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防災インタビューVol.166

防災は命がけより心がけ

放送月:2019年7月
公開月:2020年11月

浅野 史郎 氏

神奈川大学 特別招聘教授

FMサルースで放送された音源をお聞きいただけます。

「防災は命懸けより心掛け」

「防災は命懸けより心掛け」という標語をいろいろな場面で私は使っているのですが、15年くらい前の警察の交通標語に「運転は命懸けより心掛け」というものがあり、非常にいい標語だと思いました。そこからヒントを得て、何か色紙に書いてほしいと言われたときにもよく使っています。色紙に書くときに、相手の仕事を聞いて、福祉の仕事をしているとすれば、「福祉業、命懸けより心掛け」と書いています。私は放送の仕事もしているので、「放送は命懸けより心掛け」。最近結婚して、妻と呼ばれるようになった方には「奥様業、命懸けより心掛け」というようにいろいろな場面で使っています。

「防災は命懸けより心掛け」というのは、災害が来てから命懸けでやるのではなく、災害が起こる前に心掛けておくという意味です。これは大変いい標語ではないかと思っています。災害が起こる前に心掛けることというのはいっぱいあります。もちろん避難訓練や防災訓練をするというのもありますが、特に大事なのは「避難マップ作り」です。災害を想定した際に、その場所から逃げたり、その後の対応をするときに避難マップがどうしても必要になります。この避難マップは役所が作るのではなく、その地域に住んでいる人たちが実際に、地図の中に防災拠点の場所を書き込んだり、ここに寝たきりのおじいさん、おばあさんがいる、ここに重い障害があり車椅子を利用している人が住んでいるというようなことを地図の上に落としていきます。この避難マップを作成する作業を通して、実際に災害が起きたときには、マップを見なくても避難ができるぐらいになっていきます。これが心掛けというよりも災害に対する準備であり、避難マップは、実際に非常に役に立ちます。現在ではほとんどの市町村で作っていますし、市町村単位というよりも、もっと狭い地区単位でも作っており、実際に地区単位で作ったものの方が、自分たちには役に立つことになります。

災害におけるトップの役割

宮城県知事をしていた時には、防災訓練の時や、実際に災害が起こった時にも、知事として動くことが多かったのですが、ひとつ失敗した時の話をしたいと思います。

宮城県からブラジルに移住した人の80周年記念式典がブラジルのサンパウロで開催され、私は知事としてその式典に出席するためにブラジルに行きました。式典の3日前に、地元から連絡があり、震度6強の地震が宮城で起こったことを知りました。その時に副知事に電話で「急きょ戻った方がいいか?」と聞くと、副知事は「自分でやる」ということなので任せて式典に出席することにしていたら、数時間後に秘書課長から電話があり、地元でマスコミや住民が「こんな時に知事はどうしたんだ」と大騒ぎになっているので急いで帰ってきてほしいとの事でした。それを受けて、急きょ宮城に戻って、地元の空港に着いた際にマスコミが待っていて、散々責められました。空港から真っすぐ被災地に行って、何とか力づけることができましたが、この時に本当に思い知らされたのは、こういう災害が起きたら、トップ代理では駄目で、トップ自身がやらないといけないということでした。災害の対応マニュアルの1ページ目に、「震度6以上の地震があった場合は、知事は世界中のどこにいてもすぐに帰って来る」というのを大きな字で書いておかないといけないと思いました。

災害などの非常事態には、まず災害対策本部を作って対応しますが、その事態がちょっと収まった頃にトップ自らが被災地に行って住民を励ますことが重要で、これは代理では駄目だということを思い知らされ、「災害におけるトップの役割」を実感しました。通常は知事として、災害に対する心構えだけでなく、電話が全て通じなくなっても使えるような特別な電話も自宅に配備されており、日本国内にいれば、連絡もすぐにつきますし、すぐに戻って来ることもできるのですが、この時はブラジルで、戻って来るにも24時間かかってしまう状況でしたので、とても大変で、唯一の失敗となりました。

※今回のインタビュー記事は、東急電鉄の協力のもと、「FM salus」が過去に放送した『東急建設 presents 「サロン・ド・防災」』の内容を、一部改定して掲載しています。