法人のセキュリティ対策!予算と人手が限られていてもできる工夫
目次
法人を狙うサイバー攻撃は巧妙化し、ウイルス対策ソフトだけでは不十分な時代に入りました。特に中小企業では、限られた人材や予算の中で現実的な「セキュリティ対策」を進めることが重要です。
本記事では、法人が直面する最新の脅威から、企業規模・業種別の対策、さらにテレワークやファイル共有に活用できる具体的な支援策までを分かりやすく解説します。
ウイルス対策だけでは防げない最新セキュリティ脅威の実態
中小企業を取り巻くサイバー脅威は、もはや従来型のウイルス対策ソフトだけでは防ぎきれないほど高度化しています。
ここでは、法人が直面するサイバー脅威の具体例と背景、そしてウイルス対策ソフトだけに頼ったセキュリティの限界について、実例を交えて解説します。
中小企業が狙われる理由と最新サイバー攻撃の手法
中小企業は、大企業に比べて人材や予算が限られており、セキュリティ対策が後回しにされがちです。そのため、攻撃者から「侵入しやすい標的」と見なされやすくなっています。
中でも深刻なのが、業務停止やデータ破壊を引き起こすランサムウェアです。高額な身代金を要求される事例が後を絶たず、復旧の遅れが経営リスクを高めます。
実在する企業や機関を装ったフィッシング詐欺やビジネスメール詐欺(BEC)も増加しています。加えて、大企業へのサプライチェーン攻撃の入口として中小企業が利用されるケースも報告されています。
ウイルス対策ソフトの限界と必要な多層防御
ウイルス対策ソフトを導入していても、防ぎきれない攻撃が増えています。特に「ゼロデイ攻撃」は、脆弱性の公表前に仕掛けられるため、パターンファイルでは検知できません。
加えて、従業員の過失や悪意による内部不正も見過ごせない脅威です。情報漏洩の多くが社内要因に起因しており、技術対策だけでは対応が難しい場面もあります。
さらに、フィッシング詐欺も巧妙化しており、正規の企業メールに見える精密な偽装が行われています。こうした多様な攻撃に備えるには、ウイルス対策ソフトに加え、UTM(統合脅威管理)の導入やアクセス制御の強化、社員教育による意識づけを重ねる必要があります。
セキュリティ対策における中小企業特有の課題と解決の方向性
中小企業がセキュリティ対策を進める際の大きな障壁は、リソース不足です。専門人材の不在や限られた予算に加え、経営層の理解不足が対策の遅れを招く要因となっています。
こうした課題を解消するには、段階的かつ現実的なアプローチが必要です。例えば、IPAが公開している「情報セキュリティ5か条」は、無料で誰でも始められる基本対策として有効です。まずはこのような簡易チェックリストやポスター掲示などから、社員の意識づけを図りましょう。
次に、複数のセキュリティ機能を一元管理できるUTM(統合脅威管理)機器の導入を検討します。UTMは、ウイルス対策やファイアウォール、スパム対策などを1台に集約できるため、初期費用と運用コストを抑えながら、限られた人材でも継続的なセキュリティ体制を維持しやすくなります。
さらに、動画やeラーニングによる社員研修も効果的です。人的ミスの予防につながるうえ、技術的なハードルも低く実施しやすい点が特徴です。加えて、助成金や専門家派遣といった公的支援の活用により、コストとノウハウの課題も解消しやすくなります。
【関連記事:サイバーセキュリティとは?サイバー攻撃の具体例、対策の施策例を解説】
企業規模と業種に応じた効果的なセキュリティ対策の選定法
企業によって直面するセキュリティリスクの内容や優先順位は大きく異なります。例えば、小規模企業では人的リソースの不足が課題となり、中規模企業では組織としてのマネジメント体制の整備が求められます。また、業種によっても狙われやすい情報や攻撃手法が異なるため、業務実態に即した対策が必要です。
企業規模別のセキュリティ対策優先順位とステップアップ方法
企業の規模に応じて、取り組むべきセキュリティ対策の内容や優先順位は異なります。まず小規模企業(従業員30名以下)では、IPAが推進する「SECURITY ACTION」の一つ星取得を目標に、基本的な情報セキュリティ対策から着手するのが効果的です。OSやソフトウェアの定期更新、ウイルス対策ソフトの導入、強固なパスワード設定といった基本を徹底することで、最低限の防御体制を確保できます。
中規模企業(30~100名程度)では、ガイドラインに沿って二つ星取得を目指し、情報セキュリティ基本方針の策定や、自社診断の実施が求められます。組織的なセキュリティ体制の構築と、定期的な見直しが重要です。IPAの「セキュリティプレゼンター」など、外部専門家の支援を活用するのも有効な手段です。
より大規模な企業では、経済産業省とIPAが基準を定める「サイバーセキュリティお助け隊サービス」の活用を検討することで、高度な支援を受けながら包括的な対策が可能になります。
業種別に見るセキュリティリスクと重点対策ポイント
