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防災インタビューVol.181

観光危機管理で選ばれる観光地に

放送月:2020年10月
公開月:2021年2月

翁長 由佳 氏

株式会社サンダーバード
代表取締役

FMサルースで放送された音源をお聞きいただけます。

選ばれる観光地になるために

沖縄県では2011年から全国に先駆けて観光危機管理に取り組んで、基本計画、実行計画を立ち上げていましたが、実際企業の取り組みには温度差があり、全県的には、まだまだ浸透しているとは言えない状況があります。東日本大震災から9年弱、観光危機管理に取り組んでいますが、実際に41市町村の中で観光危機管理計画を作成している市町村は12市町村のみということで、まだまだ半分にも至っていません。

沖縄県では台風対策ができている企業は多いのですが、地震や津波、その他の危機に対する対策ができている企業は少なく、観光従事者でも観光危機管理という取り組みを知らない人が多くいます。それと、これは沖縄県全体で取り組むべきことではありますが、広域連携としての取り組みについて、あまり考えられていない状況です。実際観光危機管理を立ち上げた市町村でも、周辺の市町村との連携までには至っておらず、やはり全県規模の取り組みにはまだまだ時間が必要です。

観光危機管理における課題の中で難しいのが、防災の窓口設置場所です。自治体の中では防災の担当は、総務に置かれることが多いのですが、観光に関しては商工や観光部局になります。本来であれば、防災だけでなく、観光客を守る取り組みも含めるために、観光部局と連携して観光危機管理に取り組んでもらいたいと思っても実際の連携には非常に時間がかかり、横の連携をとってもらうことすらなかなかできません。このことに関しては、自治体の長から、しっかりと情報が伝わるような仕組みを作るために積極的に動いてもらい、全体として取り組むことができるような体制を作ることが大切だと思っています。また、まだ今は起こっていない事象に関しても、「まだまだ大丈夫だ」と考えるのではなく、いつ危機が発生してもおかしくない状況で、それが避けられない現実であることを他人事ではなく、自分事と捉えて取り組んでいくことが大事だと思います。

観光危機管理におけるRecoveryの基本としては、Build Back Better、以前より良い復興を目指すことが大切で、コロナウイルスでの話も同じですが、災害の前の状態に戻すのではなくて、その経験を機に業界や地域が連携して今までよりもより良い形に復興することが大切です。来たるべき危機に対して、しっかりと準備をして備えることも大切ですが、その先の復興を考えるときにどういう動きをするべきか、ということを自治体として、組織として、企業としてしっかりと前もって考えておくことが大切だと思われます。

実際にこのコロナ禍において、沖縄県では、まず海外から全く人が来なくなり、国内の航空便についても減便されて、入ってくる人が激減しました。沖縄は島であるため、空路が絶たれてしまうと観光が全く動かず、にぎわっていた街並みが一気にゴーストタウン化してしまうという感じで、就業人口の3、4割の観光に携わっている人たちの仕事が全くなくなってしまいました。今回の新型コロナウイルスの中では観光事業者も含めてその厳しさを痛感して、いかに観光が大事な産業かというところを思い知ることになりました。

安全安心な沖縄の観光をめざして

新型コロナウイルスから立ち直るために、現在もさまざまな取り組みを沖縄県やビューローで行っています。ニューノーマルの中での観光のあり方を考え、受け入れる観光事業者だけではなく、沖縄に観光に来る方たちに対しても、体温の管理や体調の管理、そういった心掛け心構えをしっかり持って沖縄に来ていただきたいという呼びか掛けをしたり、空港で実際に抗原検査ができるような仕組みを取り入れたり、水際対策をしっかりすることで沖縄の観光を受け入れる側も沖縄観光する側も安心して沖縄観光できるような取り組みというものを、日々みんなで知恵を出し合いながら取り組んでいる状況です。もちろん感染症による観光危機だけでなく、10月、11月でも来ることがある台風や、今後起こり得るさまざまな危機に対して、常に緊張感を持って対応していく必要があります。

観光危機が発生したときに観光客の命を守るためには、観光危機管理対策マニュアルを作成し、そのマニュアルを元に繰り返し訓練を行って、実際の行動の中で課題を見出して常にマニュアルを見直して書き換えていくことが必要です。また、自治体や他事業者との連携関係を深め、危機時に相互に助け合える仕組みを構築していくこと、食料品や衛生用品の備蓄など、自治体に頼るだけでなく、組織や企業などでもしっかりと備えをすることも大事です。そして、将来的には危機時に活用できる予算の確保、基金の設立など大きなことも含めて組織の中でもしっかりと取り組んでいくことも大事です。その他、私たちのような民間の力や、通信技術の力であるICTを活用して、自治体における観光危機管理体制の構築を行い、その全体の取り組みを県がバックアップして、国内外に「安全安心で選ばれる沖縄」という観光地をしっかりとPRしてほしいと思っています。

なかなかこれまで耳にすることのなかった「観光危機管理」において、今は海外からの観光客の方が入ってこない状況にありますが、今のうちに日本全体が観光危機管理の取り組みをしっかりとすることで、今後世界の観光が元に戻ったときに安全安心で選ばれる観光地、世界から選ばれる観光地となっていければいいと思います。今は、それを目指して、皆さんで考えるよい機会だと思います。いざというときに本当に観光客を救えるのは国民、県民の皆さんです。その取り組みをしっかりと胸に刻んで、今からきちんと備えていただければと思います。

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。

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