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防災インタビューVol.148

情報を防災に生かして命を守る

放送月:2018年1月
公開月:2018年7月

山﨑 登 氏

国士舘大学
防災・救急救助総合研究所 教授

FMサルースで放送された音源をお聞きいただけます。

「正常化の偏見」に打ち勝つ防災教育

防災情報が出された際に、その情報を生かすためには、私たちが事前に分かっていなければいけないことがあります。私たちは、なかなか自分にとって嫌な情報をきちんと受け止めることができないです。それはどういうことかというと、例えば、大雨が降って避難勧告が出て、避難するように言われても、「去年の雨の時には俺は逃げなくても大丈夫だったから、今回も大丈夫だ」、津波で避難しろと言われても、「この前、津波警報が出た時もたいした津波が来なかったから大丈夫」というふうに、自分に都合のいいように考えて、避難しないようにしてしまうことを、「正常化の偏見」と専門家は呼んでいます。そういう心理状態を私たちは持っています。それを打ち破っていかなくてはいけないのです。
例えば、東日本大震災の時に、「釜石の奇跡」という言葉がありました。防災教育を真剣に受けていた子どもたちが、「もしかしたら大きな津波が来るかもしれない」と言って、山へ山へとどんどん逃げていきました。しかも「逃げろ、逃げろ」と大声を上げて逃げたので、周りの小学生や近所の人たちも一緒になって逃げることができました。これが「釜石の奇跡」です。また、2004年にスマトラ沖地震という大きな地震がインド洋で発生した際に、タイに遊びに来ていたイギリス人の女の子が、大きな揺れがあった時に、「もしかしたら津波が来るかもしれない」と家族や周りにいる人たちに言って、逃げることができました。後で聞いてみると、学校で津波の勉強をしていた成果だということが分かりました。津波についてきちんと知っていれば、「正常化の偏見」が働いて「逃げなくてもいい」と思う気持ちを打ち破って、行動する力の元となるということです。そのため、地域で防災を教えたり、地域で防災訓練をやるということは、非常に大事なことだと思います。
NHKの記者をしていた時に、ある地域に防災訓練を取材にいきました。その地域では非常に防災訓練が盛り上がっていました。防災訓練が盛り上がる地域はお祭りもにぎやかです。防災訓練には人はいっぱい来るけれど、お祭りやイベントには人が来ないという所は見たことがありません。つまり、地域のことを考えている人が多くいる地域では、イベントにも人が集まるし、お祭りにも人が出てきます。これはコミュニティを活性化すると同時に、防災にも防火にも防犯にも役立つということだと思います。よく地域の方のお話を伺うと、「なかなか防災訓練に人が集まらなくて困るんだ」という話を聞きますが、それならば、まず楽しいことをやればいいと思います。楽しいことをやって、地域の人が集まって来て、「じゃあ1回ぐらい防災訓練やってみようか」ということで、地域のコミュニティの力で防災訓練をやってみるというような取り組みが必要です。

防災情報の正しい活用 ~マスメディアと地域のメディア~

去年の夏までNHKで解説委員をしていましたが、NHKに41年半勤めている間、「防災情報をどう伝えたらいいのか」ということを常にいろいろ考えながらやってきました。しかしながら、実際、マスメディアだけでは防災情報は伝えきれないのです。それはどういうことかというと、被災者のニーズは次々に変わってきます。例えば、地震が起きた後は、「どんな地震だったのか」ということが知りたくなります。そして、その地震についてある程度分かってくると、今度は「交通機関は動いているだろうか」ということに関心を持ったりします。それが終わると、「あれ、スーパーやお店は開いているだろうか」「家族は安全だろうか」というように、それぞれの人によってどんどん関心の対象が移っていくわけです。しかも、「スーパーは開いているだろうか」「お風呂屋さんはどうだろうか」「歯医者さんはどうだろうか」という情報が必要になってきた時には、マスメディアはそれぞれの町の情報全部はどうしても伝えきれません。それに対して、最近はあちこちにあるケーブルテレビや地域のコミュニティFMが、災害が起きると、地域のきめの細かい情報を伝えています。そういう情報とマスメディアの情報とは、車の両輪のようなものだと思っていまして、両方が力を合わせて伝えることで初めて、多様な生活をして、さまざまな関心を持っている人たちに対応できる情報を伝えることができるのだと思います。
正確な情報がないと、みんなが不安になっている時は本当に危険です。例えばマグニチュード7.3、震度7の猛烈な揺れに襲われた阪神淡路大震災の直後には、この後余震があるかもしれないということで、気象庁が「マグニチュード7.3の地震があったので、余震としてはマグニチュード6ぐらいの地震がありそうだ」という情報を出したのですが、その情報を聞いた人が「震度6の地震がある」と受け止めて、地元の気象台や彦根の気象台に随分問い合わせがありました。東日本大震災の時にも、「もっと大きな津波が来るかもしれない」という情報が被災地に流れたことがありましたし、「化学工場から何か変な薬品が漏れているみたいだ」というような情報が出たこともありました。それは根も葉もない情報なのですが、不安があるときにはそういう情報が拡散していきやすいということがあります。熊本地震の時にも、ネット上に「動物園からライオンが逃げた」と言って、ライオンの写真付きで情報が流れました。そういう間違った情報を打ち消すためにも、マスメディアや地域のメディアがきちんと正しい情報を伝え続けるということがとても大事です。正確な情報を流し続けないと、災害の起きたときの社会はとても危険な方向に動いてしまう恐れがあるのです。
防災情報というのは、災害の前には「こうやって災害に備えましょう」という情報が必要ですし、災害が起きたときには救援や救助に役立つ情報が必要です。災害からしばらくたったときには、復旧や復興に役立つ情報も大事です。そういう情報をマスメディアと地域のメディアが車の両輪のようにしてきちんと伝えていくことで、私はこの国の防災のレベルをもう1段上げることが出来るのではないかと思っています。

※今回のインタビュー記事は、東急電鉄の協力のもと、「FM salus」が過去に放送した『東急建設 presents 「サロン・ド・防災」』の内容を、一部改定して掲載しています。