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防災インタビューVol.175

危機管理からの学び ~自然災害と感染症~

放送月:2020年4月
公開月:2020年8月

櫻井 誠一 氏

日本パラリンピック委員会 副委員長
東京2020パラリンピック日本選手団副団長

FMサルースで放送された音源をお聞きいただけます。

阪神淡路大震災からの学び

1995年に起こった阪神淡路大震災は、都市型自然災害としては非常に大きな災害で、その当時、私は神戸市で広報課長をしていました。自宅も神戸市内で、被害はなかったのですが交通手段がなく、何とか自分の車で市役所の災害対策本部まで駆け付けて災害対応をしました。この地震は1月17日の早朝5時46分に起こり、神戸では震度7の激震で、大阪府、京都府など、非常に広域に被害が生じました。特に都市では、インフラが高度に発達しているので、電気水道ガスだけではなく、情報通信のインフラにも被害が生じており、都市で起こった災害としては初めてのことでした。死者が6400人余り、負傷者が44000人、全壊の家屋が10万棟というような規模で、ピーク時には31万人が避難をしました。鉄道や高速道路も倒壊し、本当に都市全部が破壊されたような感じでした。都市とはいえ、この地域には木造の老朽家屋も多くあり、高齢者も多く住んでいましたが、家が倒壊したり火災が発生して、多くの方が亡くなりました。関東大震災の場合は火災が原因で10万人ぐらいが亡くなったのですが、阪神淡路大震災では、老朽家屋の倒壊により圧死された高齢者が非常に多くおられました。避難をした人も31万人ということで、私たちはこの状況の中で対策を立てていきましたが、市の現状を伝えたり、市の対策や今後の生活をどのように成り立たせていくのかということについての情報が市民になかなか伝えられず、非常に苦労しました。

阪神淡路大震災は非常に広域で、経済的にも壊滅状態になっていったため、なかなか復興する状況までは行かず、10年たってもなかなか回復していない状況でした。震災から20年たった最近、神戸の町を歩いていて感じたのは、ようやく新たな投資をしようという元気が出てきたということです。それまでは、生活を元に戻すことが精一杯で、それを行政も一緒になってやっていくことでほとんど費やされてしまい、新たなことを考える余裕がなく、やはり復興までには20年かかったという気がします。

しかしながら、このような大きな災害の中で、いろんな学びもありました。1つは「ボランティア元年」と言われるように、この阪神淡路大震災には延べ100万人を超えるボランティアの方が来られ、その方々の活躍によって市民の生活が支えられたということです。2つ目は、それまでは盛り込まれていなかった、大災害における危機管理マネジメントが、地域防災計画の中に盛り込まれて組織化されていったということです。阪神淡路大震災以降、他の地域の市町村でも危機管理について学んでいただけたのではないかと思います。それと同時に、当時の避難所や仮設住宅は、災害救助法という制度の下に運用されていたのですが、その時代に合った避難所や仮設住宅ではありませんでした。例えば避難所では毛布1枚を敷いてみんなが寝るような状態でした。今では避難所でも、段ボールでベッドを作ったり、囲いをしたり、いろいろな工夫がなされるようになってきていますが、当時はそういう状態ではありませんでした。仮設住宅も本当のプレハブで、ちょっと火が出ると完全に燃え尽きてしまうような住宅が提供されていました。阪神淡路大震災以降に、やはりこれではいけないということで、今日では随分改善されてきています。また、この時に、「生活再建」という言葉が出てまいりまして、生活再建というのは一体何なんだろう、単に復興ということだけではなく人々の生活を再建していくという要素はなんだろうということで、市でも学識経験者の方と検討した結果、7つの要素があることが分かりました。住まいと町が復興してくること、経済的な暮らし向きが改善されること、自分の心と体が健康になること、行政と住民が一緒に協力していくという気持ちになること、次に起こる災害に対しても備えていくこと、そして最後に一番大事なのが、人と人とのつながりだということを定義しました。

中でも地域のつながりが非常に大事であり、そこから「地域力」という言葉も生まれてきました。大災害の際には、「自助、共助、公助」が必要だということも、広く言われてきましたが、中でも人と人、地域とのつながりという共助の部分があって、共に働く「協働」によって、初めて人々の生活が再建したと感じられるようになる。そのことが非常に大切だということが分かり、その後の災害対策のあり方を変えていくことになりました。

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。

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