1. コラム
  2. コラム
  3. 翻訳業務の情報漏洩リスクとセキュリティ対策のポイント

翻訳業務の情報漏洩リスクとセキュリティ対策のポイント

ビジネスでの多言語対応が求められる中、翻訳ツールの活用はますます一般化しています。しかし、翻訳業務では個人情報や顧客情報、技術資料などの機密性の高いデータが扱われることも多く、不適切な翻訳環境の利用は情報漏洩のリスクを高める要因となります。

本記事では、企業における翻訳業務全体に潜むセキュリティリスクを整理し、安全に運用するための翻訳ツール選定基準や業界別の対応策、最新技術の動向などを解説します。セキュアな翻訳環境の構築に向けた参考にしてください。

企業における翻訳業務のセキュリティリスクとは

翻訳業務では、個人情報や技術資料などの機密情報が扱われることも少なくありません。便利なクラウド翻訳ツールの利用が広がる一方で、情報漏洩のリスクも高まっています。ここでは、翻訳に伴うセキュリティリスクとその対策について解説します。

翻訳過程で発生する情報漏洩の実例と被害規模

翻訳ツールを通じた情報漏洩のリスクは想定以上に深刻です。2015年、無料翻訳サイト「I Love Translation」で、ユーザーが入力した原文と訳文が公開状態になっていた事例が報告されました。そこには中央省庁や金融機関、法律関係者の機密情報が含まれており、機密保持に対する警鐘となっています。

こうした背景から、企業では翻訳ツールの利用に慎重な対応が求められています。例えば、DeepLの無料版では入力されたテキストがサービス改善のために保存・学習に使用されると利用規約に明記されており、機密情報の取り扱いには注意が必要です。

クラウド型翻訳ツールの潜在的なデータセキュリティ脅威

Google翻訳やDeepLなどのクラウド型ツールは利便性が高く、日常的な業務で使われがちですが、入力内容が保存・学習対象となる可能性があるため、誤って機密情報を入力すれば情報漏洩のリスクがあります。実際に、学習データを通じて第三者に情報が露出するケースも報告されており、AI翻訳の普及に伴い一層の注意が求められます。

このため、企業秘密や顧客データなどを扱う翻訳には、セキュリティ機能を備えた専用システムの導入が有効です。特に医薬・法務・金融などの分野では、翻訳環境の選定に慎重な判断が必要です。

翻訳プロセスで保護すべき機密情報の種類と重要度

翻訳業務で扱う情報は、個人情報や顧客データ、技術資料、契約書、財務データなど多岐にわたります。これらは情報の重要度に応じて分類し、それぞれに適した管理方法を採用する必要があります。

例えば、最高機密情報はオフラインのオンプレミス型翻訳システムで、中程度の機密情報はセキュリティ認証済みのクラウド翻訳サービスで処理するなど、段階的な運用方針が効果的です。情報の重要度と翻訳環境のセキュリティレベルを適切に組み合わせることが、情報漏洩防止の鍵となります。

セキュリティを重視した翻訳ツールの選定基準

翻訳ツールは業務の効率化に欠かせない存在ですが、入力する文書には顧客情報や技術資料など、機密性の高いデータが含まれることも少なくありません。とくにクラウド型ツールを利用する場合、情報漏洩のリスクを十分に考慮する必要があります。

ここでは、セキュリティを重視した翻訳ツールの選定において押さえるべきポイントを整理します。

1. データ保存と取り扱いポリシーの透明性

翻訳ツールを選ぶ際にまず確認すべきは、入力したテキストがどのように扱われるかという点です。特にクラウド型サービスでは、翻訳精度の向上を目的としてユーザーの入力データを保存・学習に利用するケースがあります。

機密情報や個人情報を扱う場合には、「データを保存しない」と明記されているか、保存設定を変更できるかどうかが重要です。保存の有無だけでなく、保存期間、使用目的、第三者提供の有無など、データの取り扱いに関する方針が明確に示されているサービスを選びましょう。

2. 通信の暗号化と安全な接続環境

翻訳ツールを通じて送受信される情報を保護するためには、通信の安全性が欠かせません。TLSなどの暗号化通信が採用されているかを確認するとともに、VPNやプライベート接続への対応状況もチェックポイントとなります。

特に、医療・法務・金融といった高度な機密性が求められる分野では、翻訳サービス側が閉域網や特定ネットワーク環境に対応しているかどうかも判断基準になります。通信経路の安全性は、社外への情報流出を防ぐ第一の防壁です。

3. システム形態と運用環境の適合性

翻訳ツールには、クラウド型・オンプレミス型・ハイブリッド型といった形態があり、それぞれにメリットと制約があります。クラウド型は利便性が高い反面、常にインターネット接続を伴うため、社内のセキュリティポリシーと合わないケースもあります。

一方、オンプレミス型は社内ネットワーク内で完結するため、高度な情報保護が可能です。扱う情報の性質や、社内のIT環境に応じて、柔軟かつ現実的に運用可能な構成を選ぶことが、セキュアな翻訳業務の実現に直結します。

