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防災インタビューVol.181

観光危機管理で選ばれる観光地に

放送月:2020年10月
公開月:2021年2月

翁長 由佳 氏

株式会社サンダーバード
代表取締役

FMサルースで放送された音源をお聞きいただけます。

フロリダにおける観光危機管理

私がフロリダの観光危機管理の取り組みを目標にするきっかけになったのは、沖縄県の指導者養成講座で講師としてフロリダからいらしていた、フロリダ大学のローリー先生と、当時フロリダのリー郡のコンベンションビューローの事務局長だったエレインさんというお2人の女性に出会ったことでした。観光危機管理というのは、名前的にもヘビーですし、取り扱う内容もヘビーな中で、ステキな女性2人が講師として来たことに、正直私もビックリしました。観光危機管理に実際業務で関わることになったエレインさんと、世界で唯一観光危機管理の学科があるフロリダ大学の学科責任者としてその学科を立ち上げたローリーさんのお2人は、女性ならではのきめ細かさにプラスして、非常に大胆な発想で、どんなものにも屈しないところがあったので、私自身非常に大きな影響を受けました。その2人に出会ったことで、私も観光危機管理の取り組みにおいて、沖縄で2人のような存在になれるように頑張ろうという気になりました。

フロリダと言えば皆さんご存じだと思いますが、最大の危機はハリケーンです。過去の記録に残っているハリケーンのうち、アメリカ全体の4割がフロリダで発生しています。その一方でフロリダ州は、アメリカ国内の観光地の中でも非常に人気のある州で、ビーチリゾートやディズニーワールドがあり、世界中からたくさんの人たちが集まっています。そういった観光客が集まる中でハリケーンがこれだけ多発しているということで、「どうやってこの観光客たちを守るのか」ということが観光危機管理への取り組みのきっかけになったと思います。

フロリダ州に関しましては、危機が発生したときにはそれぞれのコンベンションビューローに対応の権限が委譲されます。日本国内のように、現場がこういうふうにしてほしいと言ったときに、県に上げないといけない、県から許可されるには議会を通さないといけないというようなことがなくて、活動主体が現場に落とされて、現場の判断で活動ができます。事前に州の観光局はしっかりと準備をしてきており、現場に沿った活動がすぐできるというところが大きな特長と言われています。その活動資金のほとんどがホテル税となっていまして、それを基金として積み立てて、いざという危機時に迅速な動きができるようになっています。

フロリダの観光危機管理ボランティア

私がフロリダの取り組みの中で一番感動して、沖縄でも取り組みたいと感じたところは、個人危機にも対応しているということです。もちろん大きな災害や、観光客の方が死亡事故に遭ったり、けがをしたり、犯罪などに遭って非常に大変な思いをしているときにも、そのプログラムが使われています。そのためのボランティアも組織されていまして、一人一人に対してしっかりとしたサポートをして、ペーパーワークを担当したり、遺体をご遺族に送り届けるまでしっかりと最後までケアをしています。フロリダに来た人が悲しい思い出とともにフロリダを思い出すのではなく、最後まで誰かが寄り添って見送ってあげることで、また亡くなった方たちを思い出すためにフロリダに来てくれる、そういった観光地づくりがしっかりできているところが非常に愛の通った取り組みの一つになっています。

私は2019年3月にコンベンションビューローを退職した後、4月にアメリカに単身で2カ月間行きました。まずはじめにフロリダに行きまして、フロリダ大学の観光危機管理に取り組む学科の授業に参加をしたり、そこで沖縄の取り組みを紹介したりとか、貴重な経験をさせていただいた後に、リー郡の空港で、先ほどお話した個人向けの観光危機管理プログラムの対応をしているボランティア組織の皆さんにもお会いしました。平時には、ボランティアの皆さんは、空港内でインフォメーションデスクを設けていて、フロリダのリー郡の観光地の紹介をしているのですが、危機時になるとこの方たちが観光客の方たちを誘導する役割をしたり、情報発信の役割を担ったり、先ほど言った個人の事故に対してもしっかりとサポートすることになっています。

年配の方が非常に多く、現在150名ぐらい登録しているのですが、ほとんどの方が元は企業の社長さんや代表の方で、リタイアした後にこういったボランティア組織に加盟して、自分のこれまでに培ったノウハウを使ってサポートをしています。この辺りも、とてもアメリカらしいと思いますし、これが観光に生かされて、非常に強みになっています。ぜひ日本でこのような取り組みを導入して、沖縄にもそれを確立することが私の大きな目標になっています。

現在は、サンダーバードとしては、私一人で会社を進めているところもあるので、まだこのようなことは実現できていませんが、業務として、観光協会や企業、団体の中で勉強会をしたり、計画を立てたりしている中で、観光危機に対して、観光協会や企業ができることはどんなことがあるのかを話し合ったり、マニュアルを作ったりしています。まだまだ成功の道は遠いのですが、少しずつそういった取り組みを進めていくことによって、関心を持ってくれる方たちが増えていけば、フロリダのようなボランティア組織を作ることも可能であると思います。

阪神淡路大震災のときもそうでしたが、東日本大震災の後にもボランティアの取り組みは非常に熱心に行われました。本当に一つ一つの危機に対して、例えば観光客の事故に対しても、フロリダのようなフォローを行う、非常にきめ細かな観光危機管理の企画ができる観光地がどんどん増えていくと、日本の観光地は世界から選ばれるような観光地になるのではないかと思っています。

観光危機管理における4つのR

私も勉強会で「こういう時期だからこそ観光危機管理に対する取り組みをじっくり考えてみませんか」と話をしています。その中に、観光危機管理における4Rというサイクルがあります。1つ目のRが、平常時の減災対策、Reduction。2つ目が危機対応への準備、Readiness。3つ目が危機への対応で、Response。4つ目が、危機からの回復、Recoveryです。この4つのサイクルで観光危機管理は回っています。それぞれがRのタイミングでやることが変わってくるのですが、しっかりと減災対策をした上で、危機に備えた準備を行う、そうすることで、危機への素早い初動ができて、最終的には素早い回復につなげられるということです。そのサイクルが、Recoveryまで進めば終わりというわけではなく、最終的にはRecoveryの後の復興において、本当にここまでのサイクルが対処として正しかったのかどうかを見直し、しっかりと検証を行うことが大事です。今の新型コロナウイルスの対応に関しても、本当に突発的な危機に対しての対応、ResponseからRecoveryにつながるということになると思います。この一連の流れが終息した後にしっかりと、この対応が正しかったのかどうか、どうすればよかったのかを、しっかりと見直すことが大事で、そのことを生かして、次の感染症対策につなげていくことが重要な取り組みになっていきます。

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。

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