業種によって直面するセキュリティリスクの内容は大きく異なります。業務で扱う情報の種類やITシステムの構造によって、攻撃手法や対策の優先順位が変わってくるため、それぞれの業種特性に応じたアプローチが求められます。
製造業
生産管理システムへの不正アクセスが大きな脅威です。設計図や製造工程などの機密情報が漏洩すれば、模倣品のリスクや生産停止による損失につながります。工場ネットワークと社内ネットワークを分離し、外部からの侵入経路を遮断する構成が有効です。
小売業
顧客情報や決済データが主要な標的となります。POS端末へのマルウェア感染による情報漏洩を防ぐため、定期的な脆弱性診断と、決済端末のセキュリティ対策が重要です。従業員教育による不審メールや外部媒体の扱いに関するリスク低減も欠かせません。
サービス業
サービス業の中でも、医療機関や士業などは個人情報や契約情報といった機密性の高いデータを扱うため、特にランサムウェアの標的となりやすい傾向があります。厳格なアクセス制限や定期的なバックアップ体制の整備が不可欠です。
金融関連企業
サイバー犯罪の主な目的が資金の搾取であるため、オンライン取引の安全性が最重要課題です。多要素認証や取引監視システム、不正ログインの自動検知機能などを組み合わせ、リアルタイムでの異常検知と即時対応体制を整備する必要があります。
IPAの中小企業向けセキュリティガイドラインの実践的活用法
情報処理推進機構(IPA)が策定した「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン」は、専門知識がなくても実践できる内容で構成されており、法人向けの現実的なセキュリティ対策を進める上での指針となります。
ガイドラインは「経営者編」と「実践編」に分かれており、経営層への意識づけから、具体的な対策の実行まで段階的に対応可能です。まずは、「5分でできる!情報セキュリティ自社診断」を活用して、現状のセキュリティ体制を客観的に把握しましょう。診断結果をもとに、自社の弱点や優先度の高い対策が明確になります。
また、ガイドラインには「情報セキュリティ基本方針」や「セキュリティハンドブック」のひな形が用意されており、自社に合わせてカスタマイズすることで、すぐに活用できます。これにより、形式的な整備だけでなく、実務に沿ったセキュリティ文化の定着が期待できます。
特に注目すべきは、「中小企業のためのセキュリティインシデント対応の手引き」です。インシデント発生時に慌てず初動対応を行うための具体的な手順がまとめられており、事前の備えとして極めて有用です。
SECURITY ACTION制度と組み合わせて活用することで、社外への信頼性アピールにもつながります。社内のルール整備と社外への信頼性向上を同時に進められる実践的なガイドラインとして、積極的に取り入れましょう。
活用したい公的セキュリティ支援制度と自社診断の方法
中小企業が限られた予算内で効果的にセキュリティ対策を進めるには、公的な支援制度の活用が欠かせません。IPAが主導する「SECURITY ACTION」や各種助成金制度は、費用面の負担軽減と同時に、企業としての信頼性向上にもつながります。
ここでは、法人が実践可能な支援制度の内容と、自社診断を通じた改善の進め方を紹介します。
SECURITY ACTIONの自己宣言制度で対外的信頼性を向上させる
「SECURITY ACTION」は、中小企業が自社のセキュリティ対策に主体的に取り組む姿勢を示すための制度です。IPAが定める「情報セキュリティ5か条」を実施し、一つ星または二つ星の目標を選んで自己宣言します。
制度を活用することで、企業の情報管理体制に対する社外の信頼が高まります。ロゴマークの使用により、取引先や顧客に対しても安心感を示すことができ、IT導入補助金などの申請時にも有利に働きます。
宣言の手続きはウェブ上で完結し、低コストで取り組みやすいのが特長です。まずは一つ星から始め、段階的なレベルアップを目指しましょう。
自社のセキュリティレベル診断と段階的な改善計画の立て方
自社の現状を正しく把握することが、セキュリティ対策の第一歩です。IPAが提供する「情報セキュリティ自己診断テスト」を活用すれば、25項目のチェックにより対策状況を可視化できます。
診断結果をもとに、短期・中期・長期で改善計画を立てましょう。たとえば、短期では脆弱なパスワードの見直しやOSの更新、長期では体制整備や訓練計画の策定が挙げられます。改善は影響の大きい項目から着手するのが基本です。
PDCAサイクルを意識して継続的に見直すことで、組織全体のセキュリティ水準を着実に引き上げていけます。
セキュリティインシデント発生時の対応と事業継続計画
サイバー攻撃は、どれだけ対策を講じていても完全には防げないという前提で備える必要があります。被害を最小限に抑え、事業を止めずに復旧させるためには、インシデント発生後の迅速な対応と、事前に策定された事業継続計画(BCP)が欠かせません。
ここでは、初動対応の基本手順とBCPへの組み込み方、さらに経営層に対する投資の説得方法まで、企業が備えておくべき実務的なポイントを解説します。
