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防災インタビューVol.148

情報を防災に生かして命を守る

放送月:2018年1月
公開月:2018年7月

山﨑 登 氏

国士舘大学
防災・救急救助総合研究所 教授

FMサルースで放送された音源をお聞きいただけます。

プロフィール

現在、国士舘大学の防災・救急救助総合研究所で、防災を担当する教授をしています。2017年の秋までNHKで自然災害と防災を担当する解説委員をしておりまして、NHKで記者と解説委員として約30年、主に災害を取材してきました。国の内外の大きな地震、火山の噴火、台風による川の氾濫、土砂災害などの現場に出かけて行っては、「どうしてこんなに今回の災害は被害が大きくなってしまったのだろうか」「過去の災害の教訓は、きちんと生かされていたのだろうか」「今回の災害から次の時代に残すべき教訓は、何があるんだろうか」ということを被災者の方や自治体の皆さん、あるいは防災の専門家、研究者の皆さんから話を聞きながら考えてきました。そういうことを通して、「やはりこれからは、若い人たちに防災について知ってもらう必要があるのではないか」「この国の災害の被害を減らしていくためには若い人たちに防災を知ってほしい」と思いまして、2017年の秋から、国士舘大学にお世話になって、今防災を担当しています。

情報を防災に役立てるために

最近の災害の中で、防災対策に占める情報の位置付けや役割が非常に重要になってきています。その中でも「情報をどうやって防災に生かすのか?」ということが、最近の防災対策の非常に大きなテーマになっています。防災情報をどうやって減災に生かせばいいのかを具体的に考えてみたいと思います。

1.迅速な警報の発令

2011年3月11日に発生した東日本大震災では、大変大きな被害をもたらしました。あの時のことを覚えている方はたくさんいらっしゃると思いますが、午後2時46分に地震が起きました。その時の地震の大きさがマグニチュード9.0、地球上で1000年間に数回ぐらいしか起きない規模の超巨大地震でした。三陸の沿岸、関東の太平洋側など、広い範囲に津波が押し寄せて大きな被害が出ましたが、この時、気象庁は3分後に大津波警報を発表していました。その時は「岩手県に3メートル、宮城県で6メートル、福島県で3メートルの津波が来る恐れがあります」という数字でした。その25分後に予想される津波の高さを10メートルに切り替えたのですが、沿岸部では停電などが発生していて、最初の情報しか伝わらなかった人がたくさんいました。どうして最初に正確な情報が出なかったのかと疑問に思う方がたくさんおられると思いますが、あの地震では、3分ぐらいかけて震源の断層が次々に破壊され、震源は南北500キロ、東西200キロという大変広い範囲に及びました。気象庁が最初に大津波警報を出したのが、地震の発生から3分後ですから、まだ地震の全体状況が分からない段階で情報を出しました。実際、最初の段階でなかなか正確な情報が出しにくいということがあります。そこで、皆さんにぜひ覚えておいてほしいのは、いろんな情報が出てくる中でも、初期の情報はやはり正確性に欠ける部分があるということを分かった上で、気象情報や津波情報を受け止める必要があるということです。

2.「倍半分」~警報を読み取って防災に生かす~

防災情報というのは、早さが大事です。どういうことかと言いますと、例えば津波で言えば、津波が来る危険性がある所に、「これから津波があるから危険だから逃げてくれ」と伝えるためには、津波の前に情報が伝わらなくては意味がありません。
昭和58年の日本海中部地震の時には気象庁が情報を出して、NHKなどの放送局がその津波の警報を放送するまでに約14分かかっていました。しかし、実際には津波は7分から8分で襲ってきており、津波の情報は間に合いませんでした。「もっと早く情報を出さなければいけない」ということで、気象庁や放送局が努力をして、平成5年の北海道南西沖地震の時には、発生後約5分で警報が出ました。この時には奥尻島でほぼ5分後に、警報と同時に津波が来ていましたので、やはり間に合わず、私たちは大変悔しい思いをしました。そこでもっと早く警報を出そうということで、東日本大震災では3分で警報が出たのです。ただ迅速性を求めると第一報の情報が正確でないこともあるわけです。気象庁も津波の情報というのは「倍半分」だと言っています。これは、最初に出す津波情報は、迅速性を重んじているため、倍になることもあるし、半分になることもあるということです。つまり、6メートルの津波が来そうだという情報が出たら、12メートルになることもあるし、3メートルくらいのこともあるということで、津波の情報というのはそのくらいの幅があることを念頭に置いておいてもらいたいということなのです。

3.命を守るための避難行動

東日本大震災で被害を受けた三陸地方というのは、過去にも津波の災害を何回も何回も経験して、世界的に津波の対策で先駆的な取り組みが行われていた所です。「津波がどの辺まで来るから、この辺の人たちは、こちらの内陸の避難所に行ってくれ」というようなことが書かれた地図、ハザードマップも配られていました。それから三陸沖には所によっては10メートルを超えるような高い堤防が造られていました。これらのハザードマップも堤防も、過去400年くらいのデータを参考にして作られていました。ところが、東日本大震災でやってきた津波は1000年に一度の規模のものだったので、400年間のデータで作っていたハザードマップや堤防は、なかなか1000年に1度の規模の災害に対応できていなかったわけです。
さらに最初の情報を聞いた人の中には、三陸沖には10メートルを超える堤防がありましたから、「俺の所に来る津波が3メートルなら、こんな高い堤防があるから大丈夫じゃないか」と思ってしまった人もいましたし、その後停電になってしまって情報が伝わらなくなりました。このことを振り返って、気象庁は今後、大津波警報の出し方を見直すことにしています。大きな津波が来そうなときには、何メートルという数字ではなくて、「巨大な津波が来る恐れがあります」あるいは「高い津波が来る恐れがあります」というような表現で、命を守るために避難を目指す情報の出し方をしたいというふうに言っています。
私たち自身もやはり覚えておかなければならないのは、相手は自然ですから「今の科学が自然を捉えたり、分析したり、解析したりするには、やはり限界がある」ということです。「6メートルの津波が来る」と言われたら、5メートル90センチから6メートル10センチぐらいの津波で収まるというような正確性を求めてはいけません。「あっ、相当大きな津波が来るんだ」ということをその数字から読み取って、自分の避難の行動に生かすことがとても大事で、つまりは自然に対してどれだけ謙虚になって情報を生かすことができるかどうかということが大切だと思います。

※今回のインタビュー記事は、東急電鉄の協力のもと、「FM salus」が過去に放送した『東急建設 presents 「サロン・ド・防災」』の内容を、一部改定して掲載しています。