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防災インタビューVol.186

災害時の混乱を回避する施策 ~餅は餅屋の災害対応~

放送月:2021年3月
公開月:2021年7月

菅野 拓 氏

京都経済短期大学
経営情報学科 専任講師

FMサルースで放送された音源をお聞きいただけます。

なぜ、「災害対応は自治体のみ」が行うのか?

なぜ、災害対応を自治体の皆さんのみに任せることになってしまったのかというお話をしたいと思います。被災者支援をするときに、避難所の運営や物資の配布、仮設住宅の設置については、「災害救助法」という法律を基に対処しますが、この法律は、なんと1947年に出来た法律で、その後にいろいろ改正はされていますが、根本は変わっていない、非常に古い法律です。日本国憲法ができたのが、1946年で、地方自治法、生活保護法のような日本の根幹的な法律が出来上がったのと同じ時期に、災害救助法も出来ています。この時期は、第2次世界大戦が終わり、GHQ連合国が日本を統治していた時期で、都市部を中心に絶対的な住宅不足があり、バラックが建ち並ぶような状況の中で、この災害救助法ができ、仮設住宅は、その当時は収容施設というように指定されていました。このように非常に古い法律ですので、現状となかなか合わなくなっていることが原因でいろいろな問題も起こっています。

災害時にいろいろな問題に対処しなければならない状況にありながら、昔の法律に従って対処するということは、古いクラッシックカーをいきなり運転して下さいと言われているのと同じような状況で、普段やっていない仕事に関わらなければならない上に、さらに使う道具まで非常に古いということもあって、混乱してしまう原因となっています。

この法律がどのように出来たのかについて、考えてみましょう。これらの法律を作った時代は、GHQが主体的に関与しており、戦後の日本において、二度と戦争を起こすことがないようにということを考えながら法律を作っていたため、国が全部を統制するのではなく、地方自治が大切で、自治体が主体となって行っていくことが求められ、それによって民主化を進めていくような時代背景でした。その中で、災害救助法も地方自治体がやるべき事として規定されました。それが災害対策を地方自治体のみに任せることになった大きな原因であると思います。

災害は「ある地域にたまにしか来ない」もの

災害対策は災害救助法によって、自治体のみにその対策が任されましたが、「災害はある地域にたまにしか来ない」ものです。そのため、全てを地方自治体で賄えるものではありません。大きな災害が起こったときには、お金も掛かるし、人も足りないということになりますので、責任は国が持つという法律の立て付けとなっています。

さらに、災害救助法の第1条の目的には、地方自治体だけが対処するのではなく、日本赤十字社と一緒に災害救助をやるというようなことも書かれています。実際に今でも法律ではそのようになっています。法律で唯一、日本赤十字社だけが定められている理由は、それまで戦争中は、経済も民間の企業も物資の配給も全て国が統制していたので、それをしないために、自律的に民間も入れて規定したということです。その当時も、今で言うボランティアやNPOのようなものもあり、社会事業や奉仕と呼ばれていました。そういう人たちの力も借りて一緒にやりなさいと法律では規定されており、統制を避けるために政府と調整できるのを日本赤十字社に限ったということになります。1947年に地方自治法が出来た後に、日本社会において、この地方自治という考え方がようやく入ってきましたが、GHQ、特にアメリカにおいては、地方自治という考え方は当たり前だったために、その意味で法律に組み込まれてしまい、よく分からない中で災害救助法を運用する羽目になってしまったことが、実は混乱の大きな原因となっているということです。そして、その役割分担については、基本的には変わっていないので、今でもNPOやボランティアに対して、国や政府がきちんとお金を払って一緒にやりましょうということは、法律のどこにも規定がされていません。そのために、「ボランティア、NPOは主体的に団体で動いてください」ということになるために、地方自治体とボランティア、NPO団体との仲が悪かったりすると、どんなに専門的な力を持っていても発揮できないということが起こってしまいます。

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。

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