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防災インタビューVol.158

難民支援の視点に立った災害支援

放送月:2018年11月
公開月:2019年5月

鶴木由美子 氏

認定NPO法人 難民支援協会
定住支援部コーディネーター
コミュニティ支援担当

FMサルースで放送された音源をお聞きいただけます。

地域の力を生かす支援

私たちは、普段炊き出しを専門にしているというわけではないのですが、食べ物というのは本当に大事で、避難生活の中で朝昼晩、おにぎりなどの毎日毎日同じメニューを繰り返し食べていると気がめいってしまいます。それだけでなく、実は配られているお弁当が食べられない人、例えば高齢で嚥下ができないとか、アレルギーがあるとか、お子さんで小さくて食べられないとか、あとは外国人で宗教の問題があって食べられないという人もおり、食べ物をめぐっては、いろいろな問題があります。その対策のひとつとして、これまで炊き出しの支援の得意な方々やNPOにお手伝いしてもらったり、自分たちでもやってきたことはあるのですが、温かい食事を提供して、少しほっとするようなサロン的な役割をそこで果たしたりもしてきました。また、私たちがやってきた炊き出し支援の中には、日本に住んでいる難民の人たちが、避難所の方々に母国の料理を作って提供してくれるというものもありました。毎日毎日同じメニューを食べ飽きていたときに、普段食べたことのない外国料理を食べて、「パンチが効いてとても美味しかったよ」と言っていただいたこともありました。

今回、マイノリティの方々への支援の話をしてきたのですが、マイノリティだからといって常に支援される側だと決めてしまうのは少し違うと思います。例えば難民の方、外国人の方は、語学という意味では支援される側なのかもしれませんが、日本で母国の料理のレストランを経営している方たちは、とても美味しい料理の炊き出しができる方もいるので、平常時から「この人は支援される側の人だ」というふうに決めつけないで、この地域にはどんな人たちがいて、その人たちにどういうふうに適材適所で手伝ってもらうことができるのかを考えていただきたいと思います。それによって地域の災害の対応力が上がり、強くなることができるということを知ってほしいと思います。そのためには、普段からの地域のコミュニケーションが不可欠ですので、いざというときに適材適所で力を合わせられるよう、平時から皆さんで考えておくことが大切です。

全ての人に適切な支援を届けるために

私たちの団体では、普段から難民、避難民の方を支援していますが、日本における難民というのは、制度から漏れていたりセーフティネットからこぼれ落ちてしまっていたりして、最も支援が届かない人たちです。その中で、私たちが普段意識していることは、社会の中で最も支援が届かない人たちに合わせて支援を設計し、社会のインフラを設計していくことです。災害時もまずそれを意識しながら、いろいろな人にきちんと支援が届くようにということを意識して活動していきたいと思っています。

それと同時に、災害の際には、難民の方と一緒に支援をすることで、「支援される側から支援をする側へ」ということを意識して活動しています。例えば普段の取り組みの中でこれまでやったことのひとつに、難民の方、外国人の方、行政の方などが一緒になって、災害の時を意識した街歩きをして、地域の中でどんな難しいところがあるのかを探しながら歩いたことがありました。その時に「避難所」という文字を難民や外国人の方が読めずに、「これは何?」と行政の方に聞いていました。その時初めて行政の方も「漢字では、伝えたいことが伝わっていなかったのか」ということに気付かれました。この気付きはとても大事なことで、「避難所」という漢字三文字を、絵やピクトグラムに変えるだけで子どもたちにも分かりやすくなったり、外国人も理解できたり、あるいは文字を読むのが不得意な日本人の方もそれで分かったりということもあるので、単にマイノリティの人のためだけでなく、その配慮がよりたくさんの人にとって役に立つのではないかと思います。そういう視点に立って、行政の方々とも一緒に考えながら地域を作っていくことが非常に重要ではないかと思います。

このような話は、自分とは関係ないことだと思って、ついつい聞き流してしまいがちだと思いますが、災害は必ず起きます。それに備えて、常に自分事だと思って、自分の地域ではどんなことができるのか、自分の地域にはどんな人たちが住んでいるのかを理解し、力を合わせて適材適所で頑張っていけるよう、普段からぜひ考えておいてほしいと思います。

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。

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