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防災インタビューVol.214

災害が起きる前にできること

放送月:2023年6月
公開月:2023年9月

奥村 奈津美 氏

防災アナウンサー・環境省アンバサダー

FMサルースで放送された音源をお聞きいただけます。

災害に強い家に住む

私は現在、防災住宅研究所という研究所で理事をしています。この研究所では、阪神淡路大震災以降の28年間、全国の被災地を取材 して災害に強い家を研究しています。調査していく中で、過去の災害で最も被害が少ない建築方法があります。正式名称で言うと難しいのですが「壁式鉄筋コンクリートパネル組み立て造」という方法です。この工法を取り入れているハウスメーカーが複数社あり、そこでは「WPC工法」と呼ぶこともあります。これは、あらかじめ工場で作られたコンクリートパネルを現場で箱型に組み立てるという方法です。

2023年は関東大震災から100年ですが、実はこの工法は関東大震災の教訓から作られたものなのです。昭和30年代初頭に当時の建設省が主導になって作られた工法で、耐震性、耐火性、耐久性に優れた構造になっています。鉄筋コンクリートの2倍ぐらいの圧縮強度を持っています。この工法で建てられた家は日本全国にありますが、過去のあらゆる災害の調査をする中で最も強いと言える方法なのではないかという研究結果が出ていますし、私たちの研究所ではそれを知っていただくという活動をしています。

例えば阪神・淡路大震災では、当時その被災地区に建設されていたWPC工法の住宅が495棟ありましたが、その全てが無傷で 一部損壊もしなかったという建設省の調査結果があります。私の著書の中でもこの工法についてご紹介していますが、隣の家は斜めに傾いていたり崩れているにもかかわらず、WPC工法の建物は窓ガラス1枚も割れることなく壊れなかったということがありました。他の25万棟もの住宅が全半壊、35万棟位が一部損壊している大きな被害があった阪神・淡路大震災でも無傷だったということです。その後も、新潟中越地震や能登半島地震など、様々な災害で調査をして、震度7の地震が2回観測された熊本地震でも、その工法で建設された住宅は無傷だったという実績を誇っています。

また、地震だけではなく、2011年の東日本大震災では、多くの住宅が津波で流されて基礎だけになってしまっている状況の中で、仙台市や名取市にあったWPC工法の住宅は、津波に流されるどころか、5メートル程度の津波に対しても壊れず、原形を留めていたという実績があります。

壁式鉄筋コンクリートパネル組み立て造(WPC工法)の特徴

「壁式鉄筋コンクリートパネル組み立て造」という工法の家について、なぜ災害に強いのかという理由が4つあります。

まず1つ目は、 壁、床、天井などが全てパネルで出来ているので、強度が非常に高いということです。同じ工法で皆さんがよくご存知のものですと、神奈川県と千葉県を結んでいる海底トンネルの「アクアライン」の壁にも同じ工法が使用されています。

2つ目は、現場ではなく工場であらかじめ作ったものを、箱型に組み立てているということです。一般的な木造住宅ですと、柱と梁を用いて接合点で受け止めていますが、面で力を受け止めることで硬性を発揮できるという特徴を持っています。

3つ目は、地震が起きても建物自体がほとんど揺れないという特徴があります。建物は固有周期というものを持っています。一般住宅が持っている固有周期は地震の揺れと同調しやすいのですが、それに比べて、WPC工法の住宅の固有周期は非常に小さく、一般住宅の6分の1程度で、地震発生時の地盤特有の周期と同調しにくい構造となっています。

最後の4つ目の特徴は、重量です。コンクリートのパネルなので、木造住宅よりも3~4倍の重量があります。2階建てでは100トンを超えるような重さがあり、津波にも流されにくく、土砂を受け止めることもできます。

WPC工法の住宅を取り扱っているハウスメーカーにお問い合わせいただくことも可能ですが、私たち防災住宅研究所では地域のリスクを診断した上でどのような家にしたらいいのか等の無料アドバイスを行っています。興味はあるがどこのメーカーに頼んだらいいのか分からないという方は、防災住宅研究所のホームページの問い合わせからご連絡いただければ相談に乗ることができます。

南海トラフ巨大地震のような大地震の場合は、数分で津波が襲ってくるエリアもあると考えられます。WPC工法の住宅は津波シェルターを屋上に設置することもできるので、静岡県内ではすでに100棟以上が導入しています。災害時に、自分の家にいることで命が守れるような「災害に強い家に住む」ということが、命を守る上では一番重要だと思いますので、家を建てる際には自分の家が最強の避難所になるように防災視点でも家選びをしていただけたらと思います。

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。

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