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防災インタビューVol.155

「災害に備え、災害を生き抜き、日常に戻るために」

放送月:2018年8月
公開月:2019年2月

鍵屋 一 氏

跡見学園女子大学
観光コミュニティ学部
教授

FMサルースで放送された音源をお聞きいただけます。

福祉施設における「事業継続計画(BCP)」の必要性

福祉施設の方が避難した場合、避難先での介助が大変だったという話がありましたが、水害の際だけでなく、地震災害や津波災害で水や電気などのライフラインが止まると、トイレ、交通、通信なども使えなくなりますので、高齢者や障害者を支えるのが厳しい状況になります。避難先で果たして食事ができるのか、トイレができるのか、水があるか、薬は大丈夫か、温度の変化に対応できるかということを事前に考えておかないと、避難先に行っていきなり困ってしまうわけです。そういうふうに避難先でも事業ができる、福祉が継続できるための「事業継続計画(BCP)」が必要になってきます。ところが日本の福祉施設では、この事業継続計画をほとんど作っていないので、避難所で大変な困難を抱えることになります。
福祉施設にはもうひとつ役割がありまして、例えば水害になってしまって多くの家が流されてしまった場合、福祉施設が高台にあって無事だとすれば、福祉施設は避難所の役割を果たすことになります。福祉施設はバリアフリーですので、高齢者や障害者にとっても福祉施設に居る方が居やすいので、福祉避難所として使用されることになります。これは、高齢者や障害者や乳幼児などのためにバリアフリーで家族と一緒に過ごせるような施設という意味ですが、この福祉避難所を運営するにもやはり計画が必要ですし、そのための訓練も必要になってきます。今後高齢社会を迎えて福祉施設の需要がどんどん増えてくる、福祉施設が増えてくるということになりますと、そのための避難計画、あるいは事業継続計画、そして福祉避難所の運営のための計画が必要になってきます。
私は、現在跡見学園女子大学の教員をしているのですが、福祉施設はそれほどの準備がまだできていないので大変なことになるということで、一昨年に「福祉防災コミュニティ協会」というのを立ち上げました。今後福祉施設の防災力強化のための研修をしたり、平成30年7月豪雨災害のような災害時に、福祉関係者を現地に派遣して支援するための活動をしていこうということで今動いています。1980年代には、高齢化率は9%だったのですが、今や27%で3倍ぐらいになっています。それくらい急激に高齢者が増えているということですから、防災対策も若い人中心の防災対策ではなく、高齢者や障害者が安心して暮らせるような防災対策にしていかなければいけないと思います。
東日本大震災の時に、「助かった方々は誰が助けてくれましたか?」というアンケートを行った結果では、1位は家族、2位がご近所の方、3位が福祉関係者で、ご近所と福祉関係者を合わせると、家族より多いです。ところが福祉関係者の方は、対象者を助けにいこうとするあまりに逃げ遅れるということもありますので、やはり危機管理の勉強、教育というものをきちんとやらなければいけないと考えています。

避難生活を乗り切るために

災害の際に福祉施設ではなく一般の避難所に避難したり、自宅にいるもののライフラインが止まって、お店もやっていないというと、もうそれは避難生活です。避難生活を家の中で送ることを在宅避難と言います。マンションなどではこの在宅避難が強く推奨されるわけですが、このような避難生活を無事に乗り越えて元の生活に戻るためのポイントについてお話をしたいと思います。
避難生活においては、まずできるだけ日常と同じ生活を心掛けてほしいです。交通機関も動いていない、友達もいろいろな避難場所に行ってしまってなかなか会えないということで、なかなか動かなくなってしまう方が多いです。特に高齢者はトイレや食事、運動がおろそかになりがちです。そうしますと、前まで元気だったのに急に体調が悪くなって要介護の状態になるということも本当に避難生活で多く起こっています。東日本大震災の被災地においては、そうでない地域に比べて2.5倍ほど要介護認定率が増えていますので、まず避難生活においては、トイレ、食事、運動に留意して、心してよく動くことが大切です。食事も避難所で床の上にベタッと物を置いて食べていますと姿勢がとても悪くなることで、食道ではなく肺の方に食べ物が入ってしまうような誤嚥性肺炎も起きやすくなります。また、床の上に食べ物を直接置いて食事を取ると、菌も多く不潔なので、やはりテーブルの上で食事を食べられるようにしていく必要があります。そういうことにも気を付けて、トイレ、食事、運動を心掛けるようにしていただきたいと思います。
また、災害時はいろいろな情報が出回りますが、偽の情報もたくさん来ます。役所などの信頼できる正しい情報に基づいて、判断をしていただければと思います。熊本地震では、ライオンが逃げたとか、大阪北部地震では、シマウマが逃げたというような情報が流れました。これは大阪らしいシャレかもしれないのですが、そういったデマにも注意してほしいと思います。SNSなどからの情報はフェイクニュースなどの危険な情報もあるのでくれぐれも気をつけていただきたいと思います。災害時は情報がないこと自体が非常に心細いため、うそでもいいから情報が欲しいという心理になりますので、間違った情報を信じて行動しないようにしていかないといけません。
また、水害というのは大概、夏に起こるので、熱中症になりやすい時期です。熱中症は水分を取っていれば大丈夫ということではなくて、塩分もとても大事です。そこでスポーツドリンクなどでは塩分と水分両方取れますので、水よりもスポーツドリンクのようなものを取って、熱中症にならないように注意してください。もう一つ、高齢者の方々はもったいない精神があって、これぐらいなら我慢できるということで冷房をあまり付けないことがありますが、それによって体が熱くなってしまいますと熱中症になりやすくなりますので、きちんと適温にまで下げて、体の温度を上げないようにするということも大事です。

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。

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