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防災インタビューVol.189

災害に備えるために ~今自分にできること~

放送月:2021年6月
公開月:2021年10月

安江省吾 氏

辰美産業株式会社東京営業所 所長
環境活動団体 エシカルアクション 代表
NPO法人 湘南VISION研究所 スタッフ

FMサルースで放送された音源をお聞きいただけます。

災害支援 ~一市民として~

私が本格的に災害支援に行ったのは、2018年に起きた平成最大の豪雨、西日本豪雨が初めてでした。それまでは、阪神淡路大震災の時には北海道におり、東日本大震災の時には東京にいましたが、災害をどこか遠い場所で起きているもの、テレビの向こうで起きているものと感じていたところがあり、今までは、支援に行きたくても距離が遠いことを理由に被災地に行かなかったことを後悔していました。しかしながら、2018年の西日本豪雨の時には、私は出張で四国に行っており、岡山まで距離的にすぐでした。その時はこんなに近い場所で災害が発生したことに対して、さすがに自分ごとになりまして、今までの後悔もあり、「これはきっと今後自分が被災したときに正しく動ける人間になるために、被災地を見に行け。見て学べ」と、そう言われているような気がしました。

私が最も被害の大きかった岡山県真備町を訪れたのは、災害から1週間後でしたが、本当に悲惨なまちの様子を見て言葉を失いました。私が行った活動は、洪水で2階部分まで浸水してしまったお宅の家財道具などを外に出すというボランティアでした。私がお手伝いしたのは、70代のご夫婦のお宅で、当時近所に住んでいた息子さんが川を見に行って、「これはもうもたない」と判断して、ご両親を避難場所に連れ出してくださったおかげで命が助かったそうです。この方の斜め向かいのお家のご夫婦は、自分たちよりもずっと若い50代だったにもかかわらず、最後まで家を守ろうとして、水にのみ込まれてしまったという話を聞きました。私はそれを聞いてより一層、「災害時には正しく動けるようにならないといけない」、この息子さんのように「災害を正しく恐れて、逃げる時は逃げる、あるいは生き残れる方法を正しく判断できる人材にならなければいけない」ということを強く感じました。人間というのは、どうしても正常性バイアスがかかってしまって、非常時にもかかわらず「大丈夫だろう」と思ってしまいがちで、避難が遅れてしまうことがありますが、非常時には楽観視せずに、正しく恐れることが大事だと思います。

「困ったときはお互いさま」の言葉を大切に

真備町のご夫婦のお宅で作業をしていると、思い出のアルバムが水に濡れていたり、息子さんが小さい頃に描いたであろう絵や賞状など、思い出のものが泥まみれになってしまっているのを発見しました。被災者の方にとって、大切だと思うこれらの品物は、捨てるのではなくて別の場所に寄せて置いて、なるべく救出しました。作業を終えた帰り際にご夫婦が私におっしゃったのが、「何もお礼としてお渡しできるものがなくてごめんなさいね。せめてものお礼に」ということで熱中症対策の塩飴を下さいました。私はありがたくそれを受け取って、「困ったときはお互いさまですよ」と答えました。

私がなぜこの言葉を選んだかというと理由がありまして、今から9年前、フィリピンのゴミ問題と貧困問題を本で知った当時の私は、自分にもできることはないかと思い、フィリピンにボランティアに行きました。私はそれまでボランティアという言葉を使うことにちょっと抵抗を持っていました。ボランティアという言葉の意味を広辞苑で調べると、「ボランティアとは、自ら進んで社会事業に無償で参加する人」と書かれていて、確かにその通りですが、どこか私にはボランティアという言葉を使うと、人に「偉いね」と思われてしまうような、そんな気がして、あまり言葉として使うのを戸惑うような、そんな感覚を持っていました。

その時に、フィリピンで30年、子どもたちの支援をしてきたNPO法人の代表が現地でこんな話を私にしてくださいました。「日本は昔から災害が多くて共助の精神で復興に向けて協力してきた国民性があります。だからもし誰かに何かあったら駆け付けて『困ったときはお互いさまですよ』と言いましょう。この言葉の方がボランティアという言葉よりもずっと日本人にとってしっくりくるでしょ?なじみがあるでしょ?」というお話をしてくださいました。私はそれがとても納得できて、自分の思いとすごく一致する言葉で、とても嬉しく思いました。それから私は、何か社会のために、人のために活動して、お礼を言われたときには、「困ったときはお互いさまですよ」と、そういうふうに答えるようにしています。それが相手の人にとって気を使わせない、最大の配慮ある言葉だと思っています。

被災された方というのは大変な境遇にある中でも、何かお礼をしたいと思ってくださるのですが、それに対して「気にしないでくださいね」と言ったところで、やはり気になってしまうものです。でも「お互いさまですよ」という言葉を掛けることで、「今じゃなくてもいいんだな」「いずれ私も誰かを助けることで、この恩を返せればいいんだな」そんなふうに気持ちを少しでも楽にさせてあげられる効果があると私は思っています。

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。

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