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防災インタビューVol.175

危機管理からの学び ~自然災害と感染症~

放送月:2020年4月
公開月:2020年8月

櫻井 誠一 氏

日本パラリンピック委員会 副委員長
東京2020パラリンピック日本選手団副団長

FMサルースで放送された音源をお聞きいただけます。

東日本大震災からの学び

2011年3月11日14時46分に、私は神戸市役所、その当時超高層のビルの18階で会議をしていた時に揺れがきました。最初は、立ちくらみかな、目まいかなと思っていたら地震で、大阪か東京で起こったのかと思ってテレビをつけて初めて東北での地震だということを知りました。その後、東北地方に津波が襲ってくる様子がテレビから流れ、非常に驚きました。阪神淡路大震災のように早朝ではなく、昼間の時間帯に起こった地震だったので、沿岸部の家にいた方、内陸部に仕事に行っていた方、沿岸にいた漁業関係者の方の所に、津波が襲ってきたという災害でした。

この東日本大震災の場合は、地震の被害に遭った所、地震と津波の被害に遭った所、地震と津波と原子力発電所によって大きな被害に遭った所があり、被害は東北だけではなく、北海道から高知まで20の都道府県が被害に遭い、合計の死者は約16000人、行方不明の方がいまだに2500人ぐらいおられます。負傷者は6000人、発災直後の避難者数は47万人で、阪神淡路大震災よりもさらに被害が大きい災害でした。阪神淡路大震災の時は建物による圧死の方が多かったのですが、東日本大震災の場合は津波による溺死が9割を占めていました。また、災害対応に当たっていた多くの行政職員が地震と津波の犠牲になり、その後の災害対応にも支障が出て、住民に対する支援対策がなかなかうまく回らなかったということもありました。経済的な部分では、いろいろなものを供給している東北から首都圏への物流が途切れたり、東北の沿岸部には石油製品の製油施設などもあったのですが、そこが稼働停止したためにガソリンが不足するという事態も起こりました。また沿岸部と内陸部との交通路に被害が出ていて、支援になかなか入りにくかったという印象もありました。

災害というのは、いろいろな形を見せるものですが、この東日本大震災からもさまざまなことが学べます。東北の地域は、非常に小さな自治体が多く、それらの自治体では、25年前に起こった阪神淡路大震災のマニュアルをそのまま地域防災計画にしていた所が多くあり、そこの地域に合った防災計画ではなくて、焼き写しという形で形を整えただけのような所がたくさんありました。地域防災計画を作るということは、やはり住民と一緒になって、その地域に合ったものを作り上げていくことが大事だし、一緒に避難訓練などをやることが非常に大事だということが改めて分かったということです。

それと津波の事象については、やはり言い伝えとか、その地域の文化の検証というものも非常に大事だったと思います。特に古くは、われわれは全然認識していない時代ですが、869年、平安時代の前期ぐらいに貞観地震が起こっており、それが言い伝えや地層の中から分かってきています。その後、明治時代の三陸津波地震というのもありました。このような災害が起こった時に、「ここまでは危ないよ」という意味で、モニュメントや記念碑のようなものが置いてあったり、その場所が神社の入り口になっていたり、言い伝えの中に危険な所というのが、いろいろな形で記されていたにもかかわらず、そういうことを忘れてしまっているのです。やはりその場所に残る言い伝え文化というものをしっかりと検証していくことも大事だということが分かったということです。

もう一つ、一番これが大事だと思うのが、この地震の時に生まれた言葉なのですが、「受援力と支援力」というのがあります。「受援力」というのは援助を受ける力という意味です。これはどういうことかというと、行政職員がたくさん亡くなられたので私たちが支援に入った時に「どういうことを支援しましょうか」と聞いても、何をしてほしいかということがなかなか提示されませんでした。日頃から災害に遭ったときに何をしてほしいかということをしっかりと計画の中に盛り込むことが大事であり、そういう意味で支援を受ける側が受援という視点から物事を考えて計画に落とし込むことが非常に重要で、このことが今後の災害に役に立つということが認識されたということになります。

災害においても、また今世界的な問題になっているコロナウイルス感染拡大を防ぐためにもそうなのですが、「何の目的で、そのような行動をするべきなのか」ということをしっかりとお互いに考えていくことが一番大事です。コロナウイルスに関しては、80%くらいの人は軽症ですし、感染しても元気に動き回れる人が多いために、感染が広がっていってしまい、医療体制がひっ迫してしまいますので、医療資源を守るための行動をするということに尽きると思います。

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。

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