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防災インタビューVol.158

難民支援の視点に立った災害支援

放送月:2018年11月
公開月:2019年5月

鶴木由美子 氏

認定NPO法人 難民支援協会
定住支援部コーディネーター
コミュニティ支援担当

FMサルースで放送された音源をお聞きいただけます。

コミュニケーションから生まれる包括的な支援

「支援の手が届かない人がいる」ということを心に留めながら、常に私たちは活動していますが、実際に被災地で支援が届かずに困っているようなことがあれば、他のNPOや前乗りで支援をしているNPOとも共有して、「何か一緒にできないか」ということを考えていきました。例えば、自衛隊のお風呂があるにも関わらず、文化的な背景があって入ることができず衛生状態が悪くなってしまった外国人、難民の人がいるという話をしましたが、よくよく考えてみますと、例えばLGBTQの人が公衆浴場に行けないとか、あるいは障害者で、介助者が自分の性別と別なので一緒に公衆浴場に行けないということは、外国人や難民の問題だけではなく、他の支援が届きにくい人たちにも共通する課題です。そういった出来事に当たった際に、今こういうことが起きていて何か協力してできないかというのを、必ず一緒の地域に入っているNPOやそれをコーディネーションしているような機関にお話しして、報告するようにしています。

これは、お風呂の問題だけではなく、例えば給水が始まったとしても、その給水に妊婦さんが行けるのかというと、重い荷物を持って炎天下で水を運ぶというのは難しかったりしますし、高齢者の方が給水の列に並んで熱中症で倒れてしまったりしても問題です。このように、支援は一応あったとしてもそれが本当に届くのか、必要な人に届くのかというのはまた別の問題で、それをなるべくいろいろな方々と協力しながら突き詰めて、どうやって届けるかを考えていきたいと思っています。

同様に、行政が物資の供給をしたとしても、それをどういうふうに必要としている人に届けていくのかということは、なかなか難しい問題で、避難している方たち自身が自分たちでそれを解決するのも難しいことだと思います。西日本豪雨災害の際もそうでしたが、やはり私たち1団体、1人ではなかなか支援活動を支援が必要な人に届けていくのは難しいことです。やはりいろいろな団体や専門家の方がいる専門団体が一緒になって、「ここはどういうふうにしたらいいだろう」ということを一緒に考えていくことが大事だと思います。熊本の災害の際に支援に入った避難所で障害者の問題が出てきた時も、まず真っ先にその地域の障害者支援をしている団体に「今こういう状況にあるのだけれど、どうしたらいいのか」ということを相談して、アドバイスを頂きながら活動していきました。このように、1団体で全部やるということではなく、いろんな目線を持ったさまざまな人との力をつなぎ合わせてコーディネーションしていくことが包括的な支援にすごく必要なことなのかなと思います。

マイノリティに配慮した支援

被災地の避難所では、発災直後はさまざまな方が避難してきて、非常に混乱した状態になっています。いろいろなトラブルもありますし、これまで話してきたようにさまざまな困難を抱えたマイノリティの方への配慮もできないようなレイアウトになってしまっているので、それを一つ一つ配慮をして、少しでも状況が良くなるように、避難所の居住エリアのレイアウトなどを変えていくことが重要になってくるかと思います。

もちろん避難者の方々の抱えている悩みにもよりますので、そこに来た方をまず見てからのことになりますが、例えば私が支援に入った熊本の避難所の例ですと、まず避難所のトイレについて考えていきました。トイレまでの距離が遠い場合には、足腰が悪いと尿意を感じてからトイレまでが間に合わないということもありますので、そういう方を優先してトイレに近い方に居住エリアを持ってくるという配慮も必要です。特に避難所のトイレについては、和式のトイレしかない場合がよくありますが、健康な大人はいいのですが、足腰が弱い高齢者や足に障害がある方は使うことができずに失敗してしまうことがあります。そのような時は和式トイレを洋式に変えるような機材を設置したり、バリアフリーにするということも行っています。また、避難所のトイレは、衛生管理がうまくいかないと、ノロウィルスなどによる集団感染なども引き起こしてしまうことがありますので、トイレの整備というのは非常に重要です。

また、居住環境についても、足腰が弱い人の所には段ボールベットをきちんと配置して、寝ている姿勢から起き上がることがきちんとできるようにしました。介助が必要な方には、すぐそばに介助の方のスペースを取ったり、高齢者の方々、足腰が悪い方のすぐ近くに子どもがいる大家族の居住エリアを作ってしまうと、子どもとぶつかって転倒してしまうということもあるので、ある程度離れたスペースで少し子どもが遊んだり走り回ったりしても大丈夫なようにスペースを取ったりして、居住スペースを改善しました。また、マイノリティの方ですとか、小さいお子さんに授乳されている方など、大勢の方の中で生活するのが難しい方がいたら、そういう方を集めて個室に移したり、精神障害を持っていて皆のなかで共同生活をするとパニックを起こしてしまうような方がいれば、別室を用意したりといったような配慮をしていくことが必要かと思います。このように、私たちは普段の難民支援においても、「支援が届かない人たちが必ずいる」ということを念頭において活動しているので、被災地でも同様に、このことを意識しながら活動しています。

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。

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