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防災インタビューVol.211

生活再建のために必要な自助力

放送月:2023年3月
公開月:2023年5月

重川 希志依 氏

常葉大学 大学院
環境防災研究科 教授

FMサルースで放送された音源をお聞きいただけます。

プロフィール

重川 希志依と申します。現在、静岡市内にある常葉大学で社会環境学部と大学院に所属しています。学生に防災について教え、自分自身の研究テーマとして防災を専門として研究しています。実は防災学という学問はきちんと確立されていない学問です。他の学問とは違い、防災学はいろんな専門分野の方達が関わっています。私自身は学生時代に工学部で建築を学んでいました。中でも建物の防火について専攻していましたが、それをベースに現在では、守るべきものが建物だけではなく人や社会、それから火災だけではなく水害や土砂災害、事故など分野が広がっています。

1995年に起きた阪神・淡路大震災や、その後も国内外で地震、あるいは大津波などが発生しています。2011年の東日本大震災は、私たちにとって非常に大きな出来事となっています。その後も土砂災害や集中豪雨など多様な災害がありますが、2011年以降、東日本大震災の被災地での研究を中心に進めてきました。

借り上げ住宅の問題

災害で家を失った方に対してたくさんの仮設住宅が建てられます。阪神・淡路大震災でもそうでしたし、見たことがある方も多いと思いますが、災害が起こった後に大量の住宅を短期間で作り、被災された方がそこに集まって生活をされるということが、今までは主流でした。これはプレハブ型仮設住宅と呼ばれます。ところが、東日本大震災では、借り上げ仮設住宅というものが過半数を占めました。これは、災害が起こってから建てるのではなく、空いているアパートあるいは住宅を仮設住宅として使うというものです。既に建っているものを使うので、被災された方はすぐに入居することができます。そのような利点がありますが、一方で、空き部屋を利用するため、被災者は分散して居住することになります。

私たちが最初に懸念していた事項としましては、被災者が分散して住み、隣近所には被災していない方たちが住んでいるため、プレハブ型仮設住宅を活用していた時にはあった様々な支援が届きにくい、そもそもどこに被災者がいるのか分からない、という孤立感や疎外感などの問題が起きるのではないかと考えていました。

そういった借り上げ仮設住宅、つまり空いている部屋に分散して住んでいる人を対象に、詳細な聞き取り調査を長年にわたって続けてきました。そこで見えてきたのは、実はそこで暮らしている方たちは、「直後から公的な支援・公助を全く頼りにしていない、あてにせずに、自分たちで動き始めていた」ということでした。

公助を頼らない被災者が4割

アパート型の空いている部屋に住むタイプの被災世帯の方のうち4割は最初から行政の仮設住宅に入居するつもりもなく、災害直後から避難所にも行かず、親戚や友人の家を頼りながら自分で買い物をし、自分で不動産屋さんを駆け回って空いている部屋を見つけ契約金・敷金を支払い、毎月の家賃を払い始めて住んでいました。

この4割の方たちは、「災害で自分たちは大変な思いしたが、こんなことで自分たちの人生を押し曲げられるのは絶対に嫌だ。とにかく前を向いて、家族で進んでいくしかない」という思いがあり、災害が起こる前と同じ生活を続けている、ということです。

仮設住宅は家賃が無料です。それから、避難所に行けば様々な救援物資が無料で配られます。でも、そのような支援には頼らず、災害の前と同じように自力で生活をされています。このような方々は、東日本大震災で初めて現れたわけではなく、おそらくこれまでの災害でも同じような思いを持って自力で頑張っていた方たちは同じぐらいの割合でいらっしゃったのだろうと思っています。これまでの災害では借り上げ仮設住宅という制度が一般化していなかったために、私たちも把握できていませんでした。詳細な聞き取り調査を行ったことで、このような方たちの存在を改めて知ることに繋がったのだと思っています。

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。

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