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防災インタビューVol.181

観光危機管理で選ばれる観光地に

放送月:2020年10月
公開月:2021年2月

翁長 由佳 氏

株式会社サンダーバード
代表取締役

FMサルースで放送された音源をお聞きいただけます。

プロフィール

私は沖縄の株式会社サンダーバードで、観光危機管理に特化したコンサルティング業務をしています。それまでは、沖縄県内で観光プロモーションや受け入れをやっている一般財団法人沖縄観光コンベンションビューローに1993年から勤務をしていて、ビジネストラベルであるMICE業務に18年間関わった後、国内プロモーションや企画の仕事を経て26年間務めてきました。2019年この会社を退職して、6月に観光危機管理ラボ、株式会社サンダーバードを設立しました。

観光危機管理という新しい考え方

観光危機管理ラボ、株式会社サンダーバードでは、観光危機管理についての講演やマニュアル作り、訓練、イベントなどの実施をしています。観光危機管理を分かりやすく伝え、観光危機管理を理解してもらうことで危機に備え、備えることで自分と自分の隣にいる人たちの命を守りたくなる、そんなすてきな世界を作りたいという思いで、この会社を作りました。将来、沖縄が安心安全で選ばれる観光地になることを目指しています。

海外ではTourism Crisis Managementという言葉がありますが、それまで国内では、観光危機管理という言葉はあまり知られていませんでした。沖縄県が観光危機管理の取り組みを始めたのは、全国に先駆けてになります。きっかけは2011年の東日本大震災後、当時の沖縄県の知事が、「たくさんの観光客が沖縄に来ているけれども、東日本大震災のような災害があったときに観光客の命を守るような取り組みがなされているのか」と疑問提起したところから観光危機管理の取り組みが進みました。今年でこの取り組みは10年目に入っています。

私が観光危機管理に興味を持ち始めたのは、平成23年度からスタートした沖縄県観光危機管理モデル事業の宜野湾市のエリアの勉強会に、当時配属されていた沖縄コンベンションセンターから参加することになったことがきっかけでした。コンベンションセンターは会議や展示のための施設でもあるので、何かが起こったときに、来場されたお客さまの命を守ることがとても重要で、その訓練は何度もやっていましたが、土地勘がない方や、言葉が通じない外国からの観光客に対しての取り組みが全くなされていないことに気付きました。また隣接したエリアには、ホテルやビーチ、マリーナなどがありますが、海外からのお客さまも多く集まりますし、このエリア全体にかなりの数の県民以外の方がいることになります。その方たちを安全に避難させて、命を守ることが本当にできるのかということを考えたときに、それが全くできていなかったことを改めて知ったということが、観光危機管理との出会いです。

私が観光危機管理にさらに深く関わるきっかけになったのは、沖縄県観光危機管理モデル事業の中で観光危機管理指導員教育プログラムがあり、5日間の指導員養成講座への参加をしたことです。この講座を受講して、フロリダ大学のTrain the Trainersという終了資格を授与されたことで、そこの講師として日本国内で観光危機管理に取り組むプログラムの指導役を行う資格を得ました。それが観光危機管理に関わるきっかけになりました。

観光危機管理への取り組み ~沖縄から全国へ~

沖縄から始まった、この観光危機管理への取り組みは、現在では全国各地でも同じような取り組みを進めているところもありますが、一方、危機管理という言葉は知っていても、観光客や観光事業者に特化した「観光危機管理」というのは、まだまだ浸透していないということが、現状の課題の一つになっています。

私が沖縄コンベンションビューローを辞めたきっかけも、なかなか全国に広まっていかない、この「観光危機管理」をもっと浸透させたいということにありました。この観光危機管理は、自治体がメインでやっており、なかなか企業やその地域の住民の方々までは広がっていかないという現状があり、実際には県が「観光危機管理基本計画」や「実行計画」を立ち上げて、県内の観光事業者にマニュアルを作るように指示をしているところもありますが、実行には至っていないという状況です。防災や危機管理というのは当事者にならないとなかなかその実感が持てず、目の前にあることがメインになってしまって、人が割けない、時間がない、予算がないということを理由に後回しになってしまうことがかなりあります。しかしながら、新型コロナウイルスもそうですが、近年は大雨や台風などによる大きな災害が全国的に増えているので、ようやくこれから起こることに対しても危機感を持って、取り組みを進めていこうという動きが少しずつ全国にも波及してきているという感触はあります。

ただ一方で、観光危機管理を進めていく上での課題もあります。それは、実際私が沖縄観光コンベンションビューローにいたときもそうだったのですが、県や自治体、コンベンションビューローで一緒に取り組んできたときに、事業として観光危機管理計画や実行計画を立てていくのですが、それぞれの部署で定期的な人事異動があり、担当が変わってしまうとそれまでやってきたことが、またゼロからのスタートになってしまいます。庁舎内、組織内で危機管理の取り組みはしているものの、人としての蓄積にはつながらず、点から面、地域に広がるのが難しいということがあります。私自身も人事異動によって、そこにしっかりと腰を据えて取り組めないということがありましたので、仕事を辞めて民間事業者としてしっかりと腰を据えて、観光危機管理に取り組み、推進していく役割を果たす必要があると感じて独立し、観光危機管理ラボ、株式会社サンダーバードを設立しました。

※今回のインタビュー記事は、東急電鉄の協力のもと、「FM salus」が過去に放送した『東急建設 presents 「サロン・ド・防災」』の内容を、一部改定して掲載しています。