4. 情報セキュリティ認証と法令対応

翻訳ツールの信頼性を裏付ける材料として、ISO/IEC 27001やSOC2などのセキュリティ認証を取得しているかを確認しましょう。これらの認証は、一定レベルの情報管理体制が整備されていることを示すものです。

加えて、GDPRや日本の個人情報保護法といった関連法規への対応状況も重要です。特に海外のサービスを利用する場合には、法令遵守が不十分なことによるリスクを回避するためにも、確認は欠かせません。

5. 管理機能とベンダーの信頼性

翻訳ツールが企業内で広く使われる場合、ユーザーごとのアクセス権限管理や操作ログの取得といった管理機能の有無も重要です。不正利用や誤操作によるリスクを最小限に抑えるためには、こうした機能が備わっているかをチェックしましょう。

また、ツールそのものの信頼性だけでなく、提供ベンダーの実績やサポート体制も選定時の重要な観点です。導入後のサポート品質やアップデート体制、セキュリティに関する専門的な対応が可能かどうかまで含めて評価することが、安心して長期的に活用できるかどうかの鍵となります。

業界別・用途別の翻訳ツールセキュリティ要件と対応策

翻訳ツールは、業界や用途によって扱う情報の機密性や法的要件が大きく異なります。医療・製薬、金融・法務、グローバル企業の多言語対応など、それぞれに応じたセキュリティ対策が求められる場面も多くあります。

ここでは、代表的な業界・用途別に、翻訳システムに求められるセキュリティ要件と、適切な対応策について解説します。

医療・製薬業界における患者情報保護と翻訳システム要件

医療・製薬業界において、患者情報の保護は最も重要な課題の1つです。翻訳システムを導入する際にも、個人データの漏洩を防ぐための堅牢なセキュリティ対策が求められます。個人情報保護法では、病歴や診断情報などの要配慮個人情報を取り扱う場合、原則として本人の同意が必要とされており、翻訳業務も例外ではありません。

適切な翻訳システムを選定するには、高度な暗号化技術の採用に加え、組織的・人的・物理的・技術的な安全管理措置が講じられていることが重要です。また、医療情報の性質上、万が一の漏洩に備えたインシデント報告体制や迅速な対応フローの整備も確認しておくべきポイントです。

さらに、翻訳システムには、データの正確性維持や取り扱い履歴の記録といった機能、あるいは第三者提供時の情報管理を補助する仕組みがあると望ましく、業界固有の規制に準拠したセキュリティ基準を満たすことが必須条件となります。患者情報の安全を確保しつつ、多言語対応を効率的に行うには、こうした点に配慮された翻訳システムの導入が欠かせません。

金融・法務分野での機密文書翻訳時のセキュリティ対策

金融・法務分野における翻訳業務では、高度な機密保持が不可欠です。契約書や法的文書には、企業戦略や取引内容、顧客情報など極めて機密性の高い情報が含まれており、翻訳時にも厳格なセキュリティ体制が求められます。

翻訳システムの選定に際しては、翻訳者や翻訳ベンダーとの秘密保持契約(NDA)を結ぶことに加え、データの暗号化やパスワード管理機能を備えたシステムを選ぶことが重要です。特に金融機関においては、ファイルの閲覧履歴を残さない仕組みや、一定時間操作がない場合に自動ログアウトする機能など、情報漏洩リスクを低減する仕組みが有効とされています。

また、法務・金融の専門知識を有する翻訳者を起用し、複数名によるチェック体制を設けることで、訳文の正確性を高めるとともに、情報管理上のリスクも抑えることができます。

さらに、翻訳作業を行う環境自体のセキュリティも重要です。指定されたセキュアな作業場所でのみ作業を実施し、USBメモリなどの外部記憶媒体の使用を制限することで、情報漏洩の経路を減らすことが可能です。

グローバル展開企業のための地域別データ保護規制対応

グローバルに事業を展開する企業にとって、各地域で異なるデータ保護規制への対応は、翻訳システムの選定における重要な検討事項です。たとえば、EUのGDPR(一般データ保護規則)では、個人データの越境転送に厳しい制限が設けられており、翻訳業務に関連するシステムも、この要件を満たす必要があります。

同様に、米国カリフォルニア州のCCPA(カリフォルニア州消費者プライバシー法)や、中国のサイバーセキュリティ法など、各国・地域独自の規制も存在し、それぞれに準拠する体制が求められます。

こうした規制に対応するには、翻訳システムがデータの地理的保存先を管理できるか、あるいは各地域の法令に準拠した処理・保管体制を備えているかを確認することが重要です。実際に一部のサービスでは、データ処理拠点を選択できる機能や、法規制対応を支援するアドバイザリーサービスが提供されています。

