1. ホーム
  2. 東急沿線の地域情報
  3. 安心・安全情報
  4. 防災インタビュー
  5. 災害に強い社会をつくる
  6. 災害時の混乱を回避する施策 ~餅は餅屋の災害対応~
  1. ホーム
  2. 東急沿線の地域情報
  3. 安心・安全情報

防災インタビューVol.186

災害時の混乱を回避する施策 ~餅は餅屋の災害対応~

放送月:2021年3月
公開月:2021年7月

菅野 拓 氏

京都経済短期大学
経営情報学科 専任講師

FMサルースで放送された音源をお聞きいただけます。

災害時のボランティアの活躍

最近の災害においては、ボランティアやNPO団体が当たり前のように活躍していますが、そのきっかけになったのは、1995年の阪神淡路大震災です。この年は「ボランティア元年」と呼ばれますが、実際には、ボランティアという存在は昔からありました。戦前も「奉仕」という言葉があり、存在はしていましたが、目に見える形でボランティアの活動が見えてきたのが、阪神淡路大震災の時に駆け付けてくれた災害対応のボランティアです。それがボランティア元年1995年の記事で、その頃から大きな災害時には、たくさんのボランティアが駆け付けてくれるようになりました。

しかしながら、その当時は、ボランティアが組織化するには法律の基盤がなかったため、NPO法が作られ、災害時には、ボランティアセンターを設置し、そこで困っている方とボランティアの方をつなごうといったことが試みられるようになって、ようやく一般化していきました。その他にも地方自治体、国以外に災害対応を行う主体も阪神淡路大震災をきっかけに出来上がってきました。その中でも大きなものは、災害派遣医療チームDMATです。

阪神淡路大震災の時にも日本赤十字社が救護をしていましたが、とてもではないけれど、それでは間に合わない医療ニーズが出てきてしまいました。例えば、家の下敷きになった人をどのように助ければいいのか、助けた後で亡くなってしまうこともありましたが、ノウハウが分かっていませんでした。それまでは避難所を中心に医療を供給していたので、なかなか実態に合う対処ができなかったわけです。そこで、民間から災害の専門知識を持った医療チームが必要だということで、現場で調整するような形で医療供給していくチームとしてDMATが創設されました。まさにこの阪神淡路大震災が後押ししてDMATを作り、1998年にNPO法も出来てきました。このように、阪神淡路大震災がきっかけになって、今までの自治体の組織とは違う、新たなチームや個人や組織が生まれ、東日本大震災ではそれがいわば全面化していくということになりました。

餅は餅屋の災害対応 ~災害対応のマルチセクター化~

自治体主導の災害救助、被災者支援の混乱の解決法は、前述したDMATやボランティア、NPOなどの民間の組織がどうやって災害救助の中で政府と一緒にやっていくのか、そこに鍵があると思っています。

大規模災害において、災害救助法では、自治体や政府が物資を供給しなければいけないと規定されており、何とか頑張ろうとしていますが、やることが多すぎて手が回らない状況の中での物資の配送は、通常ではやっていない業務でもあり、非常に混乱してしまうことになります。そのため、最近では大手の流通企業がかなり初期の段階から物資配送を請け負って実施するということも増えてきました。こういったところにもヒントがあります。法律上は地方自治体がやるべきことであっても、民間の企業やNPO、民間の医療機関などが一緒に災害対応を実施するということを法律で規定するのが、一つの解決方法なのかなと思います。

「餅は餅屋の災害対応」といいますか、行政は行政の得意技があり、NPOはNPOの得意技が、民間企業は民間企業の得意技があるわけです。まさに得意技は得意な人に扱ってもらった方が当然いい対応ができるので、餅は餅屋の災害対応を行っていくために、民間組織もある程度公的な位置付けや財源を持って、自律的に災害対応を行っていく「災害対応のマルチセクター化」が重要なのではないかと感じています。

実際に災害が起きたときに、自治体と民間のネットワークの稼働状況は、以前よりは稼働するようにはなってきていますが、やはりうまくいかない部分も正直あります。実際に災害が発生して混乱している中に、知らない団体が急に入ってきても、信頼して仕事を任せるというのは、なかなか難しいことです。その上、それぞれのNPOやボランティア団体というのは、もともと違う組織であり、そこを突然組み合わせてもうまくやっていくことは難しいです。ですので、最初からきちんとこれらの団体を位置付けておいて、一緒に災害対応をやる訓練や練習をしておかないとうまくいかないと思います。法律上では、まだ整備されていませんが、まずはそういうことをやりましょう、餅は餅屋の災害対応をマルチセクター化することで実現しましょうというような旗振りが、とても大事なのではないかと思っています。

ボランティア、NPO、民間企業が最初から災害対応を一緒にやりながら、公的な位置を彼らに担ってもらって、財源も一緒に考えてやっていこうという災害対応のマルチセクター化こそが大事で、この動きは、まだ少しずつしか進んでいませんが進めていく必要があります。また、古い法律である災害救助法もなかなかドラスティックには変わってはいないのですが、今からもっと議論をしていくことが必要な段階に来ていると思います。

※今回のインタビュー記事は、東急電鉄の協力のもと、「FM salus」が過去に放送した『東急建設 presents 「サロン・ド・防災」』の内容を、一部改定して掲載しています。