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防災インタビューVol.155

「災害に備え、災害を生き抜き、日常に戻るために」

放送月:2018年8月
公開月:2019年2月

鍵屋 一 氏

跡見学園女子大学
観光コミュニティ学部
教授

FMサルースで放送された音源をお聞きいただけます。

プロフィール

私は、もともとは板橋区役所の防災課で防災課長をしておりまして、その後いろいろと災害対応を勉強しています。途中で板橋区役所を退職しまして、現在は、跡見学園女子大学の観光コミュニティ学部の教授をしています。

水害への備え

まずは、今年7月2日から7月8日にかけて西日本地方を襲いました「平成30年7月豪雨」を通して、水害への備えについて一緒に考えていきたいと思います。今回、非常に長い期間、雨が降り続きました。通常、雨というのは2、3日が峠、台風もせいぜい2、3日なのですが、このときは1週間降り続いたという状況になっており、これからもこういうことが起こり得ると考えられます。今回は台風7号が2、3日留まっており、そこに太平洋高気圧が下の方から入って来たことにより、高気圧の方からずっと湿った空気が送り込まれ続けることで梅雨前線が停滞して、そこでかなり大きな積乱雲が発達して大雨が続くという状況でした。そして、同じような場所に、同じように大雨がずっと降り続くことにより被害が大きくなってしまったということです。
今年は梅雨が早く明けました。私たちの間では、「6月に雨が少ないと7月は怖い」とよく言いますが、結局平均化することになるのか、6月に空梅雨だと、7月に台風や梅雨前線が活発化して大きな雨になって災害を起こすという経験則があります。今年もちょっと心配していたのですが、実際には、考えていたよりもはるかに大きな災害になってしまいました。また、大雨による災害の場合は、田畑などに被害が出るのは、ある程度やむを得ないのですが、今回の水害では、人的被害が大きかったというのが特徴になります。地方自治体が避難の警報を出してはいるものの、「今までは大丈夫だったから」とか、「まだ川の水がこの程度だから」とか、実は科学的根拠がないままに安全だと思い込んで避難が遅れるということも非常に多くありますので、ぜひ避難警報に従って行動していただければと思います。

自治体が出す3種類の避難警報

自治体が出す避難警報には3種類あり、一番最初に出るのは「避難準備・高齢者等避難開始」です。非常に長い名称で、いろいろな議論を経てこの名称に決まりましたが、以前は
「避難準備情報」という名前でした。ところが「避難準備」だけだと、準備すればいいんだ、逃げなくてもいいんだと人間は思ってしまいます。そこで「避難準備・高齢者等避難開始」、避難に時間がかかる人はもう逃げてくださいというのが付きました。これは岩手県岩泉町での水害の際に、高齢者の方々が逃げなかったという教訓を踏まえて、「高齢者等避難開始」というのが新しく付いたものです。
2番目は「避難勧告」です。これはよく聞かれているかと思いますが、「もう避難した方がいいですよ」ということですので、避難勧告が出たときにはもう水かさがどうのとか、雨の量がどうのではなく、安全な場所に移動するというのが基本です。安全な場所というのは必ずしも屋外とは限りません。例えばマンションの上の階にいるのであれば、外に出る方がかえって危険なので、別に移動しなくてもそこに居ればいいわけです。しかしながら、平屋建てや川のすぐそばの場合は、浸水する恐れがありますので、安全な避難場所に移動するということが大事になってくると思います。
3番目は、もうすぐに動かなければいけないという「避難指示(緊急)」と言われるものです。これは「もう差し迫った危険性があるので、もはや外に出るのも危ない。家の中でも高い所、あるいは山側と反対の所にいて命だけでも守るような行動をとりなさい」ということです。こういった形で自治体からは警報が出ますが、この頃はかなり科学的な裏付けを持って警報が出ますので、自らの判断だけで「きっと安全だろう」と思い込んで避難をしないというのは非常に危険です。

人はなぜ逃げないのか? ~正常化の偏見~

人というのは、警報を聞いても「自分は大丈夫だ」と思ってしまって、なかなか逃げようとしません。その「自分は大丈夫」と思ってしまう気持ちを「正常化の偏見」と言います。人間は誰でも「自分は大丈夫だ」「自分は事故に遭ったりしない」「災害に遭ったりしない」という気持ちがあるものです。自分にとって都合の悪い情報が入ってくると、それを無視したり、過小評価しようとするものです。警報が出ているにもかかわらず、「それはきっと違うだろう」「自分は大丈夫だろう」と思ってしまう傾向がありますが、科学的な根拠がないのに勝手に安全だと思い込むのは、非常に危ないことです。
人間は誰でも「正常化の偏見」はあります。それは日常生活を送るのではとてもいいことで、「何か今日はいいことありそうだな」とか、「宝くじを買ったら当たるんじゃないか」とか、それがあるから毎日をポジティブに生きられます。しかしながら逆に、科学的に検証されたリスクに対しても「正常化の偏見」で、つい物事を見てしまいがちで危険な目に遭うことになります。そこで自治体からの避難勧告が出たら、必ず何も考えずに安全な場所に避難をするということが大事です。そのための準備として、まず家の中に留まっても大丈夫なのか、家の外に出るべきなのか、家の外に出るべきだとしたら何を持っていくのか、どういう方法で避難するのか、実際に避難場所まで歩いてみるといったようなことをしておくことが必要です。そうすれば、いざ「どうしようかな」と迷っていても自治体から避難勧告と出たときに、「じゃあしょうがない、行くか」と行動することができ、命を守ることができます。今回は西日本で豪雨災害がありましたが、このような災害は、いつ、どこで起こっても全く不思議はありませんので、常に警戒をお願いいたします。

※今回のインタビュー記事は、東急電鉄の協力のもと、「FM salus」が過去に放送した『東急建設 presents 「サロン・ド・防災」』の内容を、一部改定して掲載しています。