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防災インタビューVol.167

世界に貢献する日本の防災に対する活動

放送月:2019年8月
公開月:2020年11月

佐谷 説子 氏

一般社団法人 海外建設協会

FMサルースで放送された音源をお聞きいただけます。

防災における世界への貢献

防災における世界への貢献についてお話ししたいと思います。あまりこれは知られていないことなのですが、防災については国連の中で枠組みがあります。枠組みというのは条約といいますか、国連に加盟している各国が一緒に連携をして、「こういう方向性で進めましょう」という宣言をしているものなのですが、最初にそれができたのは1995年、次にできたのが2005年、その次が2015年になります。3回とも日本でその国際会議を開催して、日本でその枠組みが生まれたことから、日本の開催地の地名がその枠組みに付いています。最初の1995年のものは横浜で開催しましたので、「横浜戦略」と言われています。2番目の2005年のものは兵庫で開催した国際会議でしたので「兵庫行動枠組」、2015年のものは仙台で開催したので「仙台防災枠組」という名前になっています。

世界でも1980年頃から「防災は重要ではないか」というようなことが言われはじめまして、それによって国連では1990年代の10年間を「国際防災の10年間」、つまり、国際的に防災についてより関心を高めようという、そういう10年間として位置付けられました。そのスタートとしてできたのが「横浜戦略」になります。その後10年たちましてその計画を見直した時の枠組みが「兵庫行動枠組」なのですが、2005年にはインド洋でスマトラ地震が起こりました。それによって非常に多くの方が津波で亡くなったことから、世界でもやはり自然災害の怖さというのが衝撃的に伝わったということがあります。従ってこの「兵庫行動枠組」というものは、世界で168もの加盟国が兵庫に集まりまして、全体で約4万人の方が参加して、大きな会議を開いて採択されたということです。次の「仙台防災枠組」は、2011年の東日本大震災の被災地の中で開かれたということもありましたので、やはりこれも世界の皆さんから大きな注目を集めました。「仙台防災枠組」は日本で開催された会議ということもありますが、日本のこれまでの防災に関する考え方が非常に色濃く反映されています。

この頃ちょうど日本では「防災」という言葉だけではなく、「減災」という言葉が生まれた時期で、災害をなくすことはできないけれど、それによる被害を減らすことはできるという考え方に変わっていった時です。兵庫行動枠組の時は、「災害を減らす」という枠組みの名前だったのですが、仙台の時には「災害によるリスクを減らすためにどうしたらいいか」ということがありました。そこでさらに日本が主張していた「インフラへ投資をすることによって災害を防ぐことの重要性」、それから「リスクに対する理解を深めること」、まずリスクが分かっていないとどういう対策をしたらいいかも分からないので、そういうリスクを理解することの重要性が取り上げられ、日本がこれまで重要だと思っていることについての考えが多く取り入れられました。

特にこの中で皆さんにご紹介したいのは、この仙台防災枠組の中で強く言われた「ステークホルダーの役割」です。つまり政府だけではなくて、市民社会やボランティア、それから学術機関、企業、さまざまな団体、メディア、そういう方々も防災に関わる重要な主体であるということが言われたことがとても大きかったと思います。

世界の防災のリーダーとしての日本

2015年に出来上がった「仙台防災枠組」というのは、今までの枠組みよりもさらに大きな位置付けとなっています。と言いますのは、持続可能な開発目標SDGSとして、17の開発目標ができて、それを社会の中でみんなで達成していこうとしていますが、このSDGSの中にも防災に関する目標というのが組み込まれています。それによって、防災だけではなくてSDGSとして、貧困をなくそう、女性の参加を増やそうというような、世界の持続可能な開発目標の1つの中に組み込まれたので、「仙台防災枠組」はこれまでの防災枠組よりもさらにパワーアップした目標として今世界の中で捉えられています。

このように世界の中で日本の防災の取り組みは非常に注目されています。私はいろいろな国際会議に今まで出てきましたが、その中でもやはり日本の取り組みを発表すると、会議場がシーンと静かになって、みんながものすごく日本の言っていることを注意して聞いていることが感じられます。その中で特に注目された取り組みが、最初にお話ししました「地区防災計画」です。これは住民の方が、行政から何もお金や補助金ももらわず、しかも義務ではなく、ただ作ることができるというだけの計画であるのに、どうしてこんな3000もの地区で活動をしているのかということがとても驚きを持って見られています。

もうひとつ、日本の防災教育というのも非常に驚かれています。「小学校から防災を教育するというのはどういうことを誰が教育すればいいのか」と非常に関心を持って見てくださっていると思います。

それからもうひとつ注目されているのが、学術界と政府の連携です。日本では防災学術連携体というのがありまして、さまざまな学術界で防災について研究を重ねていますが、57以上の学術界が連携体を作って、防災について学際的な意見交換をしたり、意見交換だけでなくそれを政府と共有することによって、より防災の科学的な知見を政府の意思決定課程に生かそうという活動をされています。このようなことも各国ではまだなかなかないことなので、今の日本の取り組みは非常に注目されています。その意味でも、やはり日本がこれまでどういうことを経験して、何をやってきたかということを伝えるのはとても重要な国際貢献なのではないかと思っています。

もちろん政府として国連の国際会議などに出て日本の知見を皆さんとお話しするということもあるのですが、例えば学生同士の交流による知見の発信、企業による交流、学識者同士の交流ということも非常に盛んに行われていると思います。特に学生の交流として、一番大きなものに「高校生の津波サミット」というのがあります。これは世界の高校生の中で津波に関係している国の高校生が、日本や海外で集まって、お互いの知見や経験、取り組みを交換し合おうというもので、学生のうちから世界の中で同じ課題、悩みを持っている方々と意見を交換し合うというのはとても大切なことだと思います。

また、企業の中でも、「ジャパン防災プラットフォーム」という集まりがあるのですが、これは約160の企業が、自分たちの持っている知見、技術、経験を海外の市場に展開したいと思って集まっています。そういう方々が各会社ごとにやるのではなく、みんなで集まって日本の知見を結集して海外の防災に貢献しようとされています。

このように政府だけではなく、市民、社会、産業界、学識者といった方々が日本の知見をあらゆる面で世界に発信していく取り組みは、本当に素晴らしいことであり、このような活動を通して、日本が世界の防災のリーダーとしての役割を担っていると思っています。

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。

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