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防災インタビューVol.181

観光危機管理で選ばれる観光地に

放送月:2020年10月
公開月:2021年2月

翁長 由佳 氏

株式会社サンダーバード
代表取締役

FMサルースで放送された音源をお聞きいただけます。

観光危機管理の必要性

新型コロナウイルスの影響が起きる前は、沖縄県には1千万人を越える観光客が訪れていました。このように多くの観光客を迎え入れる中で、大型台風が来たら、感染症が大流行したら、地震や津波が発生したら、安全安心は確保できるのかということを常に問い掛けてきました。実際にそうした危機が起これば、沖縄観光に多大なダメージを与えることになります。そのことを訴えつつ、さまざまな対策を立て、危機管理計画を作り、備えるとともに、危機を想定した訓練を繰り返し行うことで備えておけば、実際になにか危機が起こった際にも、そこから早期に回復を図ることができます。そのような意味においても、観光危機管理が大切だということを知ってもらい、沖縄では対応を進めています。

今回のコロナのせいもありますが、今後の観光においては、観光地が安全安心であることが、観光客に選ばれるための重要な要素になってきます。感染症対策だけではなく、災害時にどこに逃げたらいいか分からない観光客もいますし、情報が入ってこないことで混乱する海外からの観光客もいるので、多言語での案内の整備や観光危機管理対策がしっかりとられている観光地というのが今後大切になってくると思います。

実際沖縄の中で大きな観光へのダメージを受けたのは、ここ近年では2001年9月11日の米国同時多発テロのときでした。通常ならば9月から12月にかけて行われるはずの高校生の修学旅行がことごとくキャンセルされてしまいました。メディアなどで、米軍基地があるので沖縄も攻撃対象に含まれるという噂が広まりまして、保護者の不安が募り、「そんな危険なところに子どもたちを送れない」ということで当時修学旅行のキャンセルが全体の約8割もありました。それは本当に風評被害で、実際にはそんなことはなかったのですが、そのときには、沖縄県、ビューロー、観光事業者が一体となりましてアメリカ同時多発テロの影響による風評被害を払拭するために「大丈夫さ、沖縄キャンペーン」というのを実施し、全国各地で、「沖縄は大丈夫なので来てください」というキャンペーンを一斉に行いました。そのときの経験が沖縄には非常にプラスになりました。観光事業者が一体となって危機を乗り越える体制の礎がそのときにできたのかなと思っています。

沖縄の観光危機管理実行計画

沖縄県では2011年の東日本大震災を受けて、3年間の危機管理に対する調査事業を行った後に、2015年3月に観光危機管理基本計画、2016年3月に全国でも初の観光危機管理実行計画を作成しました。

観光危機というのは、さまざまな事象による災害、事故などの発生によって観光客や観光産業に甚大な被害をもたらすものや、県内外で発生する風評被害などのことを指します。観光危機においては、その発生から対応までを限られた時間と不確実な情報の元で意思決定をしなければなりません。沖縄県が対象とする観光危機というのは、まず地震、津波、台風、台風や大雨による洪水、高潮、土砂災害などの自然災害、2つ目がホテルなどの大規模火災、大規模な交通事故、航空機や船舶事故、原子力災害、不発弾、テロ、ハイジャックなどの人的災害、3つ目は、風評被害、フェイクニュースやデマ、嫌がらせなども出てきています。4つ目に、健康危機ということでは、大規模食中毒、今回の新型コロナウイルスのような感染症、有毒生物の異常発生、環境危機、大気汚染、海洋汚染、インド洋モーリシャス島でのタンカー座礁事故のように重油が流出して自然環境に影響を及ぼすような、そういった危機も含まれています。5つ目としては、県外で発生した災害を起因とする危機に対処するというもので、9.11のようにアメリカで起こった事件が沖縄の観光に影響を及ぼすというようなものもあります。また、例えば主要市場の空港で事故があったとき、航空機が飛ばなくなったとき、長期にわたる運休などや減便があったというのも沖縄の観光に非常に大きな影響があるということで、これも危機の1つとして対応します。それぞれの危機に対しての計画も変わりますし、関わる人たちも変わってくるため、根気強く丁寧に対応していく必要があります。いざというときに観光客の命を守るのは行政でも、観光事業者でもなく、県民自身ということもあり得ますので、関わっている部署だけでなく、県民にも理解を求めていくことも大切になってきます。

沖縄では、以前は発生したほとんどの台風が必ず沖縄を通って行くということがありましたので、台風対策に関してはどの自治体も企業もしっかりと対策を立て、防災計画や対策マニュアルができています。そこに観光客を落とし込んだ取り組みを県やビューローが立ち上げて、台風時にはその組織が立ち上がって対応できるようになっています。台風以外の地震や津波については、近年大きなものは沖縄には発生していませんが、これから先は起こることがないとは言い切れないにもかかわらず、台風以外の危機に対する対策というのは取れていない自治体や企業がほとんどではないかと思います。災害対策基本法や保護法などの地域防災計画では、国民や住民は守られているのですが、観光客の皆さんへの対応が不十分なところがあるので、そこをしっかりとカバーしていくということが観光危機管理の取り組みになっています。

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。

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