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防災インタビューVol.211

生活再建のために必要な自助力

放送月:2023年3月
公開月:2023年5月

重川 希志依 氏

常葉大学 大学院
環境防災研究科 教授

FMサルースで放送された音源をお聞きいただけます。

生活再建は公助より自助力

災害後、新聞などの様々なマスメディアで「公助(公的な支援)が被災された方たちの生活再建、あるいは地域の復興のために非常に重要であり、まだまだ公的支援が足りていないから被災地の復興が遅れている」という論調の記事や報道をよく目にしたり、耳にされることもあると思います。例えば、災害が発生し住宅が全壊してしまい、新しく住宅を建て直す場合には、最大300万円の生活再建支援金が被災世帯に支払われます。この生活再建支援金について、「金額をもっと増やしてほしい」あるいは、家が全壊もしくは大きく壊れなくても「大変なのだから、そういう人も対象にしてお金を支払えばいいのではないか」などの意見は毎回出てきます。

実際に、お金は多くあっても邪魔になりませんし、いただけるのであればありがたいと思います。100万円より300万円の方が嬉しいのは当然のことです。しかし、本当にそれが被災された方の生活再建の切り札・鍵になっているのかということをずっと疑問に思っていました。

被災された方に生活再建のプロセスについてお話を聞く中で、こちらからは敢えて質問せずにお聞きすると、生活再建支援金の話が出たことは一度もありませんでした。「生活再建支援金が300万円支払われているはずですが」と聞くと、「あー、そういえばそんなお金ありましたね」という反応でした。つまり、大きなインパクトを与えている訳ではないということが見えてきました。きちんと支給されてはいますが、自分たちの生活再建にとって重要ではなかったということです。一方で、話の中で必ず出てきたのが「地震保険に入っていたから良かった」という地震保険の話。また「息子と一緒に住むようになり、2世代ローンを銀行で組めたので住宅を建て直すことができた」というような話でした。特に高齢者で定期的な収入がない方は、銀行での住宅ローンが組めません。ところが息子さんや娘さんと一緒に暮らす住宅を建てると、月給が入る保証があるため2世代でローンを組むことができます。このような話は多くの方から聞きました。

重要視している点を具体的に言うと、金額、あるいは住宅ローンが組めるかどうかということです。生活再建支援金として一時的に300万円入っても住宅ローンは組めません。ローンを組むことができる、銀行が認めてくださるということが非常に重要だと考えられます。

二親等までの直系尊属からの教え

最後にお話しするのは東日本大震災で、1番大きなインパクトとしてすべての人の印象に残ったことが「津波災害から生き残る」ということです。私たちは津波で犠牲になった方の残されたご家族にインタビューを続けてきました。その中である1つのことが分かってきました。インタビューに答えてくださった方は「生き残った」方です。なぜ生き残ることができたのか、共通していることが見えてきました。

それは子供の頃に親、もしくは祖父母から口が酸っぱくなるほど「大きな地震が来たら必ず津波が来る。その津波に備えて揺れたらすぐに一刻も早く高台に上がること。そして1度逃げたら絶対に戻るな。」と言われていたということです。昭和8年の三陸地震津波を経験した親や祖父母から当時の話を聞いていて、東日本大震災でも功を奏して生き残ることが出来た方にたくさんお目にかかりました。現在、防災教育が様々な場所で行われていますが、小さい頃に親や祖父母、そして学校の先生など信頼できる方から徹底的に必要なことを教わることが、津波災害から命を守るために1番求められている防災教育であると思っています。

東日本大震災の津波被災地では、過去に多くの犠牲者が出たのは80年前の昭和8年でした。つまり、東北の方たちは80年間大きな犠牲者が出ないにもかかわらず、津波防災、そして地域コミュニティの重要性について身をもって真摯に語り継ぎ、次の世代へと繋いでいました。東日本大震災から既に12年が経過します。まだ12年です。さて、私たちはこの12年前に学んだことを自分の子供や孫に 80年後まできちんと伝える覚悟ができているか、あるいは、きちんと伝える活動をしているか、今一度みんなで考えて、自分が出来ることを出来る範囲で、まずは自分の子供や孫に語り継いでいただきたいと思います。

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。

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