海上安全と大漁を祈る 「水神祭」

■「水神祭」の様子


かつて漁師町として栄えた「羽田」の名残を伝える伝統行事「水神祭」が5月11日、羽田空港近くの多摩川河口で、大田漁業協同組合と羽田水神社により執り行われました。

この祭りは、海上安全と大漁を祈願するために江戸時代から現在まで毎年欠かさず続けられています。

午前10時、榊や大漁旗で飾られた漁船「えさ政丸」に羽田水神社の宮司や漁業組合関係者、来賓者約40人が乗船し、羽田水神社近くの多摩川沿岸から出発、約2キロ先の羽田沖の海上に立つ海の神棚「御神酒上げ棒(おみきあげぼう)」を目指します。

「御神酒上げ棒」に到着すると、船上で宮司が祝詞をあげ、神事が行われました。

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神事の中では、御神酒や塩、シジミなどを海上に撒き、続いて参列者らが柏手を打って、大漁と海上安全を祈ります。その後、海の神様である香川県の金比羅様から取り寄せた高さ70cmほどのお札と地元「羽田水神社」のお札を御神酒上げ棒に取り付け、羽田水神社へと帰ります。

今年は潮が引き、「御神酒上げ棒」周辺の水位が浅くなっていたため、後日取り付けることとなりました。

「水神祭」の始まりは定かとされていませんが、昔は1月・5月・9月の年3回行われ、羽田の各町から大漁旗や提灯で飾られた船やお囃子を乗せた船が川の中ほどに出て、櫓(ろ)を漕いでいた若者たちが裸になり川に飛び込んで先を競って泳ぎ、拝み棒にお神酒を供えてまた泳いで船に戻ってくる、という勇壮な祭だったといわれています。

しかし、昭和37年、沿岸の埋め立てなどで漁業権を放棄。また後継者不足から漁師の数も当時から比べてずいぶん少なくなり、今では年に1回厳かに行われるのみとなりましたが、「漁師町羽田」の名残を伝える伝統行事として、地元の人々に受け継がれています。

組合長の村石さんは、「本日の水神祭は海上安全と大漁、そして漁業組合の健勝をこめて臨んだ」と語っていました。