1. ホーム
  2. 東急沿線の地域情報
  3. 安心・安全情報
  4. 防災インタビュー
  5. 災害情報とボランティア
  6. 災害に備えるために ~今自分にできること~
  1. ホーム
  2. 東急沿線の地域情報
  3. 安心・安全情報

防災インタビューVol.189

災害に備えるために ~今自分にできること~

放送月:2021年6月
公開月:2021年10月

安江省吾 氏

辰美産業株式会社東京営業所 所長
環境活動団体 エシカルアクション 代表
NPO法人 湘南VISION研究所 スタッフ

FMサルースで放送された音源をお聞きいただけます。

被災地支援の経験を生かして

私はこれまで真備町の支援に計4回訪れているのですが、そのうち2回がご自宅の片付け、そして2回が写真の洗浄ボランティアをさせてもらいました。これは、水害で水に浸かったり、泥まみれになってしまった思い出の写真を1枚1枚丁寧に洗浄するというボランティアです。私が初めてこの作業に参加したのが、災害発生から半年経過した頃で、その時点でも8万枚もの写真が運び込まれており、これを全部洗浄し終わるには3、4年かかると言われていました。実際災害から3年経過しても、いまだにこのボランティアは続いています。

私はこの写真洗浄のボランティアに参加して、初めて自分が、ある失敗をしていたことに気付かされました。以前に、私は2階まで浸水したお宅の片付けをお手伝いして、思い出のアルバムを発見して、よけておいたと話しましたが、実はそれが失敗だったのです。水害で水に濡れてしまったアルバムを発見した時の正しい対処方法は、すぐに写真を1枚1枚台紙から外して、乾かすことだったのです。アルバムのように何ページも写真が重なり合っている状態のものを水に濡れたまま放置しておくといつまでも乾かずに、バクテリアなどによって写真のインクが侵食されてしまうのです。私も洗浄ボランティアに参加して侵食されてしまった写真をたくさん見て、そのことを知ったのですが、その時も、ボランティア会場には持ち主不明の写真が次々に運び込まれていて、ボランティアの手が全く足りていませんでした。そうこうしている間にも侵食がどんどん進んでいく、助けられない写真があるということに本当に胸が痛かったのですが、このボランティアはまだ続いていますので、「真備 洗浄」というキーワードで検索していただき、ぜひ参加していただけたらと思います。実際、災害から3年も経過してしまいますと、皆さんの記憶からもどんどん薄れていってしまい、こういうボランティアがまだ続いているということ自体なかなか知る機会はないと思いますが、被災された方の手元に一つでも多くの思い出が帰ってほしいと思っていますので、ぜひご協力をお願いします。

被災地支援の課題

私が被災地支援で見た課題の一つは、私たちのようなボランティアが外からたくさん集まってきても、実際に支援を求めている被災者の元へ、ボランティアを振り分けたり現地に運んだりする、そうしたハブとなる中継役が足りないという実情でした。中には横浜から毎週自分の車を運転して真備町に来て、ボランティアを運ぶための車として提供してくださっていた方がいました。そうした重要なポジションが欠けているという現状を見て、私は一人でも多くの人が被災地支援の経験を事前に積んでおくことで、有事の際には、ボランティア未経験の人をサポートできる立場に成長しておく必要があると感じました。真備町でのボランティアの際にも、もっと日頃から被災地支援の経験を積んでおけば、そういう重要なポジションを自分自身も任せてもらえる、もしくは志願できる立場にあったのに、という後悔も残りました。地元の自治体などでも防災訓練が市民向けに開催されていますので、ご自身で調べて、ぜひ参加していただきたいと思います。日頃から個々の災害に対する対応力を上げておけば、ボランティアとしても、もっと貢献できるのではないかと思っています。

そして、もう一つの課題として私が感じたのは、ボランティアに参加している年齢層についてです。それは、30歳以下の若者が全体的に少ないということです。多いのは40、50代以上の男性で、女性は比較的幅広い年齢層で参加されている印象を受けました。これは社会システムの問題でもあると思うのですが、例えば社会人でも被災地支援に行きやすいように会社側が積極的に促してやるだとか、民間側の努力の余地もありますし、遠方から支援に来る人には、交通費を地方公共団体が負担するといった、行政側の努力にも期待したいところです。そうすることで、もっと日本全体が若い世代を中心に支援に行きやすい体制になってほしいと願っています。被災地支援をする中で忘れてはいけないのは、この経験は、何よりもまず自分のためになる、ということです。この経験をすることで、いざというときに自分の身を守り、大切な人を守れる人材になることができるということを覚えておいてほしいと思います。

実際に私も真備町での経験がすぐに生かされました。翌年の2019年10月に台風19号が日本を襲い、多摩川が氾濫しました。田園調布に住む知り合いが水害に遭い、翌日ご自宅から水をかき出すお手伝いに行ったのですが、私は真備町での経験で、どんな道具が必要になるかをとっさに判断することができたので、家から扇風機や延長コードなどを持って行き、濡れた壁や床をいち早く乾燥させるという対応をとることができました。また、水をかき出す際にちりとりが非常に便利なのを知っていたので持って行きました。そうやって身を持って経験していることは、知識として持っていることよりも何より役に立つということを実感しました。皆さんにも、お金と時間をかけてでも、被災地への支援や地域の防災訓練に進んで参加してほしいと思います。

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。

会社概要 | 個人情報保護方針