インシデント発生時の初動対応と被害最小化のための手順
サイバー攻撃が発覚した際、最初の対応が被害の大きさを左右します。異常を検知したら即座に情報セキュリティ責任者に報告し、関係機器をネットワークから切断します。ここで慌てて操作せず、デジタル証拠の保全を意識することが重要です。
対応体制を速やかに整え、経営層への報告や、外部機関(IPAや警察)への相談も検討しましょう。被害の範囲が明らかになった段階で、関係者への通知・公表準備にも着手します。
初動対応をマニュアル化し、定期的な訓練を実施しておくことで、緊急時でも組織として冷静に動ける体制が整います。
事業継続計画(BCP)にセキュリティ対策を効果的に組み込む方法
サイバー攻撃は、事業そのものを停止させるリスクを伴います。BCP(事業継続計画)にセキュリティ視点を組み込むことで、インシデント発生時も被害を最小限に抑え、速やかに復旧できる体制を築けます。
対策としては、サイバー攻撃対応の手順や責任体制をBCPに明記し、従業員教育や定期的な脆弱性診断も計画に含めます。また、クラウド活用によるデータの冗長化や、リモートワーク環境の整備も有効です。
BCPとセキュリティ対策を一体で運用することで、企業全体の回復力(レジリエンス)を高められます。
セキュリティ投資の費用対効果を経営層に説得するための方法
セキュリティ対策への投資は「成果が見えにくい支出」と捉えられがちですが、インシデント発生時の損失を具体的に示すことで、その重要性を伝えやすくなります。
例えば、フォレンジック調査費用、システム復旧費、営業停止による損失、個人情報漏洩時の見舞金や訴訟リスクなど、実際に想定される金額を数値化することが説得力を生みます。
「対策コスト=事業継続のための投資」であることを明確にし、経営層とIT部門が同じ認識を持つことが、社内での実行力を高める鍵となります。
イッツコムが提供するセキュリティ対策の具体例
ここでは、テレワークや情報共有をより安全かつ効率的に行うための、イッツコムが提供する法人向けセキュリティサービスを紹介します。
「モバイル閉域接続」や「Box」のようなクラウドツールを活用することで、通信の保護やファイル管理の課題をスマートに解決できます。限られたリソースでも導入しやすく、コストとセキュリティのバランスに優れた対策を実現可能です。
テレワークに最適な「モバイル閉域接続」でのデータ保護強化
テレワークの普及に伴い、社外から社内ネットワークへ安全に接続する環境の整備が求められています。従来のVPNは広く利用されていますが、設定や運用の不備によって情報漏洩のリスクを完全には排除できません。
こうした課題への対策として有効なのが「モバイル閉域接続」です。イッツコムのサービスでは、PCやスマホに専用SIMカードを挿入するだけで、NTTドコモ網とイッツコム網を通じた閉域ネットワークを自動で判別し、社内LANへ直接アクセスできます。ユーザー側でVPN設定を行う必要がなく、管理者によるIDやパスワードの管理作業も不要になります。
インターネットへのアクセス時には社内LANを経由し、通信ログの取得も可能です。これにより、社外からの利用であっても、社内のセキュリティポリシーを適用した通信環境を維持できます。
クラウドストレージ「Box」を活用した安全なファイル共有と管理
クラウドコンテンツマネジメントシステム「Box」は、世界最高水準のセキュリティを備えた法人向けファイル共有ツールです。容量無制限のストレージにより、あらゆるファイルを一元管理でき、オンライン上での共同編集やコメントのやり取りも可能です。マルチデバイスに対応しており、外出先からでもファイルに安全にアクセスできます。
7段階のアクセス権限設定、70種類以上のログ監査、50世代を超えるバージョン管理に対応し、情報漏洩や誤操作への備えも万全です。二要素認証や端末制限機能に加え、機械学習を活用した未知のマルウェア検知にも対応しており、低コストで高度な情報管理体制を構築できます。
イッツコムのモバイル閉域接続と併用することで、社外でも社内ポリシーを適用した安全な環境でファイルを取り扱うことが可能です。
まとめ
法人のセキュリティ対策では、ウイルス対策ソフトだけに頼るのではなく、企業規模や業種に応じた優先順位を定めて段階的に取り組む姿勢が求められます。UTMやクラウドサービスの導入をはじめ、助成制度や外部支援の活用も視野に入れながら、できる範囲から一歩ずつセキュリティを強化していくことが重要です。
特に、テレワーク時の通信を保護するには「モバイル閉域接続」、ファイル共有には「Box」のような信頼性の高いクラウドツールの導入が効果的です。効率と安全性の両立を図るには、こうしたツールの適切な組み合わせが欠かせません。
イッツコムは、モバイル閉域接続とBoxの両方に対応しており、法人のセキュリティ対策を総合的に支援できます。情報セキュリティ体制の見直しをお考えの企業は、シンプルで導入しやすいイッツコムのサービスをご検討ください。