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防災インタビューVol.167

世界に貢献する日本の防災に対する活動

放送月:2019年8月
公開月:2020年11月

佐谷 説子 氏

一般社団法人 海外建設協会

FMサルースで放送された音源をお聞きいただけます。

プロフィール

私は神奈川県川崎市の出身で、7月まで内閣府の防災で普及啓発連携という業務の担当の参事官をしていました。7月に人事異動があり、今は一般社団法人 海外建設協会で研究理事をしています。内閣府防災では、平成28年から3年間業務を担当しまして、防災についての活動やその時の思いというのは、私の中でも非常に思い出に残っています。それまでも、国土交通省の都市局にいた時に東日本大震災に遭いまして、その後住宅局で仮設住宅の整備に携わることで防災には関わってきましたが、本格的に自分の100%本来の業務として防災を行ったのは、内閣府に来て初めてになります。3年間、内閣府の防災にいましたが、その中でもかなり思い入れの深い業務のひとつが「地区防災計画」です。

「地区防災計画」とは

「地区防災計画」というのは、平成26年に「災害対策基本法」という日本の防災に関する基本的な法律を改正して追加されたものです。その頃は、東日本大震災からの反省を込めて、「どういうふうに日本の防災制度を作り直すべきか」ということを議論していました。その中で、やはり防災は公助、つまり公の政府が一生懸命頑張るだけではなくて、住民や企業やその他地域の方が、「自分は自分で守り、それからお互いに助け合う」という自助共助を重要にしていかなければいけないのではないかと言われていた時でしたので、「地区防災計画制度」は、まさに住民同士が作る防災の計画として立ち上がりました。

その頃日本では、「政府が防災をやるだけでは不十分だ」という考えもありましたが、その一方で、「住民だけに任せていいのか」ということもありました。そこで、政府も頑張るし、それと連携した形で住民も頑張る必要があるということで、「政府と地域住民との連携をどういうふうにすればいいのか」と模索する中で、「両方が一緒に頑張り合いましょう」という意味で「地区防災計画」が生まれました。

仕組みとしては、住民、例えば町内会や商店街などで、住民同士が自分の地域に合った防災の計画を考えて、紙に起こして、それを市町村の防災計画に反映させるために市町村に提案をする。市町村はそれを受け止めて、地区の防災計画が、市町村が作る行政の計画と合っているかチェックし、それに合致していれば市町村の計画に反映できるという仕組みです。少し前の数字にはなりますが、平成30年4月の時点では、約248の地区の計画が、市町村の防災計画に反映されましたし、3200の地区で地区防災計画を作ることに向けた活動が進んでいるという状況です。この制度が始まってから5年ぐらいで3000以上もの地区がこのような活動に取り組まれているというのは、とても大きな数字です。日本全国で何地区あるかというのは、なかなか分からないのですが、実際にこれに取り組んでいる市町村の数としては、残念ながら、日本の全市町村の数の1割にも満たない状況ですので、まだまだこれから伸びていくことが期待されていると思っています。

住民にとっての「地区防災計画」を作る意味

実際に「地区防災計画」を作る際に、住民同士で地域のリスクなどについて調べながら、どのように活動していくのかを考えていくという作業は、結構手間がかかることです。住民の皆さんは、このような作業には慣れていませんし、普段はそれぞれの仕事もありますので、皆で集まって資料を作るのは非常に大変なことです。そういう状況ではありますが、市町村の職員の方とも話をしていると、住民の方が「やはりこの計画を作って良かった」ということをもっと実感できれば、「自分たちもやってみよう」と思えて、もっとこの活動が広がっていくのではないかと思っています。

最近の被災地の事例でも、九州北部豪雨や昨年の西日本豪雨の時もそうでしたが、「地区防災計画があったために住民の避難が早くできて良かった」ということは実際にも出てきています。そういう例を聞くと、恐らく地区防災計画があると災害が起こっても自分たちは安心だと思ってもらえるかもしれませんが、災害が起こる地域ばかりではありませんので、その必要性を実感するというのはなかなか難しいかと思います。そうなると、災害が起こっていないときでも「地区防災計画」に向けて取り組みを進めていて良かったということが普段から実感できるような何かがあるといいと思います。その「何がいいことなのか」というのは、私が内閣府防災にいる間には答えが出なかったのですが、多分これには決まった答えはなく、恐らく皆さんがこれからさまざまな地域で引き続き「地区防災計画」を作る活動を続けながら、「何がいいことなのか」ということをみんなで考えつつ活動をしていく中で、何かを見つけていくことができるものなのではないかと思います。

この「地域防災計画」を作る活動は、地域のお祭りやにぎやかな商店街などのことを考えるような目に見える活動ではなくて、地域全体の将来を皆で考えながら選択し合っていくような、何か見えないモノを模索していくような活動になりますので、大変難しいと思います。災害の形も地域それぞれで違いますし、災害に対する経験の有無も違います。そのような中で、地域の住民がどのようにこの防災計画の作成に関わっていくのかを模索しながら進めていくのが、まさにこの活動の意義なのではないかと思います。

※今回のインタビュー記事は、東急電鉄の協力のもと、「FM salus」が過去に放送した『東急建設 presents 「サロン・ド・防災」』の内容を、一部改定して掲載しています。