケードを設置しました。このように「タイムライン」を作ることで、どんどん地域も変わってきています。

 

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。

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