各地域の規制に適合したシステムを選ぶことは、翻訳業務の継続性とグローバルビジネス全体の信頼性を支えるうえで欠かせない要素となります。

進化する翻訳テクノロジーと求められるセキュリティ対策

翻訳技術は急速に進化し、AI翻訳や携帯型翻訳機の普及によってビジネス現場での多言語対応がより現実的になりました。一方で、情報漏洩のリスクも高まっており、翻訳におけるセキュリティ対策は以前にも増して重要な課題となっています。

ここでは、最新技術の動向と今後の可能性について、セキュリティの観点から整理します。

AI翻訳の発展とセキュリティ技術の最新動向

AI翻訳は、ルールベース翻訳や統計的機械翻訳を経て、現在ではディープラーニングを活用したニューラル機械翻訳(NMT)が主流となっています。NMTにより、文脈を考慮した自然な翻訳が可能となり、ビジネスや業務用途での活用が広がっています。

こうした進化に合わせて、セキュリティ技術も高度化しています。最新のAI翻訳システムでは、入力から出力までの各工程にエンドツーエンドの暗号化を導入する動きが進み、情報漏洩リスクの抑制につながっています。また、企業向けにはオンプレミスの安全性とクラウドの利便性を組み合わせたハイブリッド型の導入も増えており、情報の機密性に応じた柔軟な運用が可能です。

さらに、ブロックチェーンやゼロ知識証明といった先進的なセキュリティ技術の研究も進んでおり、今後の実装が期待されています。

ブロックチェーン技術を活用した次世代翻訳セキュリティの可能性

ブロックチェーン技術は、翻訳システムのセキュリティ強化に向けた新たな手段として注目されています。分散型台帳による改ざん耐性や履歴の追跡性といった特性は、翻訳プロセスの透明性を高めるうえで有効です。

特にスマートコントラクトの活用により、認証済みのユーザーにのみ文書アクセスを許可するなど、翻訳工程の制御や自動化が実現可能となります。これにより、機密保持契約の遵守を技術的に補完できる仕組みとして期待が高まっています。

一方で、実用化に向けては課題も残ります。Positive Technologies社の調査によれば、ブロックチェーンアプリケーションの多くに深刻な脆弱性が確認されており、とくにスマートコントラクトのコード品質やAPIの安全性確保が重要な論点です。

将来的には、翻訳システムとの統合によって、改ざん防止や厳密なアクセス制御、翻訳履歴の完全な監査記録といった高度なセキュリティ機能が実装される可能性があります。

ポケトークをはじめとする携帯型翻訳機のビジネス活用とセキュリティ

携帯型翻訳機、特にポケトークは、多言語対応の負担を軽減する手段として多くの企業に導入されています。小売業や医療機関など、対面での外国語対応が求められる現場での活用が進んでいます。

セキュリティ面においては、会話内容が一時的にクラウドを経由して処理される設計であり、サーバーに履歴が保存されない仕様となっています。これにより、会話データが外部に蓄積されるリスクを抑えることができます。

また、法人向けの「ポケトーク アナリティクス」では、端末の一元管理や紛失時の遠隔ロック・データ消去といった機能が利用でき、業務利用におけるセキュリティ対策を支援します。外国人顧客との接客や外国籍従業員とのコミュニケーションを円滑にしながら、安全性と利便性を両立できます。

グローバルコミュニケーションを強化するポケトークならイッツコム!

イッツコムでは、法人のお客様向けに、AI翻訳機「ポケトークS(Wi-Fiモデル)」をレンタルでご提供しています。

高精度な翻訳:ディープラーニング技術を活用し、74言語に対応した双方向の自然な翻訳が可能です。

セキュリティ対策:ISO 27001およびISO 27017の認証を取得し、GDPRやHIPAAなど各種プライバシー関連法規にも準拠しています。翻訳に使用された音声データは処理後に削除され、AIの学習には使用されません。

■イッツコムのレンタルサービスのメリット

  • 初期費用0円:導入時のコストを抑えられます。
  • 月額1,900円(税抜)/台:リーズナブルな価格でご利用いただけます。
  • 法人データSIM付き:通信環境を気にせず、すぐにご利用開始可能です。

イッツコムのレンタルサービスで、企業の多言語対応やセキュリティ対策を強化し、円滑なコミュニケーションをサポートします。セキュリティ対策でポケトークSを導入する際は、契約手数料無料のイッツコムのレンタルサービスをご検討ください。

まとめ

翻訳業務では、機密情報の扱いに十分な注意が必要です。無料翻訳ツールやクラウド型サービスには利便性がある一方で、情報漏洩リスクも伴います。業界ごとのセキュリティ要件を把握し、用途に応じて適切な翻訳環境を選定することが重要です。

セキュリティと翻訳精度を両立させたい企業には、信頼性の高い翻訳端末の導入も1つの選択肢です。イッツコムでは、法人向けに「ポケトークSシリーズ」のレンタルサービスを提供しています。初期費用無料・月額制で導入できるため、安全な多言語対応を手軽に始めたい方は、ぜひご検討ください。