1. ホーム
  2. 東急沿線の地域情報
  3. 安心・安全情報
  4. 防災インタビュー
  5. 生活再建のために必要な自助力
  1. ホーム
  2. 東急沿線の地域情報
  3. 安心・安全情報

防災インタビューVol.211

生活再建のために必要な自助力

放送月:2023年3月
公開月:2023年5月

重川 希志依 氏

常葉大学 大学院
環境防災研究科 教授

FMサルースで放送された音源をお聞きいただけます。

40代・50代独身男性が取り残される

東日本大震災が発生した際に、被災世帯の生活再建について研究し長期間にわたって関わってきました。その中で、行政の立場から見た1つ目のゴールは避難所の解消。そして、2つ目のゴールが仮設住宅で暮らさざるを得ない方がゼロになることです。ではどのような方が仮設住宅から次のステップに進むのに時間がかかるのかというと、通常ですと、お年寄りや経済状態が苦しい方など、何らかの社会的な弱者と言われる方が生活再建のスピードが遅くなりがちだろうと考えられます。ところが、実際に最後まで仮設住宅を出ていけなかった方というのが、40代・50代の独身男性でした。「なぜ仮設住宅を退去できないのか、その理由が分からないことが1番困った」と支援にあたっていた行政の皆さんがおっしゃっていました。

例えば高齢の方でしたら、高齢者のための福祉対策や医療対策をすることで次のステップに繋ぐことができます。また、経済状態が苦しい方でしたら、 生活保護など様々な打つ手があります。ところが、最後まで仮設住宅に住んでいた方は健康で仕事もありますし、年齢的にも働き盛りです。つまり、行政としては打つ手がないのです。ただ、ひたすら本人が出ていくことに納得してくれるまで、朝な夕なに通っては説得を続けたそうです。

特殊な例なのかと思い、他の地域で生活再建について対応した行政の方に話を聞くと「うちもそうでした」とおっしゃいました。一般的に同じような傾向にあったのではないかと考えています。

様々な縁が助けてくれる

先ほど、40代50代の独身男性が仮設住宅から次にステップアップしていくのに遅れが生じるという話をしましたが、一方で、高齢者のみの世帯や障害を持った方、経済的に苦しい方などに対しては、仮設住宅に取り残されてしまうことがないように、行政は非常に早い段階から様々な支援の手を打ってきました。東日本大震災時の一つの例として宮城県仙台市では、借り上げ仮設住宅に入居している方を対象に、最初にスクリーニング調査をしました。住まいの再建に対する支援が必要な方を把握するための調査です。すると、日常生活と住まいの再建の両方に支援が必要と考えられる方の割合は仮設住宅に入居している方の 1割にも満たないことがわかりました。ただ、この方たちはしっかりと支援をしていかないと必ず取り残されてしまいます。そのため、防災対策ではなくて、福祉としての対策や医療対策など、まさに介護保険のように、1人1人のケースごとに専門家チームをつけて、就労支援や、健康状態の管理など、様々な福祉支援を受けられるように対処する、そして環境のいい公営住宅に早く入居できるように手配するなどの対策をしっかり行いました。

結果的に震災が起こる前よりもずっといい生活環境になり、健康・経済的にも暮らしの質が良くなったという方がたくさん いらっしゃいました。それは公的な支援ですぐに介護や医療の支援に繋げられたということが功を奏したと思っています。

日常的に福祉や医療の支援を受けていない方は、震災が発生しても特に大怪我や病気をしない限りは公的な支援制度を受ける対象ではありません。そうは言っても、心や体は傷つくので、やはり家族や友達など様々な人たちの力で立ち直っていくことができます。

そのようなたくさんの繋がりをどれだけ持っているか、これは高齢だから障害があるからということは関係ありません。縁を自分の力でしっかり繋ぎ止めておくことが、災害後に自分自身が立ち直っていくときに、自分を助けてくれる大きな力になると思っています。

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。

会社概要 | 個人情報保護方針