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防災インタビューVol.151

災害時のトイレ ~事前に準備、しっかり防災~

放送月:2018年4月
公開月:2018年10月

新妻 普宣 氏

株式会社 総合サービス
代表取締役

FMサルースで放送された音源をお聞きいただけます。

東日本大震災発災時のトイレ事情

次に、2011年3月11日に発生した東日本大震災のトイレ事情についてお話ししたいと思います。東日本大震災では、被害が広域に及んでおり、トイレに関しても劣悪な状況でした。私もこの時は約3週間後に現地に入って、まず避難所関係を回って、事前情報として調べたトイレに関わる上水、下水、電気の被害の状況を確認していきました。まず上水道は全国で約230万戸の断水が発生していました。すなわちこの時点でトイレは流せないということが起きていました。次に下水だけを見てみると、120の施設で稼働が一時停止しており、処理ができないため、水がたとえ出てもトイレは流せないという状況が多く発生していました。もう1つ盲点ですが、関東も含めて850万戸という膨大な数の停電が発生していました。皆さんは、計画停電を覚えているかと思います。マンションなどでは、一度、上水をポンプで屋上のタンクに上げてからでないと使えないところがありますが、計画停電で電気が止まると上げられなくなり、各戸に水が回らなくなります。

よく「災害対策として、お風呂に水を溜めておいて、万が一の時は、それをトイレに流すようにしてください」と行政などから言われているかと思いますが、ただ溜めるだけでは駄目で、流す方も考えないといけません。上水、下水、電気というライフライン3つをイメージしていただいて、その全てが扱えないとトイレが使えないということを知っていてほしいと思います。

トイレを我慢できる人はいない

皆さん誰でもトイレを我慢できる人はいません。普通の人は、トイレは1日5回から6回行くと言われていますから、割り算しますと2、3時間に1回トイレに行っているわけです。それが突然、災害が起きるとトイレに行けなくなってしまい、我慢しなければならなくなってしまいますので、そうならないように、きちんとイメージしてトイレ対策もしていただきたいと思います。熊本地震の際にも再三言われたのが、エコノミー症候群についてでしたが、そのエコノミー症候群の最も多い原因の一つがトイレを我慢してしまうことによるものです。

東日本大震災の時の避難者からヒアリングをした際にも、「水が不足してトイレの清掃ができず不衛生になった」ということがありました。普段は掃除ができるのですが、水が不足するとトイレもできない上に、掃除もできなくなります。普段は最も安らげるはずのトイレの空間が、避難所では4K、「怖い、汚い、臭い、暗い」場所となり、安心できない場所となってしまいます。水が止まり、水が流せなくなり、電気も来ないことで、トイレに行けなくなってしまうということをぜひイメージしてください。また、発災から間もなくは、屋内のトイレが使えないので、避難所の屋外に仮設トイレやマンホールトイレなどが設置はされますが、夜、雨風が強い時、寒い時などは、外のトイレに行きたくなくなってしまいます。すると、目の前にはおにぎりや水など、被災地に対する支援物資が来てはいるけれど、トイレに行けない、行きたくないので、食べたり飲んだりするのを我慢してしまうという話も聞きました。水とおにぎりがあってもトイレに行きたくないから我慢してしまうという悪循環が実際に起きるのだということを、皆さん、まずイメージしていただくことが大切だと思います。

2004年10月23日に発生した新潟中越地震でも、熊本地震や東日本大震災の状況と変わらず、当時はまだ、エコノミークラス症候群という言葉は使っていませんでしたが、現地でヒアリングしてみると、支援物資はあるけれどトイレは行きたくないので我慢しているというシニアや女性の方が多くいました。普段の自分のトイレ、マイトイレが使えなくなった場合には、なかなかトイレに行きたくなくなってしまうという状況は新潟でも起こっていました。

1995年1月17日に発生した阪神淡路大震災では、トイレは過去で一番ひどい状態になっていました。私が現地入りして、三宮の駅の横にあった仮設トイレのドアをあけると、もうてんこ盛りになっていて、トイレすらできない状態になっていました。この地震から23年たって、トイレも進化してきていますが、通常のトイレが近代化され便利になればなるほど、災害時というのは、一気にトイレが原始時代になってしまいます。水も下水道も使えない、そして電気も止まってしまうという前提で、トイレについても災害対策をしっかりと考えていただきたいと思います。

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。

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