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防災インタビューVol.143

経験を生かした防災 ~避難所生活からの学び~

放送月:2017年8月
公開月:2018年3月

柄谷 友香 氏

名城大学 教授

被災者による避難所の運営

岩手県陸前高田市の避難所で皆さんと一緒に生活をしながら、行政の方々がほとんど来られない状況で、被災者がどのように避難所運営を乗り切っていったのかを見てきました。そのことは、これからの私たちの避難所運営にとっても大きなヒントになると思っています。
よくテレビなどで、避難所という所は大勢の被災者が押しかけて来て、寝られない、食べられない、飲めない、トイレも行けないという状況が放送されており、映像によるイメージは大きいですが、行政に頼らなくても被災者同士が助け合い、笑いが絶えない避難所の運営というのも実際には可能になるのだということを今回実感しました。私がお世話になった避難所は、自主防災会の会長は男性ですが、それ以外、実際動いて被災者の対応をしてくれる防災会のメンバーはみんな女性たちでした。避難所で避難者名簿を作るというのは、全国に浸透してきていますが、この避難所では発災当日に、子どもの避難所名簿を作りました。そのきっかけとなったのが、津波が来て逃げてきた際に最初にたどり着くのがこの公民館だったので、まずみんながここに立ち寄って、自分の子どもが避難していないか探しに来たことです。いないことがわかると、津波の第2波、第3波が来ているのに、また別の避難所に探しに行くことになるので、「これでは二次災害が起こってしまう」と思ったこの女性たちが、子どもの避難所名簿を作り始めたのです。あちこちにある避難所を回っては、「ひらがなで良いから子どもたちの名前をここに書いてください」と言いながら名簿を作り、「子どもの避難所あります」という段ボールのプラカードをそこに掲げてきました。こうして、病院や福祉避難所にいる子どもたちの情報を集めては、親御さんたちの心配を安心情報に変えるような工夫をされました。こういったことも女性ならではの視点だと思います。
避難所での女性の仕事は炊き出しだと思われがちですが、それだけではありません。この避難所では、普段飲んでいる薬もなく、市内の病院は全て壊れている中で、血圧が上がってしまっている人がいると、その人たちの脈を取って背中をさすってあげながら、隣町まで軽トラに乗せて搬送したり、指示がなくても自主的に女性たちが動いていました。ちょっと興奮気味で血圧が上がってしまった人には、背中をさすって「大丈夫ですよ」と言ってあげることで、その方が落ち着いたということもありました。発災直後から、この避難所ではこのように女性たちが機転を利かせて動いており、女性の役割、女子力が発揮されているのを感じました。

避難1週間後からの避難所生活

発災から1週間ぐらいしたあたりから、小さな地区公民館は、大勢の人で横になって寝ることもできないくらいの混雑になっていました。みんな座って寝ているような状況でした。1人あたり一定の面積がないと、人は健康に、そして安心して生活を続けることができないということがありますし、トイレも衛生的ではないため下痢をする人が多く出てきたり、インフルエンザも流行ってきたりしたため、この避難所の人数を何とかして減らさないといけないという苦渋の決断をすることになりました。
避難所の防災会の女性たちが、一人一人と面談をして、物資や情報は今まで通り公平に渡すので、身寄りがある方はこの避難所を離れていただけるよう話をしました。その際には、個室をきちんと設けて、聴き洩らしや聞き間違いがないように必ず2人以上で話を聞くということも、この女性たちが対応したことの1つです。また、行政の支援サービスとして、内陸部の温泉に避難するというのもありましたが、なかなかみんなは遠慮して行かないのですが、温泉に行ってもいいんだということを伝えて、その斡旋も行いながら、なんとか避難所の人員を半分以上に減らすことができました。
また、1週間から1カ月ぐらいたつと、ようやく外部から保健師や日赤の支援者がたくさん来てくれるようになりました。外部の方がたくさん来てくれても、何をやってもらったらいいか、なかなか混乱して指示することができなかったのですが、彼女たちは「避難所の中のことは避難者の方々と私たち自主防災会でやれます。でも避難所以外で、在宅でいつもは5人家族で暮らしている家に10人、20人の人が集まって暮らしているお宅があって、体の問題、家庭の問題など、いろいろな問題が起こっているので、そのような避難所以外の在宅避難者に対してのケアをお願いします」と言って、名簿を渡しました。その日中にローラー作戦で行ってみたら、実は避難所の中よりも在宅の方のほうが、問題が多かったのです。このような形で日赤や病院関係者の方に避難所以外の方のケアをしていただきましたが、ここで非常に重要なのは、避難所の中だけではなくて、在宅やいろいろな所に避難している方を見過ごさないためにはどうしたらよいか、あるいは支援の方が来てくれた時に、やってほしいことを的確に指示できる受援計画をどれぐらい考えておけるかということです。それが避難所をうまく運営し、支援をうまく受けるための鍵となるのかと思います。

※今回のインタビュー記事は、東急電鉄の協力のもと、「FM salus」が過去に放送した『東急建設 presents 「サロン・ド・防災」』の内容を、一部改定して掲